表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/48

幕間2

うしろに全くストーリー進行に関係ないおまけの会話が付いています。

 追いかけてくる多数の影。それから必死に逃げていた。やっと逃げきれたと思ったら、目の前は突然炎に包まれた。竜は苦痛の叫びを上げながら空へ舞い、あの人は倒れた。そして嗤う、あの傷の男。


 まぶたを開けると、そこには木製の天井があった。ここは山賊のアジトで、一晩泊めてもらったのだ、ということを必死に思い出す。夢見のせいか、悪い汗をかいていた。ゆっくりと体を起こす。そもそも朝は苦手なのだが、こうも嫌な夢を見た朝などは特に最悪だ。

が、枕元を見ると、今は小型になっている竜、アッシュがすやすやと眠っていた。その様子を見て少し和む。 正直、この竜がまだ生きているとは思っていなかった。 あの日、この竜は相当な傷を負ったのだ。その痕は今も生々しく彼の体に残っている。が、こうして生きて、そしてまた逢えたことには、不覚ながら涙が出そうなくらい(公衆の面前で泣くのは憚られたため実際は泣かなかったのだが)嬉しかった。この竜は、私の幼き日の二年間、寝食を共にした無二の友人だ。そして、あの人との思い出の、大切な1かけらでもある。

 彼を起こさないよう、そっとベッドから降り、コートを羽織って外に出る。一応女の子ということで、自分には離れのウッドハウスが用意された。まあ、普段はじゃんけんで競い合う寝床なだけあって、まずまず快適だった。……と、何か音がすると思えば。

 山賊一味の中でも特に目立つ大男と、自分の連れの剣士が剣を交えていた。こちらに気付いていないようなので、しばらく木製のステップに腰掛けてその様子を眺める。

 大男のほうは間違いなくパワーファイター。それとは逆にうちの剣士は小回りの利いた動きと流しでうまく相手をまいている。真剣に勝負しているみたいなのだが、なんだか2人とも楽しそうだった。

 そういえば、結局のところまた彼に貸しを作ってしまった形になった。これ以上は危険だ。そんな気がする。

頼るのが怖い。信じるのは怖い。それを臆病だと人は言うかもしれないが、私はそうは思わない。だって、1人で生きていければ、それでいいのだから。

 朝日が差し込む。それに呼応するようにクオの剣が光る。それに目がくらんだのか、アルフォードの動きが一瞬鈍った。そこを見逃さず、クオは攻め込んだ。

 勝負あった。アルフォードの剣が弾き飛ばされていた。

「ふう、はは、俺の負けだ。やはりやるのう、お主」

負けても捨て台詞をはかないあたり、あの男はよくできた器なのだろう。

「うん。でも楽しかった」

「違いない、ははは。どうだ、少年。一杯いかぬか?」

「朝っぱらから飲むなよ……っていうか俺まだ未成年だってば……あ、アシュアだ」

やっとこちらに気付く二人。まあ、見ていて退屈はしなかったが。

するとアルフォードが言った。

「お嬢さん、見ての通りそなたの剣士はなかなか良い腕をしている。大事にしてやってくれよ」

……大事に、か。

「それは保障できないが。それなりの役目を果たしてくれるなら考えなくもない」

大事にするくらいなら、恐らく出来る。多分。

「だから絶対認めさせてやるって! 見てろよ!」

むきになってそう言っているあたり、彼はまだ自分の心中を察せていない。まあ、一生懸命なのは買ってやろう。

「今日、もう発つから。準備しておけ」


言葉通り、彼女達は午前中にアジトを去った。




おまけの2人と1匹のやり取り


「なあなあ、俺にも貸してくれよ」

クオはアシュアの肩に乗っている竜・アッシュのことを言っているのだ。

「借りたいなら貸してやるがこいつは……」

とアシュアが言う前にその竜は火をクオに向かって吐いた。

「熱っ! こげる! こげてるって髪の毛!!」

「こいつは気難しいぞ。特に男に対しては」

ぷいっと顔を背けるアッシュ。

「な、男に対してだあ? なんだコイツただの色魔か?」

べしっ!

何かがクオの顔に当たった。多分彼のしっぽだ。

(棘あるんですけど)

「なんだよ〜、背中に乗せてくれた仲だろ〜」

恨めしげに見つめるクオ。それを軽くあしらうような眼で

『あれはアシュアを助けるため仕方なく乗せてやったんだ。身分をわきまえろライオン頭』

と言っているような気がした。

「……ペットは飼い主に似るって言うよな……」

心からの言葉であった。が。

「……それはどういう意味だ?」

(おうまいがっと)

またしても彼は地雷を踏んでしまった。

「いうあ! なんか名前似てるよなあお前ら! アシュアにアッシュ! うん!」

「……ふん」

そう言った後、彼女は黙った。

(あれ?)

なんだかうまく話逸らせたみたいで、とりあえずほっとするクオ。よし、違う話題を、と意気込む。

「それよりアシュア、前知りたがってたろ? 男同士の契約の仕方」

ぶはっ……っとむせた彼女もクオは初めて見た。

「その話は掘り返すな馬鹿者!」

(顔が赤いぞ、アシュア)

「え? 知りたくない? まあ知らないほうがいいかもな〜」

そう言ってクオははぐらかしてみる。

「な、言いかけたなら言ってしまえ! 中途半端な奴だな」

(……やっぱり知りたいんだ)

「オルフェとアルフォードは誓いの言葉を交わして契約したって言ってた。まああれは準備が大変なんだけどな。ある種の神聖な儀式だし。普通はこの方法だなー。まあ、あれでも出来るけど。でも異性の場合は儀式形式は無理なんだって」

「ちょっと待て」

アシュアの声が強張っている。

「なんで男同士ならあれが免れるんだ! 不平等だぞ!!」

本気で許せない、といった顔で訴えるアシュア。

「ちょっと落ち着けって。なんだよ、そんなに走りたかった? そっち路線」

……と言ったそばで彼は後悔した。

「だーかーらーーーー! 私はそういうんじゃないっつってんだろうがこの朴念仁!! 私は世における女の立場の向上の視点からものを言っているのであって断じてそっち路線に走ってない!! そもそもなんだ古代の剣士どもは女好きだったんじゃないのか!? ええい、お前に説いてやろうこの世の不条理を!!! そして悔い改めろライオン頭!!!」

(ひーーーー……)

それから約1時間、彼らはアシュア先生の男女平等論を長々と聞かされたのだった。

                   (END)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ