4月26日~鈴葉とデート③
サブタイトルを一斉に変えました。
こっちのほうが分かりやすいね。
今、俺たちはショッピングセンターのベンチに座って休憩している。
予想上に服屋でHPを削られすぎたためだ。
あぁ、疲れた。
隣に座る鈴葉の手にはさっき買ったワンピースの入った袋がある。
そして、服屋を出てから鈴葉の機嫌はすこぶるいい。
良すぎて恐いくらいだ。
ワンピースは思ってたよりも少し高かったが、問題ないだろう。
「他に行きたい場所とかあるか?」
鈴葉は、「ん~」といいながら考え始める。
任せといてと言ってた割りに計画なんて最初からなかったようだ。
頼りになるんだかならないんだか・・・。
「適当に歩こうよ、いい店が見つかるかもしれないし」
適当でいいのかと鈴葉に言うと、ショッピングなんてそんなもんだよと言い返された。
そんなもんかねぇ。
「ちょっと、ここで待ってて」
「どこに行くんだ?」
「秘密だよ」
そう言って、鈴葉はどこかに行ってしまった。
たぶんトイレだろう。
鈴葉が帰ってくるまで何してようか・・・。
「あれ、奥村君?」
いきなり名前を呼ばれ、声のするほうを向くと桐原が小さなかばんを持って立っていた。
桐原らしい落ち着いた青色のスカートに白のシャツを着ている。
「桐原じゃないか、どうしてここに?」
どうしてって、ショッピングセンターなんだから買い物以外ないだろと思ったが話のきっかけを作りたかったので仕方なくと言うやつだ。
「私ですか?本を買いに来たんです。大きい本屋にしかなくて・・・」
桐原が鞄から取り出した紙袋に2~3冊ほど小説が入っていた。
どれも知らない著者だな。
小説を多く読む方ではないけど有名な作家くらいなら知っている。
「桐原が買った本ってどんなの?」
「推理小説と恋愛小説です」
「ん~、恋愛小説は苦手だな」
「そうなんですか?」
桐原は意外そうな顔をしていた。
俺が恋愛小説を読むと思っていたのだろうか。
佳奈姉はよく読んでたな。
何故か姉と弟の禁じられた系が多かったような気もするけど・・・
「何か他人の恋愛話を聞いてるみたいでむず痒くなるんだよ」
「男の人はそういうの多いらしいですね」
女子は恋愛話が好きそうだから大丈夫なんだろう。
俺には耐えられん。
「男の人でも詠みやすいものなら私、何冊か持ってますよ。・・・貸しましょうか」
「恋愛小説ね・・・好き嫌いせずに読んでみようかな」
「それじゃあ、また週明けに学校に持って行きます」
「楽しみにしてるよ」
桐原は本のことになるといつもより言葉数が格段に多くなるな。
積極的にもなるし。
いつもこれくらい話せたらいいんだけどな。
「ところで、奥村君は何を買いに来たんですか?」
「・・・・・・」
桐原さん、言えるわけないでしょう。
鈴葉とデートだなんて。
嫌な汗がいきなり体中から噴出してくるのが分かる。
ここは・・・
「いろいろとな、本とか文房具とか・・・」
全力でごまかす。
便利な言葉だぜ、いろいろ。
「お兄ちゃ~ん、お待たせ」
このタイミングで戻ってくるな。
どうして数あるタイミングで今なんだ。
「あれ、妹さんじゃないんですか?」
「あ・・・うん、一緒に買い物に来てるんだ」
「仲がいいんですね」
えぇ、仲が良いですよ。
兄妹の一線をいつでも超えようとするくらいに。
「お兄ちゃん、お待たせ」
鈴葉がニコニコとして俺に抱きついてくる。
「で・・・その女は誰」
そして、一連の流れのようにギロッと威嚇するように桐原を睨みつけた。
止めろよ、桐原がびびってるだろ。
「あ・・・あのっ、わわ、わたし奥村君のクラスメートの、ききき、桐原翔子と申します」
思わず敬語になってるぞ、桐原。
気持ちは分からなくもないけど・・・。
「今、お兄ちゃんは私とデート中なの」
「・・・デート?」
そうですよね、普通そんな反応しますよね。
兄妹でデートなんてしないから。
「・・・兄妹ですよね?」
「愛の前には兄妹なんて小さなことだよ」
小さくないわ。
むしろ、大きすぎるくらいだろ。
「!!」
桐原の目が変わった。
何、そのキラキラした目は・・・。
「小説で見たことがあります。禁じられた恋、迫り来る葛藤、それでも抑えきれない愛・・・」
・・・何か、語り始めたぞ。
さらに、桐原は止まらず、
「数多くの障害、乗り越えてゆく2人、無常な現実・・・」
ダメだ。
暴走してるぞ。
「桐原・・・落ち着け、これはだな」
ただの買い物だと言おうとした時、桐原が何も言わなくていい風に手のひらを俺に向けてきた。
「私は何も言いません。二人の恋路を邪魔するほど私は無粋者ではありませんからね」
言わせて、特に恋路の部分とか。
それと、桐原・・・キャラが変わってきてるような気がするんだが。
「それじゃあ、邪魔者は帰りましょうかね」
桐原は帰り際に鈴葉に向かって「頑張ってくださいね」と言って帰っていった。
何を頑張るんだよ。
それから、ショッピングセンターを3時間くらい散策して家へと帰った。
「ただい・・・」
「恭くん・・・ちょっとお話があります」
玄関を開けた途端、佳奈姉に連行される。
行き先はリビングだ。
リビングには涼姉と飛鳥もいた。
「で、何?皆揃って」
「恭くん、今日はどこに何をしに行ってたんでしたっけ?」
何、その話し方・・・恐い。
「し、ショッピングセンターに買い物しに行ってたんだよ」
嘘ではないはずだ。
鈴葉と一緒ということだけを除けばだけどな。
「恭平、素直に言ったほうが身のためだぞ」
「何のことだよ。確かに、俺は買い物を・・・」
「・・・・・・デート」
・・・完全にばれてますね。
この状態のことチェックメイト、王手って言うんじゃなかったっけ。
あれぇ、何でばれたんだろう。
分からないな。恭平、分かんない。
「さぁ、恭くん。私たちが納得の言うように説明してくださいね。時間はたっぷりあるので大丈夫ですから」
「鈴葉、助け・・・」
鈴葉はもうその場にはいなかった。
そんなところで自慢の脚力を使うなよ。
「いや・・・いやーーーーーーー」
その後、3人の誕生日にもデートをすることで許してもらえた。
何をされたかだって?
そんなこと聞くなよ。
トラウマになるだろう。つまりそんなことさ・・・・。
次回、おまけ回です




