三日じゃなくて三分ですよ(兄と王子)
おかしい、とヨシュアは愕然とリリアヴェルを見送った。
今まで笑顔しか向けて来なかったリリアヴェルが、まるで違う表情を見せてくる。
触れようとした時に逃げたし、注意も与えて来た。
正妃にと言えば、尻尾を振って戻ってくると思っていたのに。
「何故だ……!」
しかも、今まで一人でいたはずなのに、大勢の友人達が彼女を取り囲んでいる。
レミシアの華のある美しさは男達を惹きつけていたけれど、リリアヴェルの周囲には令嬢達も沢山いた。
まるで非難するかのような目でヨシュアを見てくる者さえ。
「これでは埒が明かないな……」
原因を探るにしてももう時間がない。
直接聞くならカインだが、正直に答えるだろうか?という疑問はある。
たった三日。
リリアヴェルと連絡が途絶えたのはたった三日なのに、あそこまで変わるものだろうか?
居ても立っても居られず、ヨシュアはカインの元へと行く事にした。
カインは優秀で、既に上級文官やその他の難関試験も突破していて、主に父のハルヴィア公爵を王城でも家でも補佐している。
城へ向かい、私室へ呼びつければ、程なくしてカインが現れた。
「殿下が私に御用とは珍しい」
開口一番に嫌味を言われて、ヨシュアは眉を顰めた。
今までは逆に、リリアヴェルの事で小言を言われるのを避ける為、ヨシュアは会わないようにしてきたのだ。
「其方の妹の事だ。彼女に何があった?」
カインは珍しく、迷うような素振りを見せて、暫くの間沈黙する。
薄暗い影の出来る光彩のある金の髪の、美しい貴公子であるカインは城でも令嬢方にも人気が高い。
未だ婚約者がいないのは、妹が心配だからだという話で。
血筋も高貴だから、他国の姫君達からも注目されている男だ。
「妹は、貴方以外の男に恋をしております。ですから、貴方への興味を失ったのかと」
「たった、三日でか?!」
驚愕するヨシュアを見て、カインは心の中で言う。
三日どころか三分なんだよなぁ……。
だが、ヨシュアの前でカインは皮肉気な笑みを浮かべた。
「殿下は妹に今まで優しく接してこなかったでしょう。あの子は貴方以外の男を知らない世界にいたからこそ、貴方に対して盲目だったのですよ。薬や魔術、洗脳の類を疑っても無駄です」
「絶対にないのだな?」
「私にとっては、二回目です。一度目は殿下に恋した時、それからあの子は貴方にだけ夢中でしたね。その相手がメグレン皇太子に変わっただけで、あの子が変わった訳ではないのですよ」
優しくされて、恋に落ちたのなら。
ヨシュアは考え込んだ。
リリアヴェルが好きだった僕が、優しくすればまた元に戻るだろうと思い至る。
「私達がどれだけ宥め賺しても、あの子は考えを変えなかった。今後もそうだと思います。もう終わった事ですので、殿下も是非、リリアヴェルの婚約をお祝いください」
「だが、リリアヴェルの意思が一番大事だろう?元々は僕の婚約者で、前の様に王妃として迎える予定だ」
今更何を、とカインは鼻で嗤った。
一度反故にされた約束を持ち出されても、信用になど値しない。
「殿下の愛するレミシア嬢を王城に迎えられたのでしょう?でしたら、そちらを何とかした方がいい。リリアヴェルを何かあった時の命綱にするのは止めて頂こう」
「だとしても、決めるのはリリアヴェルだ」
一歩も退かないヨシュアに、薄く冷たい笑顔をカインは浮かべた。
「そうですね、リリアヴェルです。あの子の嫌がる事をなさるなら、王家に抗議をする事はお忘れなきよう。ああ、殿下が無体をなさらない保証もないので、明日からは常時護衛を付ける事に致します」
「好きにするがいい。会話を邪魔しないのであれば構わない」
「では」
慇懃に頭を下げて、カインが退出して行く。
あと一日あれば、十分だ。
ただ、恋に落ちただけならば、目を覚まさせれば良いだけなのである。
無駄無駄無駄ァァ!一応顔合わせてからの時間だけど、目を離した隙にと考えれば三秒でもおかしくないんですよね。即落ち。そしてカインお兄様は、リリアヴェル相手だと優しくて不憫ですが、外では優秀です。気に入って貰えたら嬉しいです。2号の推しキャラでもあります。
当初の予定ではこうなって、ああなって、と色々考えてたのに暴走リリアヴェルが作者のシナリオすら壊してくる……恐ろしい子……(白目)イチャイチャはもう少し待ってくださいませ~!




