4月14日~奥村家は全力を尽くします
鼻水が止まりません...風邪かな。
「恭くん、新しいクラスには馴染めそうですか?」
佳奈姉が夕飯の時に、そう俺に話しかけてきた。
「馴染むも何も、中学と同じメンバーだろ」
丹波高校は中高一貫校なのでクラス替えをしても、顔見知りばかりだ。
まぁ、顔見知りと言っても友達という訳ではない。
ただ顔を知っているというだけだ。
女子に関しては失礼だが、桐原のように知らない女子も多くいる。
俺のコミュ力のなさが遺憾なく発揮されている。
修也は俺とは違い交友関係が男女共に広いので、女子にも友達が多くいることだろう。
本人曰く、友達まで早く行き過ぎると異性として見てくれないそうだ。
ぼっちの俺には関係のない話だが...。
「そ、それより、例の女子とはその後どうなったんだ?」
「例の女子...桐原のことか」
「そう、その桐原翔子だ」
どうなったって言われてもな...。
休み時間にたまに話したりするくらいだ。
あれ以来桐原とは一緒に帰っていない。
今でも話をする時にちょっと顔が赤くなったりする。
悪いことをしたな。
「別に普通だよ」
「普通とは何だ、普通とは」
止めろ、涼姉机を強く叩くな。
お茶がこぼれるところだっただろう。
「まぁ、大丈夫ですよ」
「大丈夫って...姉さんは何を根拠に言ってるんだ」
佳奈姉がなだめても涼姉の熱は冷めそうにない。
どうやって落ち着かせようか。
「盗聴器や発信機で二人の間に何もないことは確かです」
「何っ!?本当か、姉さん」
「はい」
「よかった」
...あれ?
今の会話におかしいところがあったぞ。
盗聴器...発信機?
そんなもん、俺の制服につけてんの!?
どこの世界に弟の制服に盗聴器や発信機を付ける姉がいるんだよ。
「な~んだ。佳奈お姉ちゃんが付けてるんだったら私の付ける必要ないね」
どこの世界に兄の制服に盗聴器や発信機を付けようとする妹がいるんだよ。
「...それなら、私も止める」
「止めるって...何を、飛鳥?」
「......待ち伏せ」
今、待ち伏せと仰いましたか?
道理で最近、飛鳥と帰り道で会うのか。
まさか仕組まれてたことだったとは...。
「これで安心ね」
「そうだな」
「だね~」
「...(コクコク)」
「......ハ、ハハハ」
乾いた笑いしか出てこなかった。
夕飯後、自分の部屋に戻り急いで制服を調べたが何も見つけられなかった。
佳奈姉が無駄に無駄なスキルが巧いことを改めて認識した夜だった。