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幕間6

 野宿の場所は件の遺跡。

ソラは食事を取った後爆睡状態で、例の「落ちても死なない」という話を詳しく聞くのは明日以降ということとなった。

ベインは焚き木用の追加の枝を拾いに行った。

アシュアとクオは微妙な空気の中、向かい合って座っている。クオは剣を抜いていた。

「……動くなよ」

とクオ。

「……お前こそしくじったら殺すぞ」

と、アシュア。

彼女にかけられている手錠のほうはどうにか短刀で壊せたのだが、足枷のほうは輪が厚すぎてうまくいかなかったのだ。

ということでクオの剣の魔法で壊すことにした。

刃に熱が集中するかのように光が集い、それを足枷に近づける。

相当な熱量なのか、鉄が溶けていく。

で、数分がかりでどうにか外すことが出来た。

「……ふーーー」

実際かなりひやひやな作業だった。クオは額の汗を拭う。

「……ご苦労さん」

そう言ってアシュアは立ち上がる。

「? どこ行くんだ?」

クオも思わず立ち上がる。今日あんなことがあったばかりなので心配なのだ。

「……着替えるだけだから付いてくるな」

アシュアが呆れ顔で言う。

「あ……そっか……」

で、クオは気まずそうにして座りなおす。

アシュアはあの枷のせいかまだ元の服に着替えていなかったのだ。それに、今の服は

「……血の匂いが鼻につく」

のだそうだ。


 クオがひとりぼんやり焚き木を眺めていると、アッシュと戯れていたはずのサリエルが突然現れ、焚き木をはさんで向かい側に座った。

彼女は明日の朝、アッシュに乗ってセレンディアに帰ることになっている。

「今日は大変だったね、クオ君」

「え……ああ、まあ……でもそれは皆おんなじだし……」

とクオは苦笑するが

「えっへへー? そうかなあ……クオ君が一番つらそうに見えたよ?」

と、サリエルは言った。

「……え? なんで……?」

クオは問い返すしかなかった。

「なんでって……そう見えただけだけど。でも……アシュアが無事で良かったね」

と、サリエルは笑って言った。

(……あ……)

それでクオはやっと、笑うことが出来た。

「……ああ。良かった……。ほんとに」


契約する前は、契約するまでにこの命が尽きてしまうことが一番恐ろしかった。

けど今は…………


「サリエル、明日は空の旅だろ。もう寝たほうが良いんじゃないか?」

と、突然上からアシュアの声がした。

見るとすっかりいつもの格好のアシュアが立っている。

「あ、アシュア! えーまだ早いわよぅ。せっかくなんだからもうちょっとお話ししましょうよ! 積もる話もあるんだから〜」

と、サリエルは駄々をこねる。

アシュアは仕方ないなあとばかりにやれやれと腰を下ろす。それを見てサリエルは嬉々として喋りだす。

「ねえねえ知ってた? アシュアがセレンディアを突然出て行った後、キルトと番長、しばらく家から出てこなかったのよー」

ぶはっ。

と同時に同じリアクションをするアシュアとクオ。

「……ってなんでお前までそこで吹くんだ、クオ」

と、アシュアがクオを睨む。

「……え、いやなんとなく……てか番長って誰?」

「えー、ほんとは男子禁制のお話なんだけどなあ〜。まあいっかークオ君女装可愛かったしー、気になるだろうから許しちゃおう」

とサリエルは意味深に笑ってそう言った。

「な! それとこれとは関係ないだろ! い、いいし別に! ベイン遅いな! 捜してくる!!」

クオは怒っているのか恥ずかしがっているのか、勢いよく立ち上がってそそくさと走っていった。

その背中を見てサリエルは笑う。

「……あの子ほんとに可愛いよねー」

「……可愛いって……そうか?」

 アシュアはサリエルの言う『可愛い』が理解できなかった。

「そうだよー。じゃあアシュアはどう思ってるの?」

「あいつのこと?」

「そうそう」

「……やっぱ剣士……っていうか犬っていうか……」

サリエルは破顔する。

「えー!? 昼間も言ってたけどなんで犬なのー?」

「……なんでって言われてもなあ……。飯を食べさせればそれなりに働くし、それなりに忠誠心もあるようだし……だな……」

とアシュアが言っているのを見て、今度はサリエルはくすくす笑い出して止まらないようだった。

「……なんだ?」

アシュアが怪訝な顔で尋ねる。

「い、いや……ちょ、アシュア……それってさ、もしかして、『可愛い』って思ってるんじゃ……ない、の……!?」

と、息も絶え絶えにサリエルは言う。

(…………え?)

「……そう、なのか?」

 アシュアは少し戸惑った。サリエルはそんな彼女の様子を見てさらに可笑しくなってしまった。

「そうだよー、あはははは」

「そ、そんなに笑うわなくてもいいだろ! ……たっくサリエルは昔っからそれだ……」

 アシュアはふてくされる。

どうにもこうにも昔から、サリエルにはこういうところがあった。

 何か、どうでもいいところで、彼女は一歩先に進んでいるのである。

「ふふ、アシュアも変わらないなあ・・・。良かった、ちゃんとこんな風に話せて。捕まっちゃったかもって思ったとき、もう会えないかもって、ほんと心配だったんだから」

サリエルはやっと笑いを止めて真面目に話す。

「…それは、心配をかけたな……」

 アシュアも少し、反省したように呟いた。

「ううん。その言葉、クオ君にかけてあげて。あの子、本当に心配そうにしてたんだから」

と、サリエルは言った。

「…………そうか」

アシュアはそう言って、空を見上げた。


セレンディアでの戦いのとき、

『なら今度から石を使うときは俺と一緒だな!』

と言ったときの彼の顔とか、

一言礼を言っただけなのに、はしゃぎだした様子とか。


思い出すとアシュアは自然と笑っていた。

「……アシュア? どうしたの?」

今度はサリエルが不思議そうに尋ねてくる。

「……いいや、別に……」

そう口では返したが

(……まあ、確かに『可愛い』って言えば、そうなのかな……)

と、彼女はひっそりと思った。


週1更新のつもりが少し遅れましたすみません(汗)。次の章まで持ち越されるこの悪魔のお話は少しグロテスクな表現が含まれます。苦手な人はごめんなさい(汗)。・・・・ここ最近謝ってばっかりですね(汗)。

でも今こう、燃えてきているので(←遅いわ!)まだ頑張れそうです。この調子で最終回まで走っていけたらと思います。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

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