4月19日~鈴葉を見直しました
サブタイトル...もうちょっと細かく定義したほうがいいだろうか
「そういえばさ...」
修也が体育の準備体操をしている最中に話しかけてきた。
「今日、中学と一緒なんだってな」
「へー」
中高一貫校なのでグラウンドももちろん一緒だ。
その代わりに、他の学校に比べてかなり大きいが...。
「で、何組が一緒なんだ?」
「さぁ?」
さぁ、っていい加減な情報だな。
そこはしっかり調べてこいよ。
「まぁ、何組が来たって俺たちには関係ないだろ」
「そうなんだけど...」
なんか...こう心がざわつくというか、いやな予感がするんだよな。
俺のこういうのはよく当たるからな。
「あっ、お兄ちゃん発見!!」
「げっ」
予感的中。
よりによって鈴葉のクラスかよ。
鈴葉は俺に向かって駆け足で近づいてきた。
「やぁ、鈴葉ちゃん」
「修也さん、こんにちは」
俺は、修也と鈴葉が楽しそうに話している間にさっさと準備体操を終わらせその場を離れようとする。
「どこに行くの?お兄ちゃん」
うっ、気づかれた。
「準備体操が終わったから行くんだよ」
戻れ、さっさと中学生の輪の中に戻れ。
「まだ、時間あるしお喋りしようよ」
え~、嫌だ。
めちゃくちゃ嫌だ。
鈴葉は、家族の俺から見ても言ってかわいい。
だから人目を嫌でも引いてしまう。
それが、高校生の中に一人だけ中学生が混じってたらなおさらだ。
さっきから視線を感じるのは気のせいじゃないだろう。
...胃が痛い。
「今週の土曜日、何の日か覚えてる?」
今週の土曜日か...確か4月の26日か。
あぁ~、覚えてるよ、もちろん。
けど、言いたくないな。
ここは
「さぁ、何だったっけな」
と言っておこう。
鈴葉は俺がそう言うのが分かってたのか笑って
「お兄ちゃん...前もそんなこと言ってちゃんとプレゼントくれたじゃん」
そう、4月26日は鈴葉の誕生日なのだ。
今年は何をせがまれるのか。
今日、帰ったら財布を確認しとこう。
しばらく鈴葉と話していると遠くから「鈴葉ちゃ~ん」と呼ぶ声がした。
「今行く~」
声のするほうに手を振りながら言うと俺のほうに振り返り
「それじゃあ、バイバイ、お兄ちゃん」
と言い投げキッスをして去っていった。
「かわいい妹だな」
修也が肘で突きながら言ってくる。
「五月蝿いだけだ」
姉妹の中で一番おしゃべりなのは鈴葉だ。
まぁ、それが鈴葉の良いところでもあり悪いところでもあるんだけど。
兄としてはもうちょっと落ち着いてほしい。
鈴葉と飛鳥を足して割ったらちょうどいいくらいになるだろう。
まぁ、現実はそうはいかないんだけど。
その後、体育が始まり体力測定が行われた。
俺は中の上といったところだ。
まぁ、上々だろう。
「おい、恭、見てみろよ」
「ん?」
修也の指差す方を見ると鈴葉が走ろうとするところだった。
パン。
スタートの合図と共に鈴葉がロケットダッシュを決める。
は、早っ。
しばらく見ないうちに、また早くなったんじゃないか。
あの細い足でよくあそこまで早く走れるもんだ。
そしてゴールした後でも息切れ一つしてない。
自分の妹だけど...ずげぇな。
鈴葉はゴールした後、俺のほうを向いてドヤ顔を決めてきた。
まいったよ、と両手を挙げると鈴葉は満足したように友達の元に戻っていった。
「やっぱ、何度見ても早いな」
「あぁ、そうだな」
修也と話しながら改めて鈴葉のすごさを思い知った午後の授業だった。