暇つぶしの雑談
二話目も無事に投稿できました。大体はこのくらいのペースで投稿したいと思ってます。
朝の陽気の心地良さを感じ、窓から見える森の景色を見ながら、清々しいほどの大声が耳元で鳴る。
あさからやかましいぞ大馬鹿もの、少しは時間を考えろ。
安定のスルーで俺は起き、いつものようにパンを取り出しそれを頬張る。
今日は何をしようかと、朝のニュースを見ながら悩んだ。
それで悩んでいる俺の横顔を見たのか、アドが今日やることを提案する。
「世界征服。」
はいはい無視無視、何をバカな事を言っているんだこいつは。
だが、今思い返せば俺はこいつを無視する事が多いな、たまには絡んでやるか。
「何を理由に?」
「ほら、だってそうすれば世界が平和になるでしょ?」
思わずため息をつく。
そんな簡単に出来ることでもないし、お前の頭の中はお花畑か。
世界征服が出来るくらいなら、いちいちこんな田舎でひっそり暮らしているわけがない。
頭の中だけにとどめておこうとおもったが、つい声に出てしまった。
「いいか?俺がこんな森の中でなんでひっそりと暮らしてるのか分かってないだろ。」
「さぁ?」
期待はしていなかったが、予想通りの答えだった。
いや、俺はさっきから何を迷っているのだろう、この話はさっさとやめよう。
とりあえず仕切り直しに、もう一度本題を言ってみる事にした。
「とにかく、俺は今日暇だから何をすればいいか分からないって訳だ。」
「じゃあ、例の話の続きでもしようか?」
例の話?ああ、アドの空想話か。
個人的にあの話は興味あったし、暇つぶしにはいいかもな。
でもちょっと自分と絡めてるだろって思う部分があったりしてイタい所もある。
それでも興味を持ってしまう俺も俺だが。
「じゃあ、暇つぶし程度にお願いするよ。コーヒーと紅茶どっちがいい?」
「あれ、アニマ君が優しいなんて珍しいね。」
「それはお前の起こし方に問題があるからだ。」
「それはアニマ君が起きるのが遅いからだ!」
…いい負けた。
でも7時って全然遅くないよ?
むしろ早いよ?
ニートでも朝は早いのですよ、ゲームをやるために。
「アニマくーん?必死に言い逃れ探してるようだけど無駄だよ?」
くそ…人の心を読む魔女め…
「とにかく!アドは紅茶でいいよな。」
「ジャスミンね。」
「残念ながらアールグレイしかない。」
舌打ちをされたが無視、渋くなるように入れてやろうかと思った。
お湯を沸かし、めんどくさいのでティーパックを取り出してカップに入れる、そこにお湯を入れ、わざとティーパックを動かした。
この方法でやった場合、確かに早く味が出るが同時に渋みも出てしまうので、オススメできるやり方ではない。
ティーパックだとしても、お湯を入れたあとはそっとしておくのが一番だ。
その紅茶を何も知らないような顔でアドに渡して、自分も椅子に座る。
そしてテーブルで向き合うようになり、ようやく話がはじまった…
今から遠い昔、ある地域で伝染病が流行った。
症状は肺に小さな穴が飽き、初期は喘息と似たような症状だと言う。
その病は進んでいくに連れ、穴の周りが荒れて来るという。
そうなってしまうと、悪い空気を吸っただけで炎症を起こし、荒れた部分から出血してしまうそうだ。
最終的には呼吸困難になり、死んでしまうらしい。
医者も頭を抱える程の病気だったらしいが、ある若者がこんな事を言ったそうだ。
「これは病気なんかじゃない、誰かが呪いをかけているに違いない。」
ただの現実逃避に聞こえるが、その言葉に人々は元気付けられたという。
医者が解決出来ないのは仕方ない事だ、犯人を捕まえれば自分たちは助かるのだと。
そこで人々は一部の若者に全てを託し、解決に導く人を探しに出させたのだった。
「これが私がここに来た理由。」
「以前よりだいぶ分かりやすくなったな。」
以前話を聞いた時は、魔法やら異次元やらで訳が分からなくなっていた。
その時は理解出来なくてただの空想話だと思っていたけど、こう言われると現実味があるな。
だが俺は一部突っ込む所があった。
「でもさあ、それ昔の話なんだろ?なんで今さらひょっこり出て来たんだよ。」
「もし今も続いてて、先祖代々探してますって言ったらどう?」
なるほど、納得。
でも今なら医療も発達してるし治るんじゃないか?
確か気胸って病気あったよな、肺に穴が空くってのが病状だし。
だが、気胸では人が死ぬことはほとんどないらしい。
しかも安静にしていれば勝手に治るし、今なら手術で簡単に治す事だって出来る。
やっぱりちょっと違うのか。
だが俺はもうひとつ疑問があった。
なぜ今更その話を俺にしたのかと。
「ごめん、話の流れは分かったけど、なんでいきなり話したんだ?もう2ヶ月くらい一緒にいるし、どれもグータラしてただけだし。」
「最初に言ったけど、信用してもらえなかったでしょう?だから理解力を高めて貰おうと思って一緒にいただけ。」
…それも一応納得した。
「それと一応確認するけど…お前急いでるんだよな?」
真剣だったアドの顔が急に和らいだ。
さっきも言ったとおりずっとダラダラしてた、急いでるのにも関わらず。
「そっ、それはあれだよ!私もちょっとは休暇欲しいなぁって…」
随分と長い休暇だなおい、2ヶ月ってなんだよ2ヶ月って。
とても病気を抱えた親戚?を置いてダラダラとしているのは無神経だと思った。
「まあいいや、そんなに大変なら、俺も力になる。もっと早く言って欲しかったけど…それは俺が悪いんだよな。」
「うん、じゃあ準備とかよろしく。もちろん戻ってくるのはだいぶ先になるから、出発の日程はアニマ君が決めていいよ。」
「分かった、じゃあ明後日だ。それまでに準備する。」
俺は携帯を取り出した。
優秀な医者を手配すれば解決するかもしれないけど、俺にそんな権力はないもんな。
頼むとしたら、親父しかいないか…
父親の番号を見て、電話をかけるかどうかを悩んだ。
絶縁関係の父親に頭を下げるなんてしたくないけど…今回は仕方ないよな。
俺は携帯を強く握りしめ、親父に電話をかけた。アラーム音がなっている途中、頭に親父の顔が頭に浮かぶ。
血の繋がっていない憎たらしい父親の顔が。
次回は金曜日までに投稿したいとおもっているので、よろしくお願いします。