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8月18日~諦めが肝心

いよいよ夏休みも残すとこ2週間を切ってしまった。

俺は読書感想文を残して夏休みの宿題は全て終えたので悠々とした夏休みを過ごしている。


「クークー」


昼間からソファで寝ている鈴葉は多分、いや絶対に夏休みの宿題に手を付けていないだろう。

付けていたとしても3ページくらいしかやっていない。

これは推測ではなく今まで鈴葉と過ごしてきた中で蓄えられてきた経験からくるものだ。

こいつのラスト1週間の追い込みは近くで見ていて呆れるを昇華させ感動に値するものだ。

もっとその力を最初の方で使って欲しい。

アイスコーヒーを飲みながら読書感想文を書くための本を捲る。

ん~、この本中々面白いぞ。

流石は涼姉だな、借りた甲斐があったよ。

このペースなら今日中には読みきれそうだ。

小説の残りが3分の1を切った所でテレビから楽しげな音楽と共にCMが流れてきた。

どうやらどこかの水族館が開園して10周年だそうだ。

それは、おめでとうございます。

俺にはまったくと言って良いほど関係ないけどな。


「・・・・・・行きたい」


「・・・」


隣でテレビを見ていた飛鳥がボソッと口に出していった。

もちろん飛鳥の隣にいた俺にもその言葉は聞こえていたがあえて聞こえなかった振りをする。

絶対連れて行けって言うもん。

ほら、不自然なくらいにこっち見てるもん。


「・・・行きたい」


今度は俺の真正面に立ち目を見ながら言ってきた。

これでは聞こえない振りはできない。


「この前、夏祭りに行ってきたばっかだろ」


文庫本を閉じ台所に麦茶を飲みに行く。

というのは建て前で飛鳥から逃げるために麦茶を飲み次第、自分の部屋へ逃げ込むための逃走ルートの確保が最たる理由だ。

だが、俺の行動を見越したのか飛鳥も台所に付いて来た。

こやつ、やりおる。


「飛鳥も麦茶飲むか?」


一応聞いておくと飛鳥はフルフルと首を横に振った。

やはり俺の行動潰しのために来たのか。

8歳のくせに鈴葉よりも頭が回るから厄介だな。

コップをシンクに置き自分の部屋へ行こうとするとすかさず飛鳥が俺のズボンを掴んできた。


「何だよ、水族館なら・・・」


「・・・誕生日」


嫌な汗が背中に流れるのを感じた。

水族館、誕生日と来たらもうあれでしょ・・・例のやつでしょ。

飛鳥が必要以上に俺を見てくる。

うっ・・・視線が痛い。

これは逃げられないと悟った俺は腹を括った。

連れて行くしかないと。


「・・・ちょっと待ってろ」


リビングに置いてあるノートパソコンを起動しさっきCMで流れていた水族館のことを調べる。

ここから電車で1時間、そして駅から直通のバスが出てるらしいのでそれに乗り10分のところにあるらしい。

入場料は大人1000円、中学生以下700円らしいので財布には優しそうだ。

それにCMでも言っていたが、今10周年記念で何やらイベントが行われているらしい。

イベントか・・・気になるな。

俺の胡坐あぐらの上に座っている飛鳥の顔を見ると表情には出てないが目が爛々と輝いていた。

どうやら飛鳥もイベントやらが気になるらしい。

チラッとカレンダーを見て予定を立てる。

土日は人が多そうなので避けるとして・・・明後日くらいか。


「飛鳥、明後日でいいか?」


俺の言葉に飛鳥の首が上下に動く。

よし、決まりだな。


「じゃあ、明後日までに読書感想文でも仕上げるか」


パソコンの電源を切り、机に置いてある文庫本を開き読み始めると飛鳥も自分の部屋から本を持ってきて隣で読み始めた。

飛鳥も佳奈姉かなねぇに負けじと劣らぬ読書家なのでよく家でも本を読んでる姿を見る。

さて、飛鳥はどんな本を読んでいるんだろうか。


『戦場を駆けた風』


「・・・・・・」


少なくとも小学生が読むような本じゃないと思った。

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