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幕間7

窓の外から鳩が鳴く独特の声が聞こえてきて、アシュアは目を開けた。

寝つきが悪かったせいか、傷が痛んだせいかよく分からないが、不思議な夢を見ていた気がする。

けれど寝覚めは悪くないから、良い夢だったのかもしれない。

(…………でも眠い)

一度起き上がってみたアシュアだが、ソラはまだ眠っているようだったし、二度寝でもしようかと考えたが。

(あんまり長居するのも迷惑だろうし……)

と考え直して起きることにした。



結局、4人と1匹は朝食もご馳走してもらい、礼を言って家を出た。

はいいのだが。

「ベイン達はどこに行くんだ?」

今後の予定をまったく立てていなかった。

「ああ、俺たちは剣士の町に行くつもりだったんだが、ダンテ卿のせいで時間食っちまったぜ……」

と、ベインの口から意外な言葉が出てきた。

「え?」

クオが一番驚いている。ここで故郷の名が出てくるとは思わなかったのだろう。

「剣士の町って……何か用でもあるのか?」

「ああ、仕事だ。俺達、カタストロファー退治専門ってわけじゃなくてな。人捜しだとか護衛だとか、いろんな仕事の依頼も請け負ってるんだ」

「まあ言ってみれば万屋よろずやよ。食べていくには仕事選んでられなくって……ってああ、何でもするって言っても胡散臭い仕事は引き受けてないわよ?」

とソラは苦笑しながらも弁解する。

「剣士の町の周辺は貴族の家が沢山あるだろ? そこのとあるお屋敷から娘さんの護衛依頼が来てな。話によると他にも沢山俺達みたいなのを雇ってるらしいが、数が多いほうが安心だとかで」

「ほう。随分と心配性なんだな、その親は」

とアシュアは呆れたように言う。

「けど、となるとそこまでは一緒ってことだな」

クオが言う。剣士の町は『地図上』、大陸最南端に位置している。そこから南に行っても、未開の荒野が広がっていて、人もいないことはないらしいが小さな集落しかないという。南の果てを目指すアシュア達は必ずそこを通ることになるのだ。

「ほう、これも縁だ。仲良くいこうぜ」

と、ベインが笑いながらクオの頭をくしゃくしゃとかき回す。

「まあ人数多いほうが楽しいしね。それに四六時中ベインの顔ばっかり見てたら暑苦しくてしょうがないわ」

とソラは肩をすくめる。

無理矢理焼いたベインの肌は元の色に戻りつつあるが、まだまだ小麦色だし、無精髭は彼のスタイルなのかもしれないが、それによってさらに暑苦しさが増していた。

「暑苦しいとは失礼な奴だな。男らしいと言え男らしいと!」

ベインが顔をしかめる。

「なーにが男らしいよ! もっと別なところで示して欲しいもんだわ! ね、アシュアちゃん」

とソラは口を尖らせて言う。

(いや、なんでそこで私に振るんだ)

とアシュアは困惑気味だ。

「なんだなんだ? そっちは女同士でつるむ気だな!よーしクオ、こっちはこっちで男同士の熱い語らいでもしようじゃないか!」

とベインはクオの肩に腕を回す。

「え、あ、うん……」

と、少々押され気味のクオだったが、はた、とアシュアのほうを見ると、この賑やかな様子を見て笑っているようだった。

「……」

そんな彼女を見て、クオも頬が緩む。


そんなこんなで、彼らはソリッドの町を出た。




 暗黒の中に彼はいた。

周りに侍るは漆黒の鎧をまとう騎士達。それも最新型の、戦闘力を従来より高めたカタストロファーである。 影の国の王から直に与えられた精鋭部隊だ。

「まーったく、レイドの奴も面倒なことをしてくれたよ、ほんと」

男は腰までありそうな長い漆黒の髪をときながら、誰に言うまでもなく呟いた。

彼は常々思う。

人型のカタストロファーは『独り言が多い』。

それに気付いているのは自分だけだと彼は自負している。けれどそれを隠そうとは思わない。どうせ周りの騎士達は、必要なとき、例えば戦闘時の指示を仰ぐときくらいしか喋らないように出来ているのだ。

「8年前も……どうして人間にあの石を預けたりした? しかも『保険』だった底石を奪われるとかいう間抜けな真似するし。ほんと、同じ『人型』として情けないよ」

彼は大げさに溜め息をつく。

ところで彼は人間が嫌いである。

しかし彼はその人間の形を模して創られたモノ。

しかし彼は『人型』のカタストロファーとしての誇りを持っていた。なぜなら、騎士型、獣型よりも頭がいいというのは周知の事実だからである。

ゆえに、人型のカタストロファーには将軍職が与えられる。

(上に立つのは嫌いじゃないんでね……)

彼は周りで気持ち悪いぐらい静かに待機している『無能な』部下達を見回しながらひとり薄ら笑いを浮かべる。

「……じゃあ行こうか。僕達が南の地を覆ってしまえば、地上は影の国のものになる。人間どもは僕らの奴隷になるんだ」

そう彼が言うと、甲冑の音だけを響かせて、騎士達が立ち上がった。

「……まあその前に、石を奪っておかないと。あれを本当に楽園まで持っていかれると、厄介だからね」


彼の名はシシイアボーク・カタストロフ。

事実上、影の国の王に次ぐ、かの国の第2権力者である。




 途中、商人の荷馬車に拾ってもらって、意外と早くソリッドの南隣の町、イアトンに着いたときだった。

「……なあ、あれ」

ベインが北の方向を見て言う。

「あ……」

北の方角の空に、黒い雲が現れているのが目に取れた。

「……タートル・タウンのあたりね……。吸血鳥のことといい、あの町も災難ね」

と、ソラが言う。

「でももうすぐあの雲、こっちに広がるってことだよな?」

クオがアシュアのほうを見て言う。

「……追いつかれるな、あの雲のでかさだと」

タートル・タウンあたりの上空に現れた黒い雲は、かつて見たことのないほど濃くて大きかった。初期の時点であそこまで発達している雲は珍しい。

(……影の国もそろそろ追い詰めに入ったってところか)

アシュアは考え込む。

そもそも、今まで各地域のカタストロファーを退治してまわってきたが、そんなのは言ってしまうと『気休め』だった。確かに1つの雲を潰しても、またその地域に違う雲が現れるとも限らない。彼女の祖父が記した記述によると、影の国ではカタストロファーを随時『創っている』という。相手の数は無限に近い。

だから、やつらの侵攻を止めるには、王座が空席になるまでにはなかったはずの、影の国とこの世界の『接点』を絶たなければならないのだ。

その鍵が楽園にあると彼女は踏んでいる。

(……しかしどこに楽園があるのかが、分からないとなると……)

急にまたアシュアは不安になりだした。雲がもうすぐそこまでやってきているということは、もう後にはひけないということだ。本当に楽園は南の地にあるのだろうか。それもよく分からないのに。

知らず知らず溜め息をついていた。

「アシュア? どうした」

クオが気付いて尋ねてくる。彼は妙なところに敏感で、アシュアはそこのところ、正直少し困っている。

「……別に。今更戻れないからな、とにかく先を急ごう」

「そうだな。あの雲、ちとやばい匂いがする。避けられるもんなら避けたいな」

ベインが言った。


イアトンを抜けると、クオは段々と見たことのある風景を眺めることとなった。

以前歩いた道なのだろう。

つまり、剣士の町が近づいてきたということだ。

(……)

正直、彼は少しばかり緊張していた。

何せ長老の反対を無理に押し切って出てきた故郷である。町の人々はどんな顔で迎えてくれるのだろう。

それに、もうひとつ、気にかけていたことがあった。

(……メリア、今どうしてるのかな……)

彼は故郷に想いをはせつつ、どこか不安げに広すぎる空を見上げた。


いつもは幕間は前の話と一緒に出していたんですが今回は少し遅れました、というのも実はストックが切れました(あ)。でもGWがありますから(汗)!まだ大丈夫ですよ!次章、剣士の町編からはどどどっと(?)色々走る予定ですので頑張ります。メリアって誰よ(笑)?

それと更新履歴で分かるのですが現在1話から順を追って加筆修正を始めております。一度投稿したものに手を加えるのも少し抵抗があるのですが、完結してから手を加えるほうが性に合わなくて(汗)・・・。主な変更点は妙な視点変換緩和(出来ていたらいいな)、「誰の動作」か主語を足した点、情景描写を若干(汗)追加、程度ですのでここまで読まれている方は全くストーリー進行に問題ありませんのでご安心ください。

あと、前回告知したキャラ投票ですが、5月2日までやっていますのでよろしくお願いします・・・今のままだと仲良くゴールイン・・とだけ言っておきましょう(笑汗)。

では、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました!まだGWにお会いしましょう(?)。

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