お兄様!新しいメグレン様!ですわ!!
「まさか夜の内に来るとは。人を寄越して終わりでも良かったのに」
「そういう訳にはいくまい。護衛が出来る侍女を2名連れて来た」
馬から降りながら、背後を振り返る。
メグレンに付き合って、騎乗して追いかけて来たらしい侍女達も馬からひらりと降りて並んだ。
「明日より、リリアヴェル様の身辺をお守り致します、アニエスと申します」
背の高い黒髪の女性が淑女の礼を執り、傍らの橙色の髪の少女が合わせて礼を執った。
「エメと申します」
「元々は母の侍女達なので、能力は保証する」
「信用している。リリも待っているから、引き合わせよう」
メグレンとカインが部屋に入ると、そわそわしたようにリリアヴェルが立ち上がり、淑女の礼を執った。
「メグレン様、わざわざお越しくださいまして有難う存じます」
「ああ、ヴェリー。君を護る為なら幾らでも……だが、夜分に押し掛けたのは済まないな」
早速リリアヴェルの手を取って、甲に口づけを落として謝罪すれば、リリアヴェルはぽっと頬を染めて微笑んだ。
「一日に二度もお会いできるなんて、わたくしは幸せでございます!」
「ヴェリー…私も同じ気持ちだよ」
「いや、本題を忘れないでくれ、二人とも」
すっかり二人の世界に引きこもろうとしているので、カインが現実に引き戻す。
明日以降の護衛の為の人員配備である。
「ああ、そうだった。紹介しよう。母から借り受けた護衛侍女だ」
「アニエスでございます」
「エメでございます」
二人の挨拶を受けて、リリアヴェルは微笑みを浮かべた。
「明日からよろしくお願い致しますね。空いた時間に帝国のお話なども聞かせて貰えると嬉しいです」
確認を取るようにアニエスがメグレンに視線を送り、メグレンが頷く。
「必要な事は教えるように」
「畏まりました」
アニエスとエメは恭しく頭を下げ、漸く辿り着いた馬車から二人の荷物も運びこまれた。
従僕に運ばれた荷物を受け取り、執事に案内を受けて二人は与えられた部屋へと移動する。
「護衛騎士に関しては、二人ほど連れてきているが、明日の朝にもまた増員する。本国にも急ぎこちらに向かうよう手配は済ませた」
「分かった。……くれぐれも一人にならないように気を付けるのだぞ?リリ」
「昼には学園に顔を出すからね。一緒に食事をしよう」
「はい、メグレン様」
素直に頷いて、リリアヴェルは嬉しそうににこにことメグレンを見上げている。
勿論眼中に入れないお兄様なのであった。
カインは少しの意地悪心を出して、告げ口をする。
「どうやら今日、ヨシュア王子に触られそうになったらしくてね」
「な、に……?」
怒りと驚愕がないまぜになって瞠目した顔を、リリアヴェルは食い入るように見つめた。
新しいお顔!!!!!!!!
素敵!!!!!!!
「だだっ、大丈夫ですわ、わたくし避けましたから」
「侍女にはよく言い聞かせておく。君を護る為に前に立つこともあろうが、許して欲しい」
「勿論、委細お任せ致します」
メグレンは耐えきれずに、リリアヴェルをぎゅっと抱きしめた。
「君を他の男に触られたくないな」
「あ、あわわ……」
大きな身体に力強く抱きすくめられて、リリアヴェルは一瞬で茹で蛸に仕上がった。
赤く染まるなら蟹でもいい。
しかも、低音で甘く囁かれて、瀕死である。
わたくし、今この瞬間、死んでもかまいませんわ……。
ぐんにゃりと蕩けてメグレンに身体を預けるリリアヴェルを見て、流石にカインが止めに入った。
「妹にはまだ刺激が強すぎる。それ以上抱きしめていたら死ぬ」
「……ああ、済まない。つい……」
手を離したら転げそうで、メグレンは片手でリリアヴェルの腰を支えて、もう片方の手でピンクゴールドの頭を優しく撫でた。
リリアヴェルは秒で息を吹き返した。
メグレン様の武骨で大きな手!素敵!気持ちいい!!!
死んでいる場合ではありませんわ!!!!!!
うっとりとその手の動きを堪能して、リリアヴェルは幸せに微笑む。
「メグレン様のおてて、優しくて大きくて温かくて、大好きです」
呟かれた言葉に、再び抱きしめそうになるが、カインが肩に置いた手が痛い。
だが、メグレンはカインを見て目で語った。
可愛い過ぎでは?
だろ?
カインも頷いて返す。
リリアヴェルだけは二人のやり取りに気づかないまま、ぴったりとメグレンの胸に頬を寄せたまま目を瞑って幸せを堪能し続けていた。
がっつり護衛します。何人たりとも触れさせないマンなメグレン殿下。イチャイチャ回です。蛸でも蟹でも海老でもいいです。抱きしめる事は普段無いですが、常に見つめ合ってイチャイチャはしてます。カインがその度におーい、戻ってこーいってやってる。
蟹は思い切り食べたことあるけど、海老はないのでいつか……いつか思い切り食べてみたい……!




