6月2日~体育祭⑥
初めて4000字近くまで書きました。さすがに疲れた~。
『最終競技~全員リレー』
ついに来たな、全員リレー。
これはまず学年別で競い各クラスの1位が決勝に進める。
そしてその決勝で勝ったチームが1位となる。
これも独占の危険がある競技だ。
気を引き締めていかないと・・・・。
「まずは1年からか」
プログラムを見ると1年、2年、3年の順番で行われるらしい。
俺の出番は次だな。
軽く屈伸や肩入れなんかをしておくとしよう。
パーーーン
どうやら1年の全員リレーが始まったみたいだ。
俺には関係ないから別に見なくてもいいや。
とりあえず一通り準備運動を済ませるとリレーは大詰めになっていた。
次でどのクラスもアンカーに渡る。
今のところトップから黄、青、赤、緑の順番だ。
アンカーは・・・さ、坂上!?
坂上がアンカーの証である襷を肩から掛けてやがる。
サッカー部だから足が速いのだろうか。
ここで負けてくれれば内心爆笑物なんだけどな。
そんなことを考えている間に黄色のバトンがアンカーに渡った。
逆算すると坂上がバトンを貰うころには黄色のアンカーは・・・あそこか。
かなりの距離があるな。
これは逆転は無理だろう。
青もアンカーにバトンが渡りついに坂上にもバトンが渡った。
さぁ、無様に負けるがいい。
「・・・・・・はっ」
なんだあれ。
めちゃくちゃ速いじゃん。
もう青のアンカー抜いたし。
坂上はグングンと黄色との差を縮めていく。
頑張れ黄色、もうちょっとでゴールだ。
頑張れ頑張れお前ならできる、俺は信じてい・・・。
パーーーン
「ぬ、抜きやがった、あんなに差があったのに」
ゴールの手前のラストコーナーで黄色を抜き去った坂上はそのままゴールイン。
アンカーは伊達じゃないってことか。
だが、これで気合が入ったぞ。
俺たちも負けるわけにはいかない。
さぁ、次は俺たちの出番だ。
テントから出て行き集合場所へと集まるとするか。
俺たちのトップバッターは修也だ。
あいつは足も速いし体格もいいからスタートダッシュに最適なやつと言えるだろう。
ちなみに俺はアンカーだ。
修也ほどじゃないが俺もそこそこ足が速い。
中学のころ学年問わず姉が美人&血が繋がっていないという理由だけで放課後命を狙われていた経験があるからな。
その時に培われた脚力とスタミナは未だ健在だ。
パーーーン
開始の合図が聞こえたが俺が走るまで時間があるから昔の話でもしようか。
命を狙われていたのは中学1年から3年までの3年間だ。
放課後のチャイムがなった瞬間まずクラスメイトに狙われる。
それを巧みに交わし教室を出ると別のクラスのやつや学年のやつに狙われるのでこれも巧みにスルー。
昇降口に行きすばやく靴を履き替える。
ここまでの作業を行うのに使う時間、わずか1分30秒。
ただし、ここからが勝負だ。
学校から出るとどこから狙われるか分からない。
少しでも休もうと足を止めた瞬間即やられる。
何度かそれで地獄を見た。
だからここから家に帰るまで走る。
時々妨害が発生するがどこぞの元パシリのアメフト部員のように紙一重で避けていく。
家に着いたときは息切れと汗が凄かった。
けど、2年目くらいから息切れしなくなったな。
家から学校まで1キロはあるんだけど・・・。
人間って凄いな。
ちなみに今はそんなことはやってない。
やる必要が無くなったからだ。
高校に上がる前から襲撃がパッタリと無くなったのだ。
理由は簡単だ。
俺が毎日襲われているのが佳奈姉と涼姉に知られたのだ。
そこからそいつらがどうなったのかは言わないでおこう。
一言で言えば狩が始まったのだとだけ言っておく。
おっと、もうそろそろ俺の出番か。
立ち上がり軽く屈伸をする。
「よし、行くか」
レーンに出て見ると俺たちのクラスがトップだった。
2位との差はかなりあるがここで手を抜くのは仲間に申し訳がないので俺も全力疾走だ。
バトンを受け取るとすぐに加速をする。
トップスピードは修也に負けるが加速力なら俺の方が上だ。
すぐにトップスピードに持っていくとそのままぶっちぎりでゴール。
俺たちも決勝へと駒を進めた。
俺が走ってる最中に佳奈姉が撮っていた写真は数枚を残して後で消しておこう。
決勝戦は1年1組、2年2組、3年2組となった。
涼姉の3年3組は惜しくも2位で決勝戦には行けなかった。
涼姉のクラスが決勝に来れていればかなり楽だったけど仕方が無いな。
俺たちが勝つしかない。
俺はさっきと同じくアンカーだ。
坂上も同じくアンカーにいる。
分かってはいたがこいつと戦う羽目になるとはな。
つくづくツイて無いぜ。
パーーーン
「奥村恭平」
開始の合図と共に坂上が俺に話しかけてきた。
相変わらず敬語を使わないやつだな。
もう慣れたけど。
「何だよ」
「俺はこの勝負に勝って涼さんを手に入れる」
涼姉を物のように扱ったことにイラッと来た。
こうなれば売り言葉に買い言葉だ。
「お前に手に入れられるほど涼姉は甘くねぇよ」
「分かってるさ、だからこそ手に入れる。・・・どんな手を使ってでもな」
「はぁ・・・何言ってるんだ」
「もうすぐ分かる」
「?」
坂上との会話を止めレースを見るともうすぐ中盤に差し掛かろうとしていた。
俺たちの次の走者は桐原だ。
すぐ後ろには1年1組の走者もいる。
バトンが渡る時ははぼ同じくらいだろう。
だがこの後は足が速いやつが控えている。
1度抜かされても十分巻き返せるだろう。
今桐原にバトンがわた・・・。
「なっ・・・」
桐原がバトンを受け取った瞬間転倒した。
いや、あれは転倒したと言うよりも・・・。
「何てこった。青組が転んでしまった」
「坂上、お前」
「止めてくださいよ、証拠も無しに」
「くっ・・・」
こいつ、嫌なやつだとは思っていたけど・・・ここまで外道だったなんて。
今すぐにでも胸倉を掴み殴りかかりたい衝動に駆られたが何とか押さえつけた。
今ここで問題を起こせば間違いなく俺たちのクラスは失格になるだろう。
証拠も無いんじゃこいつらを失格にできない。
クソッ・・・。
「バレなければやっていないことと同じだ」
「お前は根から腐ってるようだな」
「結果が全てだ。それまでは過程に過ぎない」
「てめぇ・・・」
「ほらもうすぐ出番だぜ」
見ると後2人走れば俺たちアンカーの番だ。
トップは赤、青、緑の順番だ。
このままじゃ赤が優勝しちまう。
・・・涼姉、許してくれ。
こんなことはしたくなかったが俺は頭にきた。
ならやってやるよ。
お前の言う証拠の無い妨害ってやつを・・・。
バトンを渡すのにゾーンというものがある。
このゾーンの中でなら受け取る側はゾーンで受け取る限りどこにいてもいいルールになっている。
俺は坂上の前方に位置取りをした。
バトンを持った走者がラストコーナーを曲がり直線に指しかかった。
微かに風が吹いているな。
絶好の妨害日和だぜ。
「坂上・・・一つ教えてやる」
「あぁ?」
「直接だけじゃないことをな」
「何言ってるんだ、言い訳なら後で聞くぜ」
気づかないか、まぁそうだろうな。
ならその身をもって味わえ。
俺の側方を赤組の走者が走り抜けたと同時に地面を力いっぱい擦り砂煙を上げさせる。
もちろんこれは内による動作の中で行う。
うまくやれば不自然な感じを出すことなく砂煙が上がる。
さも砂煙が走者が走りぬけた際に生じたもののように感じられるのだ。
そして風は俺の向いてる方向から吹いてきている。
つまり・・・。
「目に・・・砂が」
坂上の目に砂煙がダイレクトヒットすることになる。
当然目なんて開けていられない状態になる。
よって・・・。
「あっ・・・」
落とす。
バトンを落とすことになる。
拾おうと思っても砂煙のせいで上手く掴めない。
もたもたしてる間に俺にバトンが回ってきた。
坂上の側方を走り去りトップに躍り出る。
「やろっ・・・」
坂上もバトンを拾い俺を追いかけてきた。
坂上の足の速さから見てこのまま逃げ切れるか微妙な所だ。
「ハァハァハァ・・・」
ラストコーナーを曲がったところで坂上が追いついた。
やっぱ速いな。
心は腐っていたが足は本物だ。
このままじゃ・・・抜かれる。
「恭平、頑張れ」
この声は・・・涼姉。
テントを見るといつもクールな涼姉が立ち上がり握りこぶしを作って応援している。
ここで・・・。
「ここで負けてたまるかよ」
坂上とのデットヒートをゴール前で繰り広げる。
足はフラフラだし息も切れてる。
けどここで負けたら俺は一生後悔するだろう。
何より涼姉に悲しい思いをさせるだろう。
そんな事・・・弟の俺が許せるわけが無い。
血の繋がりがなかったとしても俺たちは姉弟なんだ。
パーーーーン
「や・・・やった」
勝った、勝ったんだ。
かなり危なかったけど・・・俺は勝ったんだ。
あの坂上に。
坂上の方を見ると悔しそうな顔をしてこっちを見ていた。
これで全員リレー優勝。
そして・・・体育祭も優勝だ。
坂上との勝負・・・・・・俺の勝ちだ。
次回の投稿は私情のため遅れます。