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白薔薇の檻  作者: 雨宮 巴
学園編
17/29

氷と炎の調査

学院長室での命令から三日後。

リヴィアとミアは、事件当日に装置の周囲を出入りした人物を洗い出すため、学院の各施設を回っていた。

表向きは「共同調査」として行動を共にしているが、その歩調は決して揃っていない。

廊下ではミアが先を行き、リヴィアは少し距離を置いて後ろを歩く。

見た目は仲の良い姉妹に見えるかもしれないが、実際には互いの視線が常に探り合っていた。


「お姉様、そんなに後ろを歩かれると、案内しているみたいで困りますわ」

「わたくしはただ、足元を確かめながら歩いているだけですの」

言葉こそ柔らかいが、その裏には「あなたの背中も観察している」という意味が透けていた。


最初の調査場所は、舞台裏に繋がる備品庫。

ほこりをかぶった棚や木箱の間を歩きながら、リヴィアは天井付近に刻まれた微かな魔法痕を見つけた。

「……誰かがここで遮音結界を使っていますわね。普通の会話が外に漏れないように」

ミアは眉をひそめる。

「つまり、この場所で誰かが密談を?」

「ええ、しかも装置の細工が行われた時間帯に、ですわ」


次の調査場所は、温室裏の資材小屋。

ここはミアが案内役を務め、使用頻度や管理記録を手際よく調べ上げた。

その姿に、リヴィアは内心でわずかに驚く。

(……ただの華やかな令嬢ではありませんわね。根回しの速度が尋常ではない)


日が暮れ始め、二人は学院の塔の上階にある観測室へ向かった。

そこで見つけたのは、事件当日に書きかけのまま放置された地図と、魔力の流れを記録する水晶だった。

ミアが地図を覗き込み、息を呑む。

「……この経路、第三勢力の動線と一致していますわ」

リヴィアも頷くが、同時に気づいた。

「経路の途中に……あなたの名前が記されている場所がありますわね」


一瞬、観測室の空気が張り詰める。

ミアは視線を逸らさず、静かに言った。

「……それは、わたくしを誘い出すための偽装でしょう」

「ええ、そうであってほしいですわね」

二人の間を冷たい風が通り抜けた。


観測室を後にするとき、ミアがふと歩調を緩めた。

「お姉様……あなたは、あの事件の本当の狙いをどう考えていらして?」

リヴィアは月明かりに照らされながら答えた。

「わたくしたちを潰すことが目的ではなく、代わりに“ある人物”を副会長に据えるため……そう睨んでいます」

「……同感ですわ」

その一瞬、二人の足並みが揃った。


しかし、学院の中庭を抜けたところで、遠くから甲高い悲鳴が響いた。

「――また装置が暴走してる!」

二人は同時に顔を上げた。

そこに見えたのは、創立祭で使われたものと同型の魔力増幅装置が、赤黒い光を放ちながら唸りを上げる光景だった。


次の瞬間、氷と炎は同じ方向へ駆け出していた。

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