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第31話:ピクニックへ

 ベインがソラのほうに向き直って

「ソラ、槍貸せ」

 ソラは持っていた槍をベインに投げてよこす。

「アシュアちゃんに万が一当たったら婚約取消しだからね」

「分かってんよ」

 ベインは苦笑して2本の槍を持った。

「2発でなんとかする、後はお前さんに任せたぞ」

 ベインはクオに向かってそう言ってから、右手に持っていた槍を思い切り投げた。

 かなりの速度で飛翔した槍は、見事に鳥の左翼に刺さる。

 しかし鳥は苦痛の声を上げながらも、まだ落ちるには至らない。

「もう1発!!」

 ベインがもう1本の槍を投擲する。

 今度は鳥の首筋に当たった。間違いなく致命傷になる部分だ。

「よし!」

 鳥の体勢が崩れ、急速に降下する。

「うわっ」

 しかし鳥はアシュアを放さなかった。

 その上

「ちょっと! あの鳥まだ飛ぶわよ!!」

 鳥は羽を異様にばたつかせ、浮遊を保っていた。

「くそ! アシュアを放せ!!」

 今度はクオが剣を投げるが

「!」

 太陽の剣はどこか虚しく鳥の脇を素通りした。

「おい馬鹿!! どこ見て投げてんだ!!」

 と、罵倒したのはアシュアである。

「クオ様、へっぽこすぎますわ」

 メリアもちゃっかり非難する。

 クオが大いにへこみかけた瞬間

 鳥が、啼いた。

「!?」

 クオの剣が放物線を描いて鳥の頭に刺さったのである。

 途端、アシュアを掴んでいた鳥の脚が緩んだ。

(落ちっ……)

 ふわっと嫌な空気を彼女が感じた次の瞬間、身体は地面に向かって落下していた。

「アシュアーーーー!!」

 ちょうど真下辺りまでクオが走ってくる。受け止めるつもりらしい。

「どけ馬鹿あああああ!?」

 そんなことは物理的に無理だと悟るアシュアはただそう叫んでいた。が。

「受け入れよ!!〈イレイア・アガラ〉」

 クオがそう叫ぶと、頭上で太陽の剣が反応した。

 まばゆい光が放たれて、落下速度が急に遅くなる。アシュアは周りの時間の流れが遅くなったかのような錯覚を覚えた。

(浮いて……るのか?)

 事態がうまく飲み込めないまま地上に迫り、アシュアはクオに抱き留められた。

 と同時に浮遊感はなくなり、

「「だっ」」

 結局2人はそのまま転んだ……だけならまだよかったのだが、互いの額をぶつけて星が飛んだような気分を互いが味わっていた。

「だ、大丈夫ですか?」

 メリアが2人に駆け寄る。

「ひゅー♪ ナイスキャッチ?」

 とソラは冷やかすが

「最後にこけるあたりはまだまだだなあ、おい」

 とベインは苦笑していた。

「……まったくだ」

 とアシュアは悪態づきながらとりあえず上半身を起こしたが

「ちょっと待て、アシュア」

 と、クオがアシュアの額に手をやる。

「!?」

 驚いてアシュアは身を退きかけるが腕が動かないのでそれも満足に出来なかった。

「……熱い。やっぱり熱い」

 クオがそう言う。

「な、別に熱くなんか……」

 とアシュアは主張するがそう言われてみれば身体がだるかった。

「あら大変、もしかしてお風邪がぶり返したとか?」

 メリアが指摘する。

「そりゃあ昨日の今日でこんなに動いたら熱も出るわよ」

 ソラが頷く。

「早く診てもらえよ、まだあの女医さん屋敷にいるだろ?」

 ベインがそう言った。

「げ」

 アシュアはついそう漏らしていた。

「『げ』って……そんなに苦手なのかよジュリ先生のこと」

 と笑いながらクオはアシュアを抱えて立ち上がる。

「ってこら! お前また何勝手に……」

「なんだよ、どうせアシュア裸足のままなんだしこのほうがいいだろ」

 とクオはもっともなことを言うが

「よくない! 全然よくない! せめて負ぶれ頼むから!」

 アシュアはそう主張した。

(いやー……おんぶのほうが気を遣うんだよな、実は)

 とクオは昨晩の経験を思い出し

「やだ。あ、ベインー、俺の剣拾ってくれ」

と話を逸らしつつギリアート家の屋敷に向かって歩き出す。

「やー、若いっていいなあ」

 と、ソラが冷やかし気味にそう言うと

「おいソラ、俺達だってそこまで歳くってねえぞ」

 そう言ってソラをひょいっと抱え上げ、肩に乗っけてしまった。

「ちょちょ、ちょっとベイン!? これはいくらなんでも色気無さ過ぎよ!?」

「……突っ込むとこそこかよ。まあいい、屋敷まで乗っけてってやるよ」

「え、別にいいのに。私そんなに疲れてないわよ?」

 と不思議そうにソラは言うが

「いいだろ別に」

 とベインは言う。

「???」

 ソラがクエスチョンマークを飛ばしていると

「ベインさんなりにクオ様に対抗してらっしゃるのですね」

 と、メリアが笑って言った。

 するとベインは顔を赤くするしソラもつられて赤くなるのでメリアはさらに可笑しくて笑ってしまった。




 帰って早々、アシュアは例の白い部屋に戻された。

「うわー、なになに、それで鳥に捕まって空を飛んだって? おもしろーい」

ジュリ女史がなにやら薬を取り出しつつ談笑する。

「面白くない!!」

 と言ったところでアシュアは咳き込んだ。

「あーあー、あんまり喚くと他の症状出てきて余計にしんどくなるわよー。はい口あけて〜」

 とジュリ女史は促すがアシュアはそっぽを向いた。

「もー、今飲まないと後でこっそり彼に口移しさせるわよ〜」

 とジュリ女史は後ろに控えているクオの方を親指で指しながらアシュアに耳打ちした。

「は!?」

 と、アシュアが口を開けた瞬間にジュリ女史は薬を放り込んだ。

「!」

「さー、水をどうぞ」

 ジュリ女史はにっこりとコップの水を勧める。してやられたといった苦い顔をしつつアシュアはしぶしぶ水を飲んだ。

「……ていうかこの腕はいつ動くんだ。このせいで今日は散々だったんだからな」

「明日になったら動くって。それまで大人しく寝てなさいな」

 そう言ってジュリ女史はまた去っていった。

「昨日アシュアが倒れたの、風邪のせいだけじゃなかったんだからさ、きっとジュリ先生もお前を休ませようと思って腕に麻酔かけたんだよ」

 と、クオが言った。

「……そうか?」

 アシュアはふてくされたように言ったが、少しばかり考えて

「……まあいい、もう寝る。早く治さないと出掛けられないからな」

 そう言って横になった。

「ああ、早く休め。良くなったら俺のとっておきの場所に連れてってやるよ」

 クオはそう言った。

「教会は行かないからな……」

 どこかもう眠たげに、アシュアはそう呟いた。

「さすがにそれはないよ」

 クオは苦笑し

「おやすみ」

 白い病室を後にした。




 クオは自分の部屋に戻って、窓の外を見た。

 夜空には星が瞬いていて、カタストロファーの黒い雲などはやはり見当たらない。

(あのカタストロファー、ほんとにあのでかい雲から来たのかな……)

 と、そう真剣に考えていると

「おいクオ、結婚指輪に最適っていうライア石ってえのはどこの川で採れるんだって?」

 と、ベインが寝支度をしながら尋ねてきた。

「え!? もう結婚するのか!?」

 クオが驚いて尋ね返すと

「さすがにそれはねえよ。でもせっかくここにいるんだから採っとけるもんは採っとかねえと」

 とベインは苦笑した。

「そっか。なら明日くらい行ってみるか?」

「ああ、案内よろしく頼むわ」




 翌日、アシュアの腕は動くようになり、風邪のほうも驚異の回復力でなんとかねじ伏せたようだった。

 加えて、人ひとりを即座に眠らせるほどの麻酔針を打たれ眠り込んでいたアッシュもようやく目覚め、

「さあ、今日は絶好のおでかけ日和ですわね」

 と、なぜか張り切っているのはメリアだった。

 朝霧が晴れてきた頃、ギリアート家の屋敷の玄関前にはアッシュを肩に乗せたアシュアにクオ、ベインにソラ、そしてメリアと屋敷の使用人たちが集まっていた。

「……あの、お嬢さんまでなんで?」

 ライア石を採りに行こうと鶴嘴つるはしを持って準備万端の様子のベインが突っ込んだ。

「あら、皆さん揃ってお出かけですのに私を置いていくなんてひどいですわ」

 と、ちゃっかり水筒を首から提げているメリア。手には弁当らしきものすら見える。

 傍らで

「お嬢様、昨日あんなことがあったばかりだというのに外は危険ですよ!」

 と、今にも泣きそうな顔の執事、ジョージが叫んだ。周りのメイドたちも口々にそういった類の言葉を交わす。

「もう、ジョーったら過保護が過ぎますわよ」

 と、メリアは全く聞き入れない様子だ。

「……万が一何かあってもメリアは守るようにするから」

 と、アシュアがこっそりジョージに耳打ちして

「お、お願いしますよ!」

 彼は引き下がった。

「じゃあ行きましょうか。えっと、まずは川? 川っていうと昨日私たちが落ちそうになったところよね」

 と、ソラが言う。

「あそこか……。ちょうど調べたいことがあったんだ」

 とアシュアは言う。

 あの時見たものを確かめようと思っていたのだ。

「? とりあえず行くか」

 と、クオが先頭を切って歩き出す。


 このとき空はまだ青く、かげりの片鱗すら見当たらなかった。


・・・サブタイトル、あまりにもネタがなくってそのまんまです。まだどこかスランプ気味なような気もしますがそろそろ剣士の町編も終盤ですね。


メリア「はい、突然ですが質問コーナーですわ」

クオ「・・・?」

メリア「クオ様、お姫様だっこよりおんぶのほうが気を遣うのはどうしてですの?」

クオ「え!? それをここで聞くのか!?」

メリア「あら、本編では語られないことはこういうところで語っていただかないと補完できませんわ」

クオ(補完するとこ間違ってると思う・・・ていうかこんなとこで言いたくないなあ・・・)

メリア「まあ大体予想はつきますわ」

クオ「つくんかい」

メリア「言えないということはきっと○ろ○ろな内容なのでしょう?」(←ワクワク気味)

クオ(うわあ、メリアが伏字使うとちょっと怖いなあ・・・。ああ、でもあながち外れてもないような・・・)

作者「ちょっとまてい、この小説はそんなに○ろ○ろな内容じゃないぞーーーー!」

アシュア「・・・頼むからそんな話をここでしないでくれ・・・」(←赤面気味)


コホン、失礼しました。

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました!

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