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4月6日~無言のプレッシャーは最強です

4月6日、これにて終了です!!

 「えっ...奥村君のお姉さんがあの生徒会長の...」

HRホームルームが終わった後、帰り道で桐原に俺のことを少し話した。

だいぶ緊張もほぐれてきたのか、おろおろとはしなくなった。

これだけでもかなりの進歩と言えるだろう。

修也はマンガの新刊が出るとか言って、本屋に行ってしまった。

なので、今、俺と桐原だけしかいない。

えー、まぁ、正直に言わせてもらうと...。



めちゃくちゃ緊張する。

桐原は意識してないからいいが、俺はこの状況にめちゃくちゃ意識します。

たぶん、桐原がこの状況に気づいたら...やばい。

絶対に取り乱す。

HR前の気まずい状態に逆戻りだ。

それだけは絶対に避けなければ...。



「...くん。お...らくん。...奥村君」

「えっ、な、何?」

「さっきからボーとしてますけど...大丈夫ですか?」

しまった。つい考え込んじまった。

俺は、慌てて答える。

「だ、大丈夫、昼飯に何を食べようか考えてたんだ」

「確か、妹さんが二人いらっしゃったんでしたっけ?」

「あぁ、うん」

今日は、俺と飛鳥以外家に帰ってくるのは夕方ごろになるはずだから昼飯は俺が作らないといけない。

適当に答えたけど...本当に昼飯...何作ろう。

俺が作れる料理なんてしれてるしな。

ん~、飛鳥に何が食べたいか、直接聞いたほうが早いかな。



噂をすれば影とはよく言ったものだ。

飛鳥のことを考えてたら、本当に曲がり角で飛鳥と出会うなんて...。

「よ...よう、飛鳥、今帰りか」

俺の言葉にコクリと飛鳥は頷いた。

「それじゃあね、飛鳥ちゃん」

「また明日!」

「...バイバイ」

胸の前で手をヒラヒラとさせて、友達と分かれた後、飛鳥は俺のほうをジーと見てきた。

うっ、何...このプレッシャー。

少なくとも小学2年生が出せるものじゃないよ。

ほら、桐原なんてめちゃくちゃビビってるじゃん。



「何、怒ってるんだよ?」

「...た...り」

「えっ?」

うまく聞き取れなかった。

「もう一回言ってくれ」

そう、飛鳥に頼むと仏頂面にさらに眉間にしわを寄せるという飛鳥最大の不機嫌を表した。

うわー、言いたくなさそう。

むすっとした後、さっき言ったことを言ってくれた。

「...二人きり」

「「............」」

時間が止まった。

それを、今・・・言うのか。



ゆっくりと隣を見ると、桐原は顔を真っ赤にしていた。

そして、徐々におどおどとし始めた。

まずい、このままだと...。

「あうあうあう、あの、えっと、あの、あの」

桐原が案の定、エンストした。

頭から煙とか出てきそうだ。

「そ、それじゃあ、奥村君、ままま、また明日っ」

そう言って、桐原は見た目からは想像できないくらいの速さで走っていった。



ポカーンとなる俺。

いつも通り仏頂面の飛鳥。

気まずい空気、だけが残されていった。



「あのな、飛鳥」

「...二人きり」

飛鳥?

「違うんだって、たまたま帰る方向が同じだっただけで」

「...知らない女の人と」

飛鳥...さん?。

「...飛鳥」

「...二人きり」



予想以上に怒っていらっしゃる。

佳奈姉かなねぇ涼姉りょうねぇや鈴葉ともし同じ状況で出会ったら(考えたくはないが)、質問攻めに会うだろう。

それはそれでめんどくさいし、俺のメンタルポイントの減りが激しいんだけど、飛鳥の言葉少ない会話のほうが俺にとっては辛い。



「機嫌直してくれよ」

「......」

はぁー、と心の中で大きなため息をつく。

前を歩く飛鳥の赤いランドセルあたりから、不機嫌オーラがマックスに出ていた。

これは、いつものあれでいくしかないか。



「昼飯でも買いにコンビにでも行くか?」

そう言うと、飛鳥は振り返り首をフルフルと横に振った。

「じゃあ、どうする?」

数秒下を向き、考えた後

「...ナポリタン」

と言った。

飛鳥が機嫌悪くした時は俺の料理を食べさせると多少機嫌が良くなる。

飛鳥に限らず家の姉妹に共通してることなんだけど...。

パスタなら俺でも作れるし、ナポリタンくらいなら時々作ってるので問題なくできるだろう。

「じゃあ、スーパーにでもよっていくか」

「...うん」

俺が飛鳥を追い抜こうとした時、不意に飛鳥に制服の裾を掴まれた。

見ると、飛鳥が手を差し出している。

これで気を直します、とでも言いたげな顔だ。

まぁ、これで機嫌が直るのなら安いものだろう。



「ほらよ」

飛鳥と手をつないだ瞬間、飛鳥の周りにあった不機嫌オーラはなくなった。

それどころかお花畑が見えるくらい機嫌が良くなった。

扱い辛いんだか、そうでないんだか...。



飛鳥と手をつないだままスーパーで買い物をし、昼飯にご注文のナポリタンを作った。

手をつないだおかげか、ナポリタンのおかげか飛鳥の機嫌のよさは何日か続いた。

何だかんだ言っても、飛鳥は小学生なんだと思い直した昼下がりだった。




後日談だが、桐原のことを飛鳥が他の三人に言ってしまったらしく、姉と妹による拷問にも近い質問地獄にあったのは思い出したくない記憶として未だに脳に焼きついたままだ。

4月6日のような1日が長い話は今後、また書くかもしれません

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