君を独占したい(兄と義姉と皇太子)
リリアヴェルがその縫いぐるみ同伴で学園に通い出してから、瞬く間に令嬢達の間で流行ってしまったのである。
婚約者や、憧れる相手の縫いぐるみを作る事が。
「わたくしも、作りたいのですけれど……」
「わたくしも欲しいですわ!」
恋する乙女達に請われれば是非もないリリアヴェルである。
「皆様のお気持ち、しかと承りましてよ!」
そして急遽発足されたのは、放課後小人形制作教室である。
令嬢達を集めて材料を大量発注する事で価格を抑え、更に貴族価格と平民価格に製作費を分けたので、参加者はさらに増えた。
裁縫の得意な侍女を助手に、まずは型紙作りから始めて、小人形が出来上がった者はその服作りなどを始めたりもして。
苦手だった裁縫を覚える事も出来たと喜ぶ令嬢達も増え、急速に女性中心にその文化が広まったのである。
生地を作る材料になる羊毛や、染める染色剤、綿などの消費が増えて、主な産地を抱える領主は需要に喜んだ。
裁縫の得意な平民の生徒が、貴族令嬢の依頼を受けて制作する、という事も増えたのだが、その過程でリリアヴェルはピンときた。
ピンときてしまったのである。
切っ掛けは、生地屋に制作方法や簡単な型紙を添えて材料を予め切る所までを行い、あとは組み合わせて縫うだけという状態にして一式で売るのはどうかしら?
出来上がった小人形を置いて貰えたら、作成できる平民女性の良い収入になるのでは?
との思いからだった。
これは王都初のお土産にもなる、と直感が閃いたのだ。
だとしたら、人形は宣伝に良いのである。
今、民に、その人気を持たせたいのは、レミシアであった。
リリアヴェルの恋愛感情はメグレンに全振りしているが、違うベクトルでレミシアの事も大事に思っている。
早速、手の空いた平民女子達に召集がかかり、大きな計画が本人の与り知らぬ所で動き出した。
「未来の王妃、レミシアたん人形」が売りに出されて暫くして、その噂は当の本人の耳にも入った。
「どういう!事ですのぉぉ!」
「ま、まあ落ち着いて、レミシア」
執務の勉強をする為に王城へ側近達と詰めている時に、側近達から告げられて人形を見せられ、羞恥のあまり顔を真っ赤にしたレミシアはカインの執務室へと殴り込んだのである。
手には側近から取り上げたレミシアたん人形が握られていた。
握り潰されそうな勢いでぐしゃっとされている。
「君の事を民に受け入れて貰うための、リリアヴェルなりの策なんだよ。ほら、材料が売れるからそれぞれの領地も潤うしね?それに将来王妃となるなら、肖像画を飾る家とかもあるし……」
どうどう、と抑えるようにカインは言うが、頭では利点を理解していても感情は追いつかない。
「んぐぐ……」
確かに返せる言葉もなく、レミシアは奥歯を噛みしめた。
売買が増え、物流も盛んになるというのは経済を活性化させる良い事でもある。
買い手は比較的裕福な人々なのだから。
だとしても、自分一人が可愛い人形にされるのは御免だった。
かと言って馬鹿王子と並べられるのは嫌だ。
「でしたら!わたくしだって考えがありますのよ!リリアヴェルたん人形を作りますわ!」
「それは待ってくれないか」
凛々しい低音が聞こえて、カインの後ろを覗き込めばメグレンが訪問中だったようで、立ち上がっている。
「リリアヴェルたん人形は、俺だけの物にしておきたい」
「真顔で何言ってるんですの、この方」
「それについては同意する」
辛辣に告げたレミシアに、カインも同意して頷いた。
マジで何を言ってるんですかね???ってなるけど、相思相愛なのです。仕方ないのです。




