4月6日~新たな出会いを求めて
注)この話には、ブラコン成分が不足しています
「涼さん、やっぱかっこよかったな」
「そうだな」
生徒会長として振舞う涼姉はかっこいい。
姉としての涼姉とのギャップが激しい。
もう少し姉として涼姉がしっかりしてたらなぁ...。
「...の」
「次、何だっけ?」
「HRだったと思う」
「自己紹介とか諸事情とか話すんだろうな」
めんどくせぇ。
「...あの」
まぁ、自己紹介なんてありきたりなのを言えばいいだけだし、他は寝てても問題ないだろう。
さてと、どんな自己紹介をしようかな。
「あの!!」
「うぉ」
ビックリした。
後ろを振り返ると小柄な女子がいた。
眼鏡をかけており、前髪が少し長いので顔が分かりにくいが整った顔立ちをしているようだ。
声も小さく、おどおどとしてる所から小動物を思わせる。
「あの...これ、落としましたよ」
見ると手に俺のハンカチを持っていた。
さっきトイレに行ったときに落としたのか。
「ありがとう」
「い、いえ...あの、その」
俺がお礼を言うと少女は顔を真っ赤に染めてうつむいてしまった。
修也は隣でニヤニヤしたままだし、何だこれ。
けど、このままってわけにもいかないよな。
「俺の名前は奥村恭平って言うんだ、よろしく」
そう言うと、少女はまだほんのり顔を赤に染めながら顔を上げて
「わ、私は...き、ききき、桐原翔子...です」
と言った。
どうしたんだろ。
さっきから、びくびくして。
「どうしたんだ、さっきから」
「えっと、その...笑いませんか?」
桐原の言葉にうなづくと言葉を切りながら話してくれた。
「私、お、男の子と話したことが...あんまりなくて、女の子、同士でも数えられるくらいで、えっと...」
つまり要約すると...
「人と話すのがあんまり得意じゃないのか」
桐原は頷き、つぶやくように
「高校生にもなって...おかしいですよね」
と言った。
「そうか?」
俺は桐原のことをおかしいなんて思わなかった。
それも桐原の個性の一つだと思ったし、そんな彼女がわざわざ俺のハンカチを届けてくれた。
きっと、彼女の中にある勇気を振り絞ったんだろう。
笑うことなんてできない。
「俺だって女子と話しをする時は緊張するし、話だって得意なほうじゃない」
よく無愛想とか根暗って陰口を叩かれてるしな。
「それに、人間なら誰だって苦手なことの一つや二つあるもんさ」
勉強とか掃除とか苦手だし。
「だからさ...あんまり思いつめることでもないと思うぜ」
俺がそう言うと桐原は目を見開いて驚いていた。
「...えっと、その...あ、ありがとう、ございます」
ん~、少し言い過ぎたかな。
少しフォローしておくか。
「ごめんな、偉そうに言って」
「いえ、...あの、そうではなくて」
手をぶんぶんと横に振って、また顔を赤くしながら
「わ、私のこと...そんな風に、言ってくれたのは...あなたが初めてです」
そして
「だから、その......う、う、嬉しくて」
と言って耳まで真っ赤にしてうつむきながら言った。
うっ、これは...。
何か、俺まで恥ずかしくなってきたぞ。
顔、赤くなってないか。
何とかしてこの空気を変えないと...けど、どうやって。
「はい、はい。盛り上がってる所悪いがもうそろそろ行かないとHR始まるぜ」
一言余計だが修也のおかげで空気が入れ替わった。
今なら...
「そ、そうだな。行くか、修也、桐原も」
「は、ははは、はい。そそそそ、そうですね」
めちゃくちゃテンパってたけど桐原も何とか持ち直したようだ。
俺たちはその後クラスへと駆け足で戻った。
後の話だが、桐原とも同じクラスだったことには俺も修也も驚いていた。
次の話で、やっと4月6日が終了です