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6月22日~涼姉とデート②

 電車に揺られること1時間、バスで呼吸困難になること30分、ようやく目的地の遊園地であるハイアールパークにやって来た。


休日なので混んでいると思ったのだが意外にチケット売り場に人はあまりいなかった。

結構早い時間に来たかいがあったな。

早速この涼姉りょうねぇが当ててきたチケットを1日フリーパスに換えてもらいに行かないと。

チケット売り場の列に並ぶとすぐに順番が来た。

あまりの早さに驚きながらもチケットをフリーパスに換えてもらってっと・・・。


「さぁ、行くぞ、恭平」


「涼姉、急がなくても十分乗れるって」


駆け足で行こうとする涼姉を必死に説得して何とか歩いて最初のアトラクションに行くことができた。

最初はジェットコースターか。

ハイアールパークには3つのジェットコースターがありこれはその内のもっともマイルドなやつだ。

スピードも高さも内臓がフワッとする感じも他の2つに比べればましだ。

ましなだけでそれなりのスピードと高さがある。

肩慣らしにはちょうど良いだろう。


「最初から飛ばすと思ってたけどなかなか堅実なやつから乗るんだな」


「当たり前だ、あんなのに乗れるか」


涼姉が指差す先にはハイアールパークで最も人気が高くそしてもっとも強烈なアトラクション、アルティメットスクリューが走っていた。

これはさっき言ってた3つのジェットコースターの中でスピードと高さ、そして、内臓のフワッ感がずば抜けて高いやつだ。

聞いた話だと失神するやつまでいたらしいとか・・・。

曰く付きのアトラクションだ。


「前にも話したが取りあえず午前中はこの順番で回ろうと思っている」


涼姉が見せてきたパンフレットを見ると午前中はあまり過激なものには乗らないみたいだな。

安心したぜ。

ジェットコースターが苦手って言うわけじゃないが流石に午前中でしかも連続で乗られては精神の方が先に逝ってしまうからな。

涼姉が良心のある姉でよかったよ。

これが鈴葉だったら容赦なく2連続もしくは3連続乗らされていたかもしれない。

考えただけでも恐ろしい。


「恭平、順番が来たみたいだぞ」


「もう来たのか、本当に早いな」


まだ9時を回ったところだからか俺達の後ろにもさほど列は無かった。

取りあえず係員の指示に従ってシートに座ってっと・・・。


「恭平、もっとこっちへ来い」


「何でだよ、十分近いって」


今俺達が座っているのは2人掛けのシートで当然俺と涼姉の間は狭く無いようなものだ。

互いの足が既に触れているのにこれ以上どう近くに寄れと。


「いいから来るんだ」


安全バーが下ろされる直前に涼姉に引かれ密着した状態で固定されてしまった。

多少は動けるが涼姉から離れることは無理そうだ。

今は坂の真ん中くらいか。

あと10秒も経たないうちに落ちていくだろう。

並んでる時に見てたけどあまり坂の急斜も無いしこれは楽勝・・・。

あれ・・・おかしいな。

震えてるぞ。

まさかこの程度のジェットコースターで俺は恐がっているのか。

右手が・・・以上に震えて。

ダメだ、我慢できない。

右手を見た俺はその光景に思わず心の中で「あぁ、なるほど」と呟いてしまうくらい納得のいく光景が広がっていた。

俺の右手は涼姉の左手に覆いかぶさられていた。

言い直すと涼姉は思い切り俺の右手を握っていた。

うっ血するんじゃないかってくらいに強く。

意識したら・・・痛みが。

これ離したら青痣ができてるんじゃないか。


「恭平、恐かったら手を繋いでもいいんだぞ」


「繋いでいいも何も俺は繋がなくていいんだけど」


繋いでもいいって・・・俺の右手は涼姉がガッチリ掴んでるじゃないか。

どうにかして離れようと思ったが涼姉の握力が凄すぎて離れる気配がない。

握力何キロあるんだよ。


「仕方が無いな、恭平がそこまで言うんだったら繋いでやるか」


「そんな事言ってないんだけど!?」


涼姉の中では俺が手を繋いできたとなってるらしい。

頭の中でどう変換したらそうなるんだ。

そんな事を言ってる間にもう坂の頂上に・・・。


「恭平、私という姉を持ったことに感謝するんだなぁーーーーーー」


「おおおおお」


涼姉が話し終わる前にコースターは落下を始めた。

一番マイルドな割には結構スピードが出るな。

けど、これくらいなら小さい子供とかでも大丈夫そうだな。


「つお、あああ、ぐぐぐ」


横で涼姉が変な事になってるけど気にしないでいいや。

それよりもこれが終わった後に俺の右手がこれまで通り機能するかが心配だ。

恐怖だ、色々な意味で恐怖だ。

早く終わってくれ。

右手が・・・右手があああああ。




結果から言うと何とか俺の右手は一命を取り留めた。

めちゃくちゃ痛いし痣もできてるけど動く。

こいつ・・・動くぞ。

それにしても・・・。


「涼姉、絶叫系が苦手なら無視して乗ること無いのに」


俺の隣でグタッとしている涼姉は何と言うか・・・いつもの凛々しさとはかけ離れていた。

弱弱しく頭を垂れて今にも倒れそうだ。

あれでマイルドって言ってるんだからこの先大丈夫かつくづく心配だ。


「だ、大丈夫だ。もうちょっとしたら・・・次に、行くぞ」


本当に大丈夫だろうか。

午前中は大丈夫そうだけど午後からのスケジュールは見直したほうがいいかもしれない。

それにしても・・・涼姉が絶叫系が苦手だったとは意外だったな。

意外でもないか。

家でも心霊特集みたいな番組が始まったらすぐにチャンネル変えてたし。

意外にそういうのが苦手なのかも。

涼姉の新たなる1面を見れた気がしてちょっと得した感じだ。

後5分くらいで涼姉も回復しそうだしパンフレットでも見とくとするか。




「恭平、次はあっちだぞ」


「涼姉、だから走らなくていいって」


ジェットコースターから受けたダメージを回復させた涼姉は遅れた分を取り戻す勢いでアトラクションに乗り始めた。

午前中はそんなに絶叫系がないので気持ち的に楽なんだろう。

けど、フリーフォールに乗った後はまた10分くらいダウンしてた。

前のジェットコースターの時と同じように俺の右手も犠牲になった。

ううう、痛い、痛いよ。

絶叫系に乗るたびに俺の右手が痛めつけられていく。

次乗る時は涼姉の右側に乗ってやる。

これ以上俺の右手を痛めつけさせるわけにはいかない。

このままでは日常生活に支障をきたす恐れがある。

いや、ある。

俺の中の何かがそう訴えている気がする。

とにかく涼姉から右手を守らなくては・・・。





まだ涼姉とのデートは始まったばかりだ。


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