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おにぎり屋ふくふく

おにぎり屋ふくふく|はじめてのおつかい

作者: 絵宮 芳緒
掲載日:2026/05/06

朝のふくふく。


「いらっしゃいませ」


ふくさんの声に、小さな女の子が顔を出しました。


きょろきょろと店の中を見ています。


クロが、そっと近づきました。


「にゃ」


女の子は、びっくりして一歩下がります。


「……ねこ」


でも、逃げませんでした。


「どうしたの?」


ふくさんがやさしく聞きます。

女の子は、ぎゅっと手を握って言いました。


「おにぎり……ください」


「はいよ。どれにする?」


「えっと……」


女の子は、並んだおにぎりを見て――


止まってしまいます。


ミケが小さく言いました。


「迷ってるね」


まぐろはくすっと笑います。


「初めてかな」


トラは応援モード。


「がんばれ!」


シロは静かに見守ります。


クロは、女の子のそばに座りました。


「にゃ」


女の子は、クロを見て、少しだけ深呼吸。


「……おばあちゃんに、あげるの。元気ないから……」


ふくさんは、やさしくうなずきました。


「そうかい。それは大事だねぇ」


クロは、ひとつのおにぎりの前に座ります。


梅ぼしのおにぎり。


女の子は、それを見て言いました。


「これ……すっぱいやつ?」


シロが、くすっと笑います。


「でも、元気が出るの」


ふくさんは、そっと包みました。


「はい。やさしい元気、入れておいたよ」


女の子は、大事そうに受け取ります。


「ありがとう」


店を出るとき、クロもついていきました。


トコトコ。


女の子は、何度も振り返ります。


「来てくれるの?」


クロは、「にゃ」と答えました。


家に着くと、女の子はそっと扉を開けます。


「おばあちゃん」


中から、弱い声。


「どうしたの……?」


女の子は、差し出しました。


「おにぎり、買ってきたの」


「元気になるやつ」


おばあちゃんは、少し驚いて、でもやさしく笑います。


「ありがとうねぇ」


ひとくち、ぱくり。


「……あったかい」


その声に、女の子の顔がぱっと明るくなりました。


クロは、そっと外から見ています。


しっぽを、ふわり。


帰り道、女の子は言いました。


「ねこさん、ありがとう」


クロは、少しだけ前を歩いて――


「にゃ」


その日もまた、ふくふくのおにぎりは、誰かの大事な気持ちを、ちゃんと届けていました

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