表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/64

5月3日~遥 襲来②

5月3日とサブタイトルにありますが2日~3日の話です

 「どうだ、少しは落ち着いたか?」

「・・・あぁ、何とかな」

あれから佳奈姉かなねぇに事情を掻い摘んで説明した。

そして、佳奈姉は快く修也が家に泊まることを許してくれた。

今はリビングで温かいお茶を飲んでいる最中だ。

ちなみに、さっきまで上にいた2人も今は降りてきている。



「何があったんですか?」

佳奈姉が修也に優しい口調で尋ねた。

修也は言葉を選ぶようにゆっくりと、

「明日・・・来るんです。」

と言った。

「何が来るんだ?」

全員が思っていたことを涼姉りょうねぇが言った。

来ると言って思いつくのは、荷物か人くらいだが・・・。

「お・・・幼馴染と言いますか、腐れ縁と言いますか、そいつが家に来るんです」

「女子?男子?」

鈴葉がまったく緊張感無さ気に修也に言った。

よくこの空気の中、そんな質問ができたな。

兄としてお前の正気を疑うよ。



「女子なんだけど・・・あれを女子と言っていいものか」

どんな女子だよ。

めちゃくちゃ見て見たいよ。

その女子のことを思ったのか、修也がガタガタと震えだした。

「落ち着け修也、深呼吸だ」

過呼吸になる勢いだ。

そんなに恐いのか。

「とりあえず・・・修也、お前風呂は入ってきたのか?」

「あぁ、風呂に入った後に電話がかかってきたからな」

よく見ると髪の毛が乾ききっていないところがちらほらある。

そんなに焦ってたのか。

「電話って・・・何の?」

「明日、俺の家に来るって・・・」

修也は悟りでも開きそうなほど遠くを見つめていた。

帰って来い、修也。




「これでいいだろ」

押入れから布団を引っ張りだし床に敷く。

修也にはここで寝てもらおう。

「俺は佳奈さんと一緒の部屋で寝たいな、添い寝で」

「よし、今からお前の家に電話をする」

「じょ、冗談だって・・・」

まったく・・・。

ここまで軽口が言えるんだったらもう大丈夫だろう。

「電気消すぞ」

「OK」

俺はリモコンを操作し電気を消した。





「今日さえ乗り切れば、悪魔は去る。俺は勝つんだ」

朝からテンションが高いな。

いや、不安を紛らわしてるだけなのか。

あまり眠れなかったのか、よく見ると目の下にくまが少しだけある。

そんなに嫌なのか・・・。

「恭くん、修也くん、朝ごはんですよ~」

「今行くよ」

「朝から佳奈さんの手作りの朝ごはんが食えるなんてラッキー」

うわぁ・・・うぜぇ。

さっさと朝飯を食いに行こう。

部屋を出て行こうとする俺に向かって修也は真面目な顔でこう言った。

「俺・・・ずっとこの家に居ていいか」

「馬鹿なのか、お前は」





事件は突然起こった。

事件と言っていいのかどうか微妙だが人によっては色々な意味で事件だろう。

「こちらは奥村恭平さんのお宅で間違いないでしょうか?」

「そう・・・ですけど」

夕方、修也とゲームをやっている時にインターホンが鳴り、玄関を開けると丹波高校の制服を着た黒髪ロングの美女が立っていた。

リボンで括られた髪からは凛とした雰囲気が漂ってくる。

しかし、どこかほんわかと落ち着きのある佇まい。

佳奈姉と涼姉を足して半分に割ったような人だ。



「何か、御用でしょうか?」

そう聞くと、

「こちらに、私の主人が来ているはずなんですけど・・・」

と、言ってきた。

主人?

俺の思考がフリーズした。

美女といっても歳は俺と大して変わらないと思う。

16~18くらいだろう。

その歳で夫持ち・・・。

何かやばいものに俺は関わってるんじゃないのか。

そう思えて仕方が無い。



そんなことを考えていると彼女は玄関先のあるものを見つけてこう言ってきた。

「あら、その靴・・・夫が履いていたのとよく似ています」

見つめる先には修也の靴があった。

もしかして・・・いや、そんなはずは。

「間違っていたら、失礼ですけど・・・夫の名前って」

「大友修也です」

ビンゴだ。

この人が修也いわく悪魔らしい。

けど、全然そんな風には見えない。

綺麗だし、性格も良さそうだ。

修也のドストライクのタイプじゃないのか。



「上がってもよろしいですか?」

「えぇ・・・どうぞ」

彼女から滲み出るオーラ的なものについ返事をしてしまった。

靴を脱ぎ、リビングへと続く扉へと近づいていく。

リビングまで、5、4、3、2、1・・・。



「恭、遅かったな。誰が来て・・・」

修也が彼女を見た時の顔は忘れることができないだろう。

笑顔のまま固まったその顔を。

まるでバイブ機能が発動している時のように震えだすコントローラー。

もちろんバイブなどではなく、修也自身の震えだ。

さっきまで笑顔だった修也の顔はこの世の終わりみたいな顔になっていた。

耐え切れなくなった修也はガチャンとゲームのコントローラーを床に落とし、立ち上がり後ずさる。

笑顔のまま修也に近づいていく美女。

なんだこの光景。

奥村家全員がポカーンとしてるぞ。



「どうして、修也さんはこんなところに居るんでしょうか?」

「あ、遊びに・・・」

「昨日、言いましたよね。明日、伺うので待っていてくださいと」

「そ、そうだったっけな」

「ふふふ・・・」

「ハハハ・・・」

ガシッ、ギギギギギギギ

あ、あれは・・・アイアンクロー。

相手のこめかみに合わせて手を置き、締め上げる技だ。

これをするにはそこそこの握力がいる。

あまり女性向けの技じゃないのだが・・・

「いでぇーーーーー」

悶絶する修也を見て察するに・・・相当痛いらしい。

痛さのあまり暴れていた修也が徐々に大人しくなっていく。

そして、修也は完全停止した。

あれ、これって気絶してるんじゃ・・・。



「それでは・・・これで失礼します。夫がお世話になりました」

迎えの車の助手席に座った彼女は笑顔のまま俺たちにお礼を言ってきた。

未だ意識の戻らない修也は後部座席に手と足を縄で括られた状態で寝ている。

今なら修也の行っていたことが分かる気がする。

この笑顔が悪魔の笑みにしか見えてこなくなってきた。

修也・・・お前はつくづく不幸な男だよ。

そんなことを思っている間に車が発車しすぐに見えなくなった。

きっと修也は今夜も寝られないだろう。

アーメン。




「恭くん、あの二人のように私たちも・・・」

「却下で」


ユニーク10000人ありがとうございます。これからもがんばります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ