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8月20日~飛鳥とデート②

何とか50話目投稿、思ってたよりも長かった

電車に揺られバスに乗ること1時間弱、俺たちは目的地である樫百合水族館に到着した。

平日だがそれなりの人がここを訪れている。

これが土日だったらどうなるのか。

考えたくもない。

電車、バスで飛鳥に座られ続けた足を屈伸で解し、一応逸れないように飛鳥と手を繋ぐと入場料を払いに受付へと足を運ぶ。

入場料を払い、受付からパンフレットを貰い飛鳥の分を渡した。

ふむふむ、パンフレットによるとイベント開始が2時からだからまだ時間にかなりの余裕があるな。


「取り合えず、順番どおりに見ていくか」


コクコクと飛鳥も首を振り了承を得れたところで先に進むことにした。

まずは、小さな水槽に入った熱帯魚が見れるコーナーだ。

水槽の横には展示されている魚の説明文があって始めて見る俺でもどういった魚かよく分かるようになっている。

おっ、これは昔映画になった魚だな。


「へー、こんな魚だったのか・・・」


説明文を読んで自分の知らない知識に感心していると痺れを切らした飛鳥にグイグイと奥のほうへと引っ張られた。

ちょっと夢中になりすぎたな。

1つ1つをじっくり見るのも面白いがそれをしているとイベントに間に合わなくなるかもしれないしな。

それに今日は飛鳥の誕生日だ。

飛鳥のペースに合わせてやるのが一番良いだろう。

飛鳥のペースに合わせるために飛鳥を見ていて気づいたことがひとつある。

飛鳥は熱帯魚を見るが説明文までは読まないらしい。

興味が無いだけかもしくはすでに知っているかのどちらかだ。

前者なら小学生っぽいなと思うが後者だとすると飛鳥は小学生ではないのではないかと思ってしまう。

飛鳥の場合、後者の方が可能性が高そうなのが恐い。


熱帯魚のコーナーを抜けると次に目にしたのは大きなガラス板だった。

目にしたのが大きなガラス板なのであって実際は巨大な水槽だ。

中には様々な魚達が気持ち良さそうにゆらゆらと泳いでいる。

鯵や鰈など庶民的な魚からのような普段目にすることのできないサメなどの魚まで見ることができる。

あれ、サメって魚だったっけ。

哺乳類だった気がしてならない。

ハンマーヘッドシャークが目の前を通り過ぎていくのを眺めているとふとあることに気づいた。


「飛鳥・・・どこいった」


気づけば飛鳥は俺の元を離れどこかに行ってしまっていた。

普通ならここで慌てるなりするのだろうが飛鳥だから心配は無い。

無責任とも言えるが俺は俺なりに飛鳥を信頼しているのだ。

さてと・・・どこに行ったのかな。

周りに目を向け飛鳥を探していると思いのほかすぐに見つかった。

俺の居た場所から数メートル離れた場所に飛鳥がガラスにくっ付きそうな勢いで何かを見ていた。


「飛鳥、何見てるんだ?」


近づいて飛鳥の目線を辿って見るとそこには悠々と泳ぐ亀の姿があった。


「亀がどうかしたか?」


「亀・・・泳いでる」


「泳いでるな」


亀は特殊な、それこそリクガメのような陸で生活するようなもの以外は至って普通に泳ぐものだが何がそんなに珍しいのだろう?


「飛鳥は泳ぐ亀を見るのは初めてか?」


「・・・初めて」


おお、初めてなのか。

だから、こんなに興味津津になって見ているのか。

ん・・・待てよ。


「俺も実際に見たのは初めてかもしれない」


水族館に来たのもかなり久しぶりだしその時の記憶が綺麗さっぱりと消えている。

小学生の頃に1度ここを遠足で訪れていたはずだがどうしても亀がいたことを思い出せない。

確か、サメはいた気がするんだ。

今みたいに5種類もいたわけではないがそれでも2種類くらいはいたと思う。

他にも記憶の片隅に残っている面影のある魚達が目の前を通り過ぎていくがそれでもやはり亀の存在を思い出すことができない。

あの頃には居たのかすら覚えてない。

もしかしたら居なかったのかもしれないと思えてしまうほど。


「で、どうだ亀を見た感想は?」


因みに、俺の感想は気持ちよさそうだ。

泳いでいる姿が他の魚達と比べるとどことなく心地良さそうに泳いでいるように見えるからだ。


「・・・遅い」


初めて見た亀の感想が遅いって。

いや、まあ遅いんだけどさ。


「これじゃあ・・・兎に負けて当然」


「最終的には勝ったけどな」


童話に出てくる亀と比べられてもこの亀にとってはただの迷惑にしかならないだろう。

これには俺も苦笑せざるおえない。


「飛鳥の中でどれが一番お気に入りだ?」


水槽の中を指して飛鳥に問いかけて見る。

俺は断然さっきのハンマーヘッドシャークだ。

普通のサメとは違うかっこよさがあのサメからは感じ取れる。

そういったところではあまり小学生の時と変わらないのかもな。


「・・・あれ」


「あれって言うと・・・鯵か?」


数ある魚の中で鯵が一番のお気に入りだと・・・。

渋いを通り越してどこか玄人の雰囲気を醸し出している。


「・・・脂がのっていておいしそう」


「着目点が主婦だ!!」


水族館に来て魚をそんな目で見てやるなよ。

水族館の鯵もびっくりな発言だ。


「他には無いのか!?脂がのっていておいしそうとかじゃなくて」


ん~、と飛鳥は少し考える素振りをした後、1匹の魚を指した。


「おお、マンボウか。分かる気がするぞ」


あのボーとしてる顔が何とも言えない癒しをくれるもんな。


「・・・食べたらきっとおいしいと思う」


「さっきと似たり寄ったりな意見じゃねえか!!」


マンボウは白身でおいしく食べることができるが、まさかマンボウを見てもそんな感想が出てくるのか。

っていうか、飛鳥にしてみればここにいる全ての魚たちがおいしそうで片付けられるのではないか。

それは何と言うか・・・不安だ。

飛鳥の将来が急に不安になってきた。

動物園に行ったら「・・・あのカバ・・・おいしそう」とかインディアンの皆さんも驚愕の一言が飛び出すんじゃないのだろうか。


「さ・・・さあ、次に行こうか、イベントが始まる前に見ておきたいところとかいっぱいあるし」


飛鳥の手を握りながら次のコーナーへと向かう。

飛鳥は少し不満そうだがそれでも俺の言うことに一理あることを認め大人しく付いてきてくれた。

本当に天才と変人って紙一重なんだなと思わされた1コマだった。



追加情報だ。

飛鳥が一番興奮していたのは深海魚のコーナーだった。

それも小学校2年生の女の子としてどうなんだ、飛鳥。

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