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顔だけ王子の奴隷は卒業します!~私も運命の恋人を見つけましたので、お構いなく~  作者: ひよこ1号


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お兄様!お見送りできましてよ!

「ほら、もう良い時間だ。森にも行かなくてはならんのだろう?夜の森は危険だ。急がないと」


たまらず、カインもラウレンツの助勢に回る。

早く引き離さないといつまでも離れそうにない。

それに、これからメグレンが向かうのは帝国の魔女が居る森だ。

儀式のために森に一人で入り、中央にある木の枝をひとつ魔女から分け与えて貰わねばならない。

これは皇子が立太子されるまでは皇帝が、立太子されてからは皇太子が担う役目である。


「それは、いけませんわ。わたくし、メグレン様のご無事をお祈りしておりますから、恙なきようお過ごしくださいませ」


「ああ、分かった。これ以上君に心配をかけるわけにはいかないな。すぐに、戻ってくる」


額の上の方、髪に口づけを落として、メグレンはリリアヴェルに甘く微笑んだ。

卒倒しそうな程真っ赤になったリリアヴェルは、何とか倒れずに踏ん張っている。

これも結婚式に向けた準備なのだ。

今のままではリリアヴェルは婚姻の口づけで卒倒しかねない。


「ひゃ……ひゃい!」


ひっくり返った声でやっと返事を返して、真っ赤な顔のリリアヴェルを残してメグレンは馬車に乗り込んだ。

そして黒塗りに皇室の紋を入れた馬車が遠ざかっていく。

護衛の騎士団も前後を挟んで移動して行った。


見えなくなるまで見送ったリリアヴェルを、流石に泣くのでは?と心配していたが、真っ赤な顔のままのリリアヴェルがドヤっと振り向いた。


「わたくし、きちんとお見送り出来ましてよ!」


「ああ、うん。ちょっと長かったけど、無事見送れて良かったね」


惚気る二人を見ているときは、さっさと終われ!と思いたくなるが、可愛い娘、可愛い妹、可愛いお嬢様なのである。

泣かなくて良かった、幸せそうで良かった、と使用人達でさえも胸を撫で下ろす。


「さあ、外は冷える。家の中に入りなさい」


父の声に母が寄り添い、カインはレミシアとリリアヴェルの背を押して家の中へと付いて行く。

その後ろに家庭教師兼客人であるラウレンツが続いた。

公爵家にしては和やかで温かい家族団らんと晩餐を終えて、リリアヴェルには帝国から運び込んだ書物をラウレンツが貸し出す。


「これにも目を通して頂ければ、より理解が進むと思います」


「まあ、ありがとう存じます。拝読いたしますわ」


素直に受け取り知識を吸収していくリリアヴェルは優秀な生徒で、ラウレンツはその可憐さの下に潜む獰猛なまでの知識欲に舌を巻く。

彼女を知れば、知るだけ、その資質に驚きが隠せない。

何処の国でもこの類稀なる才女を欲しがることは間違いがないのだ。


なるほど、とラウレンツは得心した。

メグレンが何故入れ込むのかもそうだが、何故自分を呼び寄せたのか。

文官としても優秀だが、護衛としてもラウレンツは優秀だった。

騎士というよりは剣士として。

その才能を買われて、次期公爵でなく従属爵位である侯爵を継ぐ事にしたのだ。

領地の運営に忙殺される事もなく、見合うだけの歳費も受けられる。


何が何でも彼女を守りたいという意思がそこにある。

知でも武でも、必要な物を与えて彼女の鎧にしたいのだと。

ただの、愛玩ではない。

自分が護らねば容易く手折られるような花にするつもりもないのだ。


壁際にぎっしりと図書が並べられた談話室で、暖炉を囲んで男性は煙草を楽しみ、女性は紅茶を楽しむ。

暖かい暖炉の火に照らされながら、穏やかにリリアヴェルとレミシアは読書に耽った。



やがて訪れる平和を崩す悲報が届くまで。

のんびり読書タイム。

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