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戦え現実  作者: 高岸 悠
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プロローグ

初小説書きです。自分がどのくらいできるのかテストです。

 暑い夏は終わり、蝉の鳴き声も少なくなった秋の初め。

 俺は今年最後の清明学園での夏も何事もなく終わってしまったわけで。

 受験シーズンに入ってからは周りは勉強にいそしんでいる。

 俺も受験勉強に勤しむ毎日のはずなんだが特にやりたいことがあるわけでもなく、勉強が好きでもないからそこそこに頑張っている。

 あくまでそこそこなわけで、たいした努力もしないこの毎日が退屈ではある。

 そんな俺、上杉 信が残りの学生生活を一新したいと思うのはすぐのことだ。

 

 

 夢を見ている。

 蝉がうるさいぐらい鳴いている夢。

 空は青く澄み渡っていて太陽が温度をあげている。

 そんな夏の始まりに幼稚園の妹と手を繋いで俺たちは横断歩道を渡っていた。

「はやくはやくー」 

 妹は無邪気に笑いながら俺の手を引っ張っている。



「おい、大丈夫か」

 体が揺さぶられる感覚を感じて意識が覚める。

「もう午前中の授業終わって昼休みだぞ」

 目を開けると横には細身の男。

「ひどくうなされていたが」

 こいつは須田 竜。

 俺のガキの頃からの付き合いでいわゆる幼馴染だ。

「ああ、まぁな」

 目をこすると少し涙がでていた。

「にしても午前の授業を全部寝て過ごすとは受験生としてはなかなかだな」

「徹夜でその分受験勉強したからいいんだよ」

 本当はゲームしてたんだけどな。

「本当か?」と竜は少し怪訝そうな目で見ている。

「まぁ大学はいいところに行ったほうがいいんだろうしな」

「にしてもこの学校もあと数ヶ月だぜ。彼女ぐらいこの3年のうちにお互いいても良かったんだけどな」

 竜は背伸びをしながら笑った。

 そう、俺たちはもう少しで卒業なんだ。

「まったく、さびしい学生生活だよ」

「ああ、そうそう。今日はちょっと碁会所に行かなきゃいけねーから先帰っといて」

「分かった」

 竜は去年まで囲碁の院生というプロを目指すほどの棋士だったが今年で卒業した。

 本人的にはむしろ棋士になる気はあまりなかったらしく、むしろ生き生きとしている。

 といってもあまり触れられたくはないらしいのでプロ試験の話はしないが。

「さてと、飯でも食いますか」

 竜はかばんから弁当箱を取りだす。

「弁当が今日ないから食堂で飯買ってくるわ」

「おう、はやく行ってこい。はやくいかねーとまずいものしか買えないぞ」

 竜はすでに箸を取り出したまご焼きをつまんでいる。

「うまそうだなー」

 竜のお袋さんは料理教室を開くほどの人でこいつの弁当はいつみても美味そうだ。

「はやく行ってこいよ」

 竜は背中を叩いたがこいつは俺が帰ってくる頃にはほとんどないんだろうなと思った。



 時既に遅し。

 売店には不味いことで有名なハムカツサンドしか既に置いてなかった。

 しかたないのでまともな牛乳プリンだけを買う。

 これだけを持って美味しいものを食べている竜のところに行くのも癪に触る。

 屋上で食うか。

 屋上は鍵がかかっているが実は鍵が壊れてるので無理やりドアを開けることができるのだ。

 カップルが屋上でイチャイチャするためにドアを壊したとかなんとか。

 まぁ、俺が知ってるのは恋人がいる友人から聞いた話なんだけどさ。 

 階段を昇るとメロディが聞こえてきた。

 やけに懐かしいメロディだ。

 有名なクラッシックの曲。

 えーっと、たしかカノンだっけ。

 ここから聞こえてくるってことは音楽室からなんだろう。

 よく聞くような演奏とは違う、綺麗で惹かれる旋律は気がついたら俺を音楽室のへと足を運んでいた。

 音楽室のドア窓から中の様子を伺う。

 そこには可憐にピアノを弾いている子がいた。

 黒縁のメガネを着けていて髪は黒髪のショート。それだけだとすごく地味そうな印象だがそれを覆す、ピアノの旋律との一体感が彼女を神々しく見えた。

 俺はそれをもっと近くで見たくてドアを開けたが彼女は気づくこともなく演奏を続けている。

 机に座りしばし聞き惚れる。

 彼女は揺れながら楽譜をみていないようでピアノと戯れるかのよう。

 カノンという曲は小学生や中学を思い返してノスタルジックになる。

 けど凄く居心地がいい。

 こういうのを聞くのが至福って言うんだろうなとふとおもった。

 しばらくして曲が終わり、彼女はピアノから指を離す。

 俺はおもわず拍手をしていた。

 すると彼女はやっと俺に気がついたようで驚く。

「ごめん。あまりにも良かったから勝手に聞かせてもらったよ」

「びっくりしました。お恥ずかしい」

 そう言って彼女は下を向いた。

「俺の名前は上杉 信。藤本さんだっけ?」

「私のこと知ってるんですか?」

 俺はこの子を知っている。

 でかい財閥の令嬢で学校でも有名人だ。

「下の名前までは知らないけどね」

「杏奈。杏奈っていいます」

 顔をあげて彼女は僕を見る。

 よく見るとかなり可愛い顔してるな。

「いつも昼休みにここにいるの?」

「ちょっとコンクールが近いから特別に先生から許可をもらって使わせてもらってるんです」

「へぇ、それってデカイやつ?」

「まぁそれなりに……」

「じゃあしばらく昼休みにここいるんだ」

 はい、と彼女は頷く。

 ふと俺はなにを思ったのか

「ええと、またお邪魔してもいいかな」

 気がついたら言っていた。

「えっ」

 やばい、流石に少し警戒されているのか困った顔を藤本さんはする。

「あ、いや邪魔だったらあれなんだけど」

「いやいや、そんなことないです。むしろ嬉しいぐらいです」

 社交辞令ってやつだろうな。

「本当に一人で練習に集中したいとおもうだろうし、ごめんよいきなり」

「人に見られてるほうが自分にとってもプレッシャーになるのでぜひ私の演奏なんかでよかったらいつでも来てください」

 そう言って藤本さんは微笑んだ。

「じゃあまた来るよ」

「はい。またぜひ来てください」

「授業はじまりそうだしもう行くよ。本当にありがとう」 

 俺は彼女に手を上げて教室を去った。



 翌日の昼休み。

 俺はまた音楽室へとやってきていた。

 あれが無料で聞けるならと昼休みが潰れても惜しくないだけの価値はある。

 階段を昇り音楽室を目指していると音色が聞こえる。

 昨日と同じだ。

 扉を開けると今日は俺に気がついたらしく手を止めてしまった。

「あ、ごめん。気にしないで続けて」

 俺がそう言うと彼女は会釈をして演奏を再開した。

 あー、癒されるなー

 昨日からずっと待ち遠しかったのもあってホッとする。

 それほどまでインパクトが強かったんだろう。

 むしろ藤本さんと仲良くなれるかもって期待もあるんだけどさ。

 呆然と聞いているとやがて曲が終わり彼女は話しかけてきた。

「どうでしたか?」

「いやーすげーなーしか思い浮かばないよ」

「本当に?」と彼女は微笑みかける。

 うーん、やっぱ上品なオーラをひしひしと感じる。

「マジ、マジ。というか俺なんかがここにいてもいいのかなって思うぐらい」

「ありがとうございます。けどまた来てくれるなんて思わなかったです」

「むしろ来ていいのかって思ったぐらいだよ」

 ふふっ、と嬉しそうな顔で彼女は笑う。

「そういえば上杉さんは昼ごはん食べたんですか?」

「そんなお腹すいてなくてまだだよ」

「ダメですよ。ちゃんと食べないと午後の授業、お腹すいちゃいますよ?」

「甘いな。逆にお腹がいっぱいになって午後の授業を寝ないで受けることができるんだよ!」

 力強く言ってみたもののたしかに腹が減って授業に集中できる気がしない。

「たしかにそれはあるかも」

 うんうんと藤本さんは頷く。

「藤本さんはもう食べたの?」

「あ、私はこれからなんです」

「じゃあ今日は終わりかぁ」

 ちょっとがっかりだがしかたない。

「いえ、私も午後の授業寝ないためにご飯を抜くことにします」

「ああ……」

 気を使わせてばかりだと自分を責めたいがここでそんな顔したら余計に気を使わせるだけだなと俺は思い。言った。

「じゃあ次はいっしょに食べようぜ」

「はい」

 そう言って藤本さんは頷いた。

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