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【完結済み】クローシュ - 殺人シェフの成り代わり大作戦 -(全15話)   作者: 誰時 じゃむ


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9/15

9 告白


挿絵(By みてみん)



 従業員宿舎、リビング。


 1階建ての平屋に、一同は避難していた。

 それぞれがバラバラに座りながらも、皆が皆、水滴が伝う窓からペンションの様子を眺めていた。


 棚には詩集が並んでおり、そのすぐそばには1号室の女性の荷物が置いてあった。結局、あの火事から持ち出せたのは、これくらいだった。


 あかりはスズメと並んで、窓際の足立の近くに座っていた。

 他にも、傍には真美がいた。1号室の女性は、みんなよりは少し離れたところの荷物の近くに座っていた。


「山に燃え広がらなくて良かったですね。……良くはないか。ごめんなさい」


 あかりは和ませようとなんとか言葉を紡いでみた。が、しかし、返って空回ってしまう。


 すると、廊下から戻ってきた石丸が、


「消防車は、30分はかかるそうで」


 と、全体に共有した。


「……消防。きっと、警察も来ますよね」


 そんな足立の言葉に、石丸は「ああ、たぶん」と答えながら再びどこかへ電話をかけ始めた。


 残された足立の沈んだ様子に気がつくと、あかりは、


「足立さん、落ち込まないでください。あれは仕方なかったです。もし行ってたら、足立さんまで……」


 と、その心情を察してか、フォローを入れる。


 しかし、足立は一向に暗い顔のままで、ぐっと手を握りそれから目を瞑ると、覚悟を決めたように息を吸い込んだ。

「足立さん?」


「……仕方なく、なかった」


「え?」   


「飛び込むべきだった。助からなかったとしても。私が生きてるくらいなら……」


「足立さん、部屋で休んだ方が……」


 足立の自分を責めすぎているような(・・・)言葉の羅列に、あかりは違和感を覚える。


「あの……」


 しかし、あかりがさらに足立に話しかけようとした時、


「……ったく、出やしねえ。なあ、昨日から島に連絡つかないんだけど、足立さんからもかけてやって……」  


 と、電話を切って島が会話に戻ってくる。


 それが、最後の一押しだった。


「……島さんは、もう死んでます。私が、殺したんです」


 島の言葉は、知らずの内に足立のカミングアウトの場を整えてしまった。


「足立さん……?」


 あかりの言葉をきっかけに、全員の視線が足立に集まる。そうなってしまえば、足立は止まらなかった。


「昨日の朝、みなさんと出会う前、殺してしまったんです。島さんと揉めて。その最中に、怒りに任せて強くドアを閉めたら、それが私を追いかけてきていた島さんとぶつかって。……ドアを開けると、島さんは私に向かってうつ伏せで倒れていました」


「……嘘。足立さん、気が動転して」


 あかりの怯え混じりの否定を、さらに真美が、


「……本当よ」


 と、否定する。


「え?」


「私、脅されてたもの」


 真美がそう答えると、あかりは足立と目が合う。と、足立は、


「警察が来れば、全て分かります」


 と、頷いた。


「本当に、言ってるんですか?」


 あかりは立ち上がって、足立から少し離れる。その態度を、足立は責めなかった。


「ええ。元々、皆さんがこのペンションからいなくなる、3日後に自首するつもりでした」


 足立の告白に、スズメが、


「それが本当だとして、どうして今?」


 と、聞いた。


「……昨日は、本当に幸せな時間でした。みんなが、私の料理を口にしてくれて、美味しいと言ってくれて。憧れのフレンチシェフの夢を、見ていられた。――――と、同時に罪悪感が胸に募るようになったんです」


 足立は赤裸々に吐露する。それが、皆を騙してきた足立に出来る唯一のことだった。


「これ以上、皆さんに不誠実でいたくなかった。私の料理を、美味しいと言ってくれた人たちに。……警察が来て、後で全て明らかになる。そんなの、嫌だったんです。嫌だと思うようになっていったんです」


「でも、美味しいと言われただけで?」


 スズメの疑問に、足立は首を横に振る。


「私にとっては、すごく大きなことだったんです。だって、初めてだったんです。お客様に、自分の料理を美味しいと言ってもらったのは。それも、夢だったフレンチで。言葉にできないほど嬉しかった。自分に、自分の料理に、初めて価値がついた気がした」

 

そう語る姿を見ると、真美は足立から顔を逸らす。昨日の足立の嬉しそうな顔が、真美の頭に過ったからだった。


「終わりなんて、本当は来てほしくなかった」


 すると、足立はおもむろに立ち上がって、全員に向かって頭を下げた。


「申し訳ありませんでした。みなさんを、騙していて」


 それから、足立はペンションを見ると、


「レストランのバックヤード。そのロッカーに、島さんはいます」


 と、言った。


 あかりは何も言えずに、座り込む。すると、しんとした部屋に、石丸の半笑いが響く。


「マジか……。マジで死んだのか……。島……」


 石丸は髪を掻き上げて、頭を押さえた。


 そんな火事でペンションが燃えた時よりも、さらに重苦しくなった空気の中、足立は真美に、


「西尾さん、何か縛れるものを持ってきていただけますか?」


 と、お願いする。


「え?」


 初めはそれがどういうことか分からなかったが、


「警察が来るまで、私を縛ってどこかに閉じ込めておいてください」


 という足立の言葉を聞くと、


「……ええ。そうね」


 と、足立の想いに気がつき、真美は頷いた。



   ▼ ▼ ▼ ▼



 従業員宿舎、リビング。

 足立の殺人の告白からしばらく時間が経って、足立は真美にガムテープで腕を縛られていた。


 部屋には、ガムテープの音が響く。

 そして、縛り終えると、真美は足立を別室に閉じ込めるために、足立を連れてリビングを出ようとした。――――その時だった。


 真美が、ドアを開ける。と、足立が内開きのドアの関係で数歩後ろに下がった。


 すると、その様子を見ていたあかりがポツリと呟いた。


「……待ってください」


 隣にいたスズメが、


「あかりちゃん?」


 と、異変に気がついて名前を呼ぶ。しかし、あかりはそれを気にせず、


「足立さん、島さんが亡くなった時、どんな状況だったって言ってましたか?」


 と、足立に聞いた。


「え……。いや、だから、ドアを閉める勢いで……」


「その後です」


「ドアを閉めて、もう1度開けたら、島さんが倒れてたんだよ」


「姿勢は?」


「うつ伏せで」


「……なら、足立さんは犯人じゃないかもしれないです」


「え……?」


 その言葉に、リビングには別の緊張感が走った。


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