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三日目

昨日泣いたせいで目元が少し腫れている。少し憂鬱な気持ちになったが、顔を洗えばそんな気持ちも何処かに消えてしまった。今日から、三日は禁止令が出ないらしい。その代わり、三日後からの一週間は禁止令が発動される。

(買い物行かなくちゃ。でも、今日は遊ぶか。)


リビングにはもう私しか居なくて、テーブルも寂しい。って言っているような気がした。

「行ってきます。」

ご飯を食べ終えた私は、着替えてトートバッグを持つと、遊園地に向かった。今日も雨が降るらしい。勿論理由は、一週間の禁止令の前に出かける雨女雨男が大勢移動するからだ。

家を朝早く出たからか、久しぶりに空が晴れていた。日や人によって違うが、一人の雨女が外に出ただけで天気はあまり変わらない。だから、一昨日に雨が降っていたのも私のせいだと思っていたが、違うのではないか。

(今思っても真相は分かんないか。雨の中に真実はある!って言ったりして。)

一人で笑ってみたが、気持ち悪いのでやめた。


「あ、雨だ。」

さっきまで晴れていたはずの空も、路地裏を抜けて少し経てば雨が降ってきた。

駅に着き傘を閉じる。改札を通れば、天然水を自販機で買った。

「あ、炭酸水買えばよかった。」

ペットボトルを開けた時のプシュッとなるあの音が、雨の日には無性に聞きたくなっていた事を思い出して自動販売機をもう一度見た。

(水が無くなったら買えばいいか。)

飲みきれないと、炭酸が抜けて勿体ないので買わないことにした。

ーーー

「次は~○○駅~○○駅~お忘れ物に…」

(次で終点か。)

電車に乗れば終点の駅に着くのはあっという間で、窓からは遊園地が見えた。


「やっば、晴れたんだけど!?」

ホームに降りれば、雨雲一つない晴天で、急いで遊園地に向かった。

チケットを買って腕に巻き付けると早速、屋外のアトラクションに乗りに行った。

看板には十分待ちと書いてあって、思ったよりも早く観覧車に乗れそうだった。観覧車は別に雨の時でも乗れるけど、やっぱり晴れている時の景色も見て見たいので、晴れている内に乗ることにした。


「一名様ですね。いってらっしゃーい!!」

こうやって遊園地に来るのも何年ぶりだろう。某夢の国に行ったっきり遊園地やテーマ―パークという場所にはいっていない。だから、窓の外に見える景色が新鮮だ。

「今日は、いっぱい好きなことしよう。ポップコーン食べて、アトラクション思いっきり乗って、お土産を自分に買って、ミニゲームもしよう!」


色とりどりのアトラクションが並ぶ景色は私の心を踊らせた。



「チュロスです。お熱いので気を付けてお食べください。」

現在の時刻は、12:36。雨雲が出て来て空が灰色に染まっている。笑顔の定員さんから渡された出来立てのチュロスを食べ歩いていると、雨が降ってきた。

「傘、開かないと。――ん?何だろう。人が集まってる。」

小雨だからと、傘を差さずに人混みに行ってみれば、円の形に並んだ人の中心に一人の女の子が立っていた。

(あの子、知ってる。テレビによく出てる。晴れ女。)


傘を差さしていない女の子。周りの人は皆傘を差して、女の子を見守っている。中にはテレビカメラを持っているスタッフも居て、何やら中継をしていた。


女の子―晴優(さや)が手を握りしめ、祈りをささげた。

「うそっ――。」「わあああ!晴れたぞ!」

周りから歓声が上がった。祈りから晴れるまでのその時間は数秒。数秒だった――!瞬く間に雲が退いて行き、晴優を中心に太陽の光が出てきたのだ。その光景は神秘的で、まさに小さい頃さんざんテレビ番組で見た。遠い星の「アニメ映画」のようだった。


ーーー

「遠い星では、「天〇の子」と言う晴れ女の話があるそうですね。」

「えぇ、何と言ってもその子は百パーセントの晴れ女だそうです。」

幼い頃テレビでよくやっていた遠い星の話。その時はそんな人も居るんだ。ぐらいにしか思っていなかった。でも、「天〇の子」に出てきた女の子が百パーセントの晴れ女でも、この世界の晴れ女、男は全員百パーセント晴れにさせる力を持っている。だから、そんな女の子が例えば実在したとして、あんまりパッとした能力は持っていないんだろうな。そう思っていた。なのにこの世界に居る「晴優」は正真正銘の晴れ女。大勢の雨女雨男が移動しても一日、二日、晴れたままにさせられる凄い力を持っている。禁止令が出ている時にふった自然の雨をやませたりと大活躍だ。


その話を聞いた時は驚いた。本当に正真正銘の晴れ女は居たんだ!と。


でも同時にこうも思った。

「その女の子が居るかぎり、雨女雨男は一生悪役のままだな。」

ーーー

「すばらしい!」

拍手が自然と沸き起こった。


「ありがとう。ありがとう。」

まるでスポットライトのように、太陽の光が手を振る晴優を照らした。


「――っ、雨女は邪魔だよな。」

ボソッと呟いて、私はその場を後にした。

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