試合とその後…殺しておけばよかった(レミシア視点)
「始め!」
教師が決闘の内容を確認した後に、合図をする。
倒れて起き上がれないか、降参するまで。
刃を潰した筈の剣ですら、メグレンが持つとすぱっと切れそうな怜悧さがある。
対するヨシュアも、構える姿は恰好良いので、これはいい勝負が出来るのでは?と観衆達もざわめいた。
先に仕掛けたのはヨシュアで、素晴らしい速さでメグレンへと突撃してくる。
メグレンはヨシュアの剣を受け止めようと振り下ろし。
振り下ろしたら、そこにヨシュアが飛び込んできて、あっけなく床に崩れ落ちた。
「えっ?」
メグレンも、会場の全ての人間が同じ反応を返した。
「剣を打ち合わせようと思ったのだが……?」
「ちょうどいいところに何故か加速して飛び込んできたね」
眉間に皺を寄せたカインがうつ伏せで地面に伸びているヨシュアを見る。
拍子抜けも良い所なので、カインがヨシュアの剣を拾い上げた。
そして、その剣をメグレンへと向ける。
「折角だから、久しぶりに、一勝負どうだ?」
「ああ、いいだろう。私も消化不良だ」
「メグレン様、頑張ってくださいませ!」
勿論妹のリリアヴェルは容赦なくメグレンを応援する。
メグレンも、爽やかな笑顔をリリアヴェルに返した。
肩に剣を載せた姿勢で、はぁ、とカインは呆れ乍らそれを見守る。
そして始まった強者同士の戦いに、大いに修練場の観客たちは盛り上がったのである。
メグレンにもカインにも黄色い声援が飛び交い、人知れず王子は医務室へと運ばれて行った。
楽しそうな喧騒を背に聞きながら、レミシアは付き添って医務室へと歩いて行く。
強そうに見せながらも、あまりの弱さを見せつけたヨシュアにため息が押し殺せない。
まだ戦いも佳境なら良かった。
だが、お互いの力量を図るその打ち合いにすらならないのは。
「あの、もしかしてヨシュア殿下は弱いの?」
運んでくれている騎士科の生徒に聞けば、二人の視線が宙を彷徨った。
もうそれで半分以上は答えているようなものだ。
「まぁ、騎士団からは好かれてないですし、修練もあまり受けておられないかと」
「おい、止めておけ。辺境に飛ばされるぞ」
二人の言葉に、レミシアは手を振った。
「いいのよ。殿下に言ったりはしないわ。城でもそうよ。嫌うという程ではないけど、好かれてはいらっしゃらないもの」
医務室で、寝台に横たわったヨシュアを見守る。
医師は簡単な手当てをして、遅い昼食へと出かけて行った。
城ではリリアヴェルが愛されていたのに対して、それを便利に使って邪険にしていた王子の好感度は低い。
執務も事業も、リリアヴェルに丸投げしていたものも多いのだろう。
それなのに自分の手柄にして名声を高めている男なのだ。
少なくとも今回は相手が相手だけに、噂にもなれば人気も更に落ちるだろう。
「うん?……此処は何処だ?」
「医務室ですわ。決闘でお倒れになられたので運びましたの」
頭を振って起き上がる様は、絵になるほど美しいのに、その他諸々は残念だ。
「記憶にないな……」
「開幕早々、気を失われましたから」
本当に一瞬だった。
あり得ない程の早さで負けたのだ。
「負けたのか?」
「はい。一瞬でした」
「そうか……彼女を取り戻せればと思ったが、残念だ」
それが愛という感情からの言葉ではない事は分かりきっていた。
ただ、優秀な道具を失った事への後悔の言葉だ。
「君じゃあ足りないんだが、仕方ない」
ふわりと微笑んだ顔は優しくて美しくて、レミシアはぼんやりと出来ない事を思った。
気絶してる内に頭カチ割っておけば良かったな、と。
くっそムカつく王子ですいません。精神だけはおかしなくらい強いんです。
レミシアももう、殺意を抑えきれなくなってきてる。かわいそう。
でも大丈夫、レミシアたんには天使がついてるからね!?
本当はもっと、ねちねち虐めて欲しかった(カイン談)んだけど、開幕で逝きました。キメ顔で。
ひよこの最近のお気に入りコンビニスイーツはセブンの牛乳寒天です。さっぱりって書いてあるけど本当にさっぱりしてて美味しいです。




