6月2日~体育祭②
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ここで丹波高校体育祭について説明しよう。
丹波高校は3学年4クラスというありふれたクラス分けなっている。
ここまでは普通の学校と何ら変わりないだろう。
しかし、ここからが丹波高校独自といえる部分だ。
体育祭はチーム対抗となっている。
クラス対抗ではなくチーム対抗だ。
事前にクラス代表でくじを引き同じくじを引いた学年のクラスと同じチームになるという仕組みだ。
もちろんチームは1年2年3年で構成される。
そして、各チームに色が振り分けられる。
俺たちは青色で体操服の胸の位置に青色の布が縫い付けられている。
俺たちのチームは1年4組、2年2組、そして3年3組。
・・・3年3組ってまさか。
「今日は1日よろしく頼む」
「「「涼さーーーーん」」」
涼姉のクラスだった。
なんて笑顔だ。
これが男女問わず恋に落とす笑顔か。
こんな笑顔俺でも・・・・・・来ないな。
さすがに、家族だし。
「涼さん、坂上との約束って本当ですか?」
「あぁ、本当だ」
テント内に阿鼻叫喚の渦が起こる。
泣くもの、叫ぶもの、テント内は地獄のような景色が広がっていた。
何か、不憫だ。
「だが、私は君たちが勝つと信じている」
涼姉がそう言った瞬間テント内に充満していた絶望の空気が一変した。
「当たり前ですよ」
「坂上なんかに渡してたまるかよ」
「涼さんは私たちの王子様なんだから」
士気が上がりに上がった。
それより・・・
「涼姉の人気パネェ。」
姉の人気の高さに少し嫉妬・・・・・・しない
分かりきってることだしな。
『第1種目~100m走』
確か、これには修也が出るはずだったな。
応援しに行くか。
テントから出て行き100m走出場者が集まっているところで修也を探す。
なかなか見つからないな、ここにいるはずなんだが。
「修也さん、頑張ってくださいね」
「分かったからテントに戻ってくれ」
あっ、居た。
修也は安住と戯れていた。
邪魔をするのは申し訳ないな。
「そっとしておこう」
「そっとするな」
修也が俺に掴みがかってきそうな勢いで詰め寄ってきた。
必死だな、修也も。
「いやー、楽しそうだったから」
安住がだけど。
修也はものすごくやつれている。
病人かってくらい。
修也はこれから先・・・生きていけるのだろうか。
「楽しいもんか」
「楽しいです」
両極端な答えが両者から返ってきた。
本当に仲が良いんだな。
「今お前仲が良いとか思わなかったか」
「思った」
「どこが!?」
「こんな人前で堂々とイチャイチャしてるんだから仲が良い以外見えないって」
「ほら奥村さんだってこう言って下さってるじゃないですか」
安住がここぞと言うばかりに修也に抱きつく。
まだ夏は来てないのに熱いね。
この2人・・・いや1人の周りだけ。
「遥、抱きつくなって・・・あっ集合だ。じゃあな」
風邪のように去っていく修也を俺たちは呆然と見ていた。
それにしても速いな。
さすが100m走に出るだけのことはある。
「安住、テントに戻って応援してようぜ」
まだ6月だが照りつける太陽は夏のようだ。
この炎天下の中いるのは体力をすり減らすだけだ。
安住は女子なんだし日焼けとかも気にするだろう。
日焼け止めとか塗ってきてるだろうけど・・・。
「そうですね、テントからの方がよく見えますからね」
安住と一緒にテントに戻るとちょうど修也が走るところだった。
グッドタイミングだな。
「修也は3レーンか」
修也の他に4人走るようだ。
「皆速そうだな」
陸上部までいるな。
これはちょっと修也きついかな。
「修也さんなら大丈夫ですよ」
ニコニコしながらレースを見守る安住。
どこにそんな自信があるのだろうか。
そんなことを思っている間にレース開始のピストルが鳴り響いた。
慌ててレースを見る。
修也は・・・トップだ。
陸上部が驚愕の表情を浮かべている。
それくらい速い。
そしてそのままトップでゴール。
「す・・・すげぇ」
「さすが修也さんです」
陸上部が涙目だ。
あんな走り見せられたらそうなるよな。
「ハァハァハァハァ」
修也が息を切らしながらテントに戻ってきた。
汗の量がすごいな。
「修也さんタオルです」
「ありがと、遥」
修也は俺の隣に座りタオルで汗を拭きながら息を整える。
「それにしてもすごい走りだったな」
「えっ・・・あぁ、まあな」
苦笑いで答える修也。
何か様子がおかしいな。
「どうしたんだよ?」
「レースが始まる前に遥に言われたんだよ」
「・・・何て?」
単に興味が湧いたので聞くことにした。
何て言われたか気になるじゃん。
「もしこのレースで1位になれなかったら私と朝から修行です。もう1度体を鍛え直しますってな」
「そ、それは・・・」
死にますね。
心も体もズタズタに。
だからあんな速く走れたのか。
人間追い込まれるとすごいんだな。
修也を見てつくづく思う俺だった。