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7月10日~緊急家族会議

「鈴葉ちゃん、飛鳥ちゃん・・・お話があります」


佳奈はテーブルを挟んで座っている鈴葉と飛鳥に話しかけた。

空気はまるで戦争中の軍部のように張り詰めている。

佳奈の対面にいる2人も佳奈と同じように真剣な表情で見つめる。


「佳奈お姉ちゃん、私も話があるよ・・・たぶん同じだと思うけど」


鈴葉の言葉に合わせるように飛鳥も首を縦に振る。

「やっぱり・・・」、と佳奈は頭を抱えてしまった。

この場にいる3人は共通の問題を抱えている。

涼は友人の家に恭平は本屋に行っているので戻って来るのは夕方になるだろう。

あと2時間・・・その間にこの問題の解決法を導き出さなければいけない。

この問題は他者から見ればさほど重要でまた迅速に解決しなければならないような問題でも無いだろう。

だが、この3人の場合は違う。

これは由々しき問題だ。

重い空気に耐え切れなくなった鈴葉が問題を切り出した。


「最近、涼お姉ちゃんとお兄ちゃん・・・仲良いよね」


「正確には遊園地に行ってからですね」


鈴葉の言葉に上乗せする形で佳奈が補足を入れた。

この2人の言葉から分かるように最近の涼と恭平は仲が良いのだ。

仲が良いことは喜ぶことではあるが悲観すべきことではない。

それはこの3人も分かることだろう。

問題はその先にある。

恭平を除く4姉妹はいづれも極度のブラコンだ。

結婚したいとさえ思っている。

いや、結婚しようと思っている。

飛鳥以外は恭平と血を分けていないので結婚しようと思えばできるのだ。

そんな状況で涼1人だけが頭1つ出てることはこの3人にとってあまり面白いものではない。

今すぐはありえないがこのまま互いの仲が深まり恋人同士になり最後には結婚というストーリーがあるかもしれない。

それだけは絶対に阻止しなくてはならない。

文字通り命がけで。

しかし、迂闊に手を出すと逆効果になってしまう場合がある。

この場合、恭平の涼に対する好感度を下げに掛かろうとすると逆に上がる可能性が大いにあるのだ。

だったらどうするか。


「私達の好感度を上げないといけないね」


鈴葉の意見に他の2人は全面的に頷き肯定する。

下げられないのならばこっちが上がるしかない。

だが、信頼がすぐに付かないように好感度もすぐには上がらないだろう。

この3人は気づいていないが、恭平の涼に対する好感度が高いのはあまり積極的にイチャイチャしてこないことと単純に憧れがあるからだ。

確かに、遊園地での1件は恭平をドキッとさせたが決定的なものではなかった。

恭平の中で何故、涼が頭一つ出ているのか根本的に分かっていない3人に問題の解決なんて最初から無理な話なのだ。

佳奈や鈴葉はイチャイチャが激しすぎるのでちょっと敬遠されがちだし、飛鳥は血の繋がった妹なので論外。

消去法でも涼がトップに立つのは当たり前の結果だった。

しかし、そんなことで恭平を諦めるほど奥村家の女は弱くない。

ここで黙って見過ごせるほど仲良しな姉妹ではない。

欲しいものならそれが物だろうが人だろうが全力で奪う。

古来より愛は奪うものだ。

何の問題もないと3人は踏んだ。

このままいくと最後は家族通しによる全面戦争が勃発しかねないがそんなことは当の3人は知る由もない。

例え知っていたとしても引き下がらないだろうが・・・。

そんな時佳奈が目を光らせてバンとテーブルを叩きながら立ち上がった。


「私にいい考えがあります」


「いい考えって?」


「それはですね・・・(ゴニョゴニョ)」


「「・・・・・・」」


佳奈のアイデアを聞いた2人も佳奈のように目を光らせ佳奈のアイデアを採用することを決めた。


「そうとなれば色々と準備が必要ですね」


「そうだね、またお兄ちゃんの目を盗んで買いに行かなきゃいけないものもあるし」


「・・・私も」


来週から飛鳥の通っている小学校も鈴葉の通っている中学校も恭平と涼が通っている高校も佳奈が通っている大学も一斉に夏休みに入る。

時間はたっぷりとある。


家には3人の不気味な笑い声が響いていたがそれを止める者などこの家にはいなかった。

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