8月20日~飛鳥とデート①
「飛鳥もうそろそろ行くぞ」
玄関で靴紐を結びながらリビングに向かって飛鳥を呼ぶ。
すると、リビングへと通じる扉が開き飛鳥がこちらへと歩いてきた。
飛鳥は涼しげな水玉があしらわれた白のワンピースに麦藁帽子を被り、肩から下げれるような小さなポーチを持っていた。
見たところワンピースにポケットらしいものがなかったので多分あのポーチの中身はハンカチとかティッシュが入っているんだろう。
もう少し成長すれば深窓の令嬢と呼ばれること間違いなしだ。
今だとそうだな・・・・・・無愛想な子供だな。
そんな俺の考えを察したのか飛鳥は無言の抗議の目を向けてくる。
「似合ってるぞ、飛鳥にぴったりだな」
佳奈姉にセットしてもらった髪型が崩れない程度に頭を撫でてやる。
どんなに無愛想な顔をしていてもちゃんと褒めることは忘れない。
決して後が恐いからじゃない。
断じて違う。
・・・違うからな!!
頭を撫でたのが功を奏したのか飛鳥の機嫌は直ったらしい。
俺の横で飛鳥が靴を履き終わるのを待った後、手を繋いで家を出る。
「・・・うっ」
もう8月の終わりだというのに日差しはカンカンに照りつけている。
飛鳥には佳奈姉が日焼け止めを塗っただろうから大丈夫だろうけど、それでもこの日差しはキツイ。
早く陰に入らないと干物になってしまう。
俺でこれだけ辛いのだから暑さに弱い飛鳥なんて一溜まりも無いんじゃ・・・。
グイグイグイ
「めちゃくちゃ元気だ!!」
俺の手を引っ張りグングンと駅の方へと歩いていく。
そんなに慌てなくても電車には余裕で間に合うんだけどな。
時計を見ながら飛鳥に追いつくとすでにうっすらと首筋に汗をかいていた。
こんなに暑いと脱水症状が恐いよな。
そう思った俺は駅に向かう道の途中にあるコンビニで飲み物を買う提案を飛鳥にしたところ電車に遅れるんじゃないのかという目を向けられたが余裕があることを何とかして伝えるとすんなりとコンビニへ行くことを許可してくれた。
俺はスポーツドリンク、飛鳥はお茶をそれぞれ買うと互いに一口飲みそれぞれのカバンの中へと入れる。
これで少しは体力も回復したよな。
グイグイグイグイグイ
「有り余るくらいの力で引っ張られてる!!」
水分を補給したことによりパワーに磨きが掛かった飛鳥にドンドンと引っ張られあれよあれよと言う間に駅に着いてしまった。
どうすんだよ、まだ電車が来るまで15分以上もあるぞ。
取り合えず切符を買いホームに設置されている椅子に座ると隣の椅子が空いているにも関わらず飛鳥は俺の膝の上に乗って俺に寄りかかってきた。
・・・正直に言おう。
夏場に人2人がクーラーのかかっていない所でこんなことをしてると死ぬくらいに熱を持つ。
それは俺に限らず飛鳥も暑いと感じているはずだ。
だが、一向に俺から離れる気配が無い。
だってほら、落とされまいと俺のジーパンの裾を握ってるんだぜ。
離れる気、限りなくゼロですよ。
無理やり退けたら絶対に後の空気が悪くなるよな。
ここは自主的に退いてもらうとするか。
「飛鳥、ちょ・・・」
「・・・嫌」
「早い、いくらなんでも早すぎる、俺ほとんど何も言ってなかったじゃん」
「・・・断固拒否する」
「その上、無駄に意思が固い」
俺のジーパンを持つ手にさらに力が入ったのが感覚で分かる。
肉も一緒に摘まれているので痛い。
ジーパン脱いだら内出血でもしてるんじゃないかと思うくらい痛い。
痛すぎて汗では無い別の液体が流れ落ちそうだ。
『2二番線ホームに電車が参ります、白線の・・・』
おお、電車の来るアナウンスか、助かった。
これで飛鳥を膝から下ろす口実が・・・ゴフンゴフン。
「飛鳥、電車が来たから降りてくれ」
渋々といった顔で俺の膝から降りると俺の手を握り電車の扉が来る三角印のところまで引っ張っていく。
飛鳥がこんなに活発的に動いたのは久しぶりな気がする。
これだけ楽しみにされたらこっちも頑張らないとな。
「よし、行くか」
飛鳥と手を繋ぎ電車に乗りこんだ。
さあ、飛鳥とのデート?の始まりだ。
気合入れていくぞ!!
「・・・・・・」
「・・・・・・」
やっぱり座るのは膝の上なんですね・・・。