5月27日~果たし状
「お前に話がある」
いつかの玉砕した男子生徒が俺のクラスにやってきてこう言ってきた。
こいつは俺が上級生だってことを知っているのだろうか。
敬語を使う気配がまったく無い。
「ここじゃダメなのか」
「ダメだ」
殴りたくなってきた。
何故、上から目線なのだろうか。
つくづくむかつくやつだ。
けど、このままここに居座られる方がもっとむかつく。
弁当を搔き込み教室の外へと出る。
そしてそのまま校舎裏へ・・・。
「で、何の用だ?」
「俺はお前から涼さんを解放すると決めた」
何を言ってるんだこいつは・・・。
ダメだこいつ、振られたショックで頭がおかしくなったのか。
「お前がだらしないから涼さんは俺に振り向いてくれないんだ」
その理論はおかしい。
単にお前の魅力が足りないだけだ。
涼姉は家族の中で一番ブラコン度が低いんだぞ。
まぁ、その分ときどき常軌を逸した行動を取ることがあるんだけど・・・。
「解放するって言ったけど具体的にはどうするつもりなんだ?」
「来週、体育祭があるだろう」
確かに、来週の土曜日に体育祭がある。
だが、それが何なのだろうか。
「そこで俺たちのチームが勝ったら、俺が涼さんと付き合うための手伝いをしろ」
よし、帰ろう。
くだらないことで俺の昼休みを無駄にしやがって。
踵を返して教室に戻ろうとした時男子生徒が慌てて俺を呼び止めた。
「おい待てよ、そんなに俺に負けるのが恐いのか」
挑発と知っているのであえて無視の方向で行く。
こういうのは突っかかったら相手の思う壺だからな。
「待てって言ってんだろ」
ガッと肩を思いっきり捕まれる。
正直痛かった。
「その勝負に勝っても俺にメリットがないじゃん」
あくまでいい訳だ。
そんな勝負受ける気さらさら無いからな。
「もし俺が負けたら涼さんから大人しく身を引く、これでどうだ」
どうだと言われても・・・。
「その勝負、乗った」
声に驚き後ろを振り返ると涼姉が立っていた。
腰に手を当てビシッと指を指すという無駄にかっこいいポーズで。
「いいのかよ、涼姉」
負けたら俺が下級生の手伝いさせられるんだぞ。
「よっしゃ、じゃあ体育祭で勝負だ。ちゃんと手伝ってもらうからな」
そう言い残し、男子生徒は走り去ってしまった。
「良いのかよ涼姉、そんな約束して」
「いいんだ、正直付きまとわれててうんざりしていた」
ストーカー気質も持ち合わせているらしいです。
そんなやつの手伝いなんて死んでも嫌だ。
「それに、私は恭平が勝つと信じてるからな」
照れくさくなるような台詞を惜しげもなく言う涼姉。
宝塚に入れば一躍トップに躍り出られそうな笑顔だ。
「俺もあんなやつには負けたくないからな」
来週の体育祭で俺はあいつに勝つ。
涼姉をあんなやつに渡すものか・・・。
あれ、俺も大概のシスコンだったりするのかも・・・。