真相を追う氷と炎
創立祭から二日後。
学院の雰囲気はまだ落ち着きを取り戻していなかった。
生徒たちの話題は、もっぱら舞台上で起きた爆発と、その背後にある「第三勢力」の存在だった。
だが、肝心の犯人は特定されず、学院長も公式な発表を避けていた。
リヴィアは図書館の奥で、事件当日の防犯魔法の記録水晶を手にしていた。
これはレオンが裏ルートで入手したものだ。
「舞台裏の魔力増幅装置に細工が施されたのは、開始の十五分前。……この影は」
水晶の中で揺れる映像には、フードを深くかぶった人物が手早く装置に触れる姿が映っている。
顔は見えないが、身長と立ち姿の特徴から、奨学生派の一部で噂されていた上級生と一致していた。
「このままでは、妹に利用されますわね」
リヴィアは映像を慎重に隠し、別の証拠と組み合わせるために動き始めた。
一方、ミアもまた、温室の奥で密会していた。
相手は学院内の情報屋として知られる女生徒だ。
「装置に触れた人物が誰なのか、必ず突き止めてちょうだい。報酬は倍払いますわ」
女生徒はにやりと笑い、薄い羊皮紙を差し出す。
「その件、面白い情報がありますよ。――あの日、舞台裏であなたの姉様とレオンが立ち話していたそうです」
ミアの瞳が細くなる。
「……つまり、姉様が自分に都合のいい証拠を先に押さえている可能性がある、ということね」
両陣営は同時に別方向から真相へ迫りつつあった。
リヴィアは防犯記録の影の人物を追い、ミアは姉が掴んだ情報網を逆手に取る計画を練る。
その過程で、互いの動きが交差する瞬間もあった。
廊下の曲がり角で、偶然を装ってすれ違う二人。
「事件の犯人がわかりましたら、ぜひ教えてくださいませ、お姉様」
「もちろん。……あなたより先に掴めたらの話ですけれど」
短い会話の中にも、火花が散る。
夜、リヴィアは自室で地図を広げ、関係者の動線を記していった。
一方、ミアは取り巻きに新たな指示を出し、情報網を学院全体へと広げていく。
まるで氷が静かに地を這い、炎が空へ燃え広がるように――二つの勢力は、真実という一点を目指して広がっていった。
だが、この情報戦の結末は、どちらか一方が真実を手にするだけでは終わらない。
なぜなら、第三勢力は二人の動きを読んだ上で、さらに大きな仕掛けを用意していたからだ。




