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5月5日~遥 襲来③

祝日だと・・・そんなことは気にしない。

 「初めまして、安住 遥です。よろしくお願いします」

騒動があった休み明けの月曜日、修也の顔や彼女が土曜日に着ていた制服からそれとなく分かってはいたが・・・。

「どうして、どうしてなんだ。」

隣で修也が物々と何か言っている。

さっきからずっとこんな調子だ。

安住が修也の家に居候兼妻としてこれからいるらしい。

それと、この2日間でそうとう絞られたらしい。

ぐったりとしていた。

それと反して、安住は肌がつやつやになっている。

「・・・・・・」

無言で朝買ってきた栄養ドリンクを修也の机に置いた。

ファイト、一発。




今日は安住も一緒に食べると言うので桐原も机をくっつけて食べている。

俺の隣に桐原、修也の隣に安住となっているが

「はい、修也さん、あーん」

「止めろって」

「「・・・・・・」」

さっきからこんな調子だ。

俺と桐原はずっと唖然としながら昼飯を食べてる。

安住が修也にぞっこんなのもあるが、もう1つ理由がある。

「なんで重箱?」

安住が持ってきた弁当箱はお節などが入っていそうな漆塗りの重箱だった。

もちろん3段重ね。

見てるこっちが腹いっぱいになりそうなボリュームだ。

「修也さんにお腹いっぱいになってほしいんです」

なるとおもうよ、それは腹が弾け飛ぶくらいに。

「こんなに食いきれるかよ・・・そうだ恭と桐原も食べてくれよ」

「えっ・・・でも」

「なぁ?」

俺と桐原は顔を見合わせてどうするかと悩む。

旨そうだけど、さすがに躊躇うよな。

「遥もいいよな?」

「もちろん、いいですよ」

スッ、とおかずの入った重箱を俺たちの前に出してきた。

「じゃあ・・・お言葉に甘えて」

「いただきます」

俺は卵焼きを桐原はほうれん草のバター炒めを食べた。

「こ、これは」

外はしっかりとした焼き加減、しかし中は半熟でとろとろ、さらにこれは・・・出汁か。

かつおと昆布で作られた芳醇な香りと味、これなら何個でも食べられそうだ。

佳奈姉かなねぇのと比べるのは失礼だが、こっちのほうが数倍も旨い。

「修也・・・いい奥さんを貰ったな」

「えぇ、こんな料理が毎日食べられる修也さんが羨ましいです」

修也、お前には勿体ないくらいだ。

「何でそうなる!?」

「いい奥さんだなんて・・・照れます」

「遥も照れなくていい」

結構いい感じに見えるんだけどな。

修也は何がそんなに嫌なんだろうか。

そんなことを考えながら残りの昼休みを過ごした。

結局答えは見つけられなかったけどな。




「修也、安住のどこが嫌いなんだよ」

午後の授業の間も考えていたが分からなかったので帰る途中に修也に直接聞いてみた。

今は俺と修也だけしかいない。

桐原は委員会、安住は部活などを見に行っている。

「顔も綺麗だし家事だってできる。お前のタイプじゃないのか?」

「分かってないな、恭は・・・」

「・・・何が?」

「あいつは・・・性格に問題があるんだ」

性格に問題だと・・・。

見たところそんなこと無いと思うんだけどな。

安住の性格を一言で言えば古風だ。

夫の3歩後を歩いてくるような人だと俺は思ってる。

「俺は小学生のころ女友達が居なかった・・・何でか分かるか?」

女友達が居なかっただと。

今の修也からは考えられないことだ。

気さくなやつだし、面白いやつだ。

何故だろう・・・・・・分からん。




「遥が邪魔してたからだよ」

「・・・ん?」

邪魔って何さ。

「あぁ、あれだろ。修也のことが好きだからあんまり他の女子と話さないようにしてたんだろ」

「そんなちゃちなもんじゃ断じてない」

修也がいきなり声を荒げて言った。

どうしたんだいきなり。

それから修也の心の叫びが続いた。

「あいつは俺が他の女子と話してるところを見た途端俺を校舎裏に拉致するんだ。そして、永遠と言われ続ける。私は修也さんのことを愛しています。ですので、修也さんも私を愛してください。分かりましたか。返事ははい以外認めません。・・・って笑顔で言うんだぜ」

何か今の話を聞いて安住の印象がガラリと変わったぞ。

病んでいらっしゃる。

「・・・まぁ、それくらいならかわいいもんじゃないのか?」

修也は曇った目を俺に向けて「本当にそれだけだと思ってるのか」、と言ってきた。

「えっ、他にも何か!?」

「あるに決まってるだろ。あいつは学校中に言いまわってたんだ。修也さんは私の夫となる人ですので女子の皆さんは近づかないでください。もし近づくのであれば・・・覚悟してくださいね、とな」

あぁ、修也かわいそうな子。

まてよ、それじゃあ・・・

「お前、明日からやばいんじゃ・・・」

「あぁ、あいつなら今日中にあらかたのことは済ませるだろう」

「・・・・・・」

修也の目がどんどん曇っていく。

まるで死人のように。

本当についてない男だぜ、お前ってやつは。

人のことを言えるような立場じゃないけどな。




修也の明日がすばらしい物になりますように・・・乾杯



次回の投稿は少し遅れるかもしれません。

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