君の様子がおかしいのは洗脳か魔術のせいだ(王子視点)
ヨシュアは廊下で待っていた。
この学園は階級によって教室が固定で与えられている訳ではない。
熟練度と成績の階級によって、選べる授業が違うのだ。
選択科目ごとに教室を移動する為、授業には似た面々が顔を合わせる事にはなるが、ごく一握りの優秀な人物達だけが受けられる授業をリリアヴェルは選択している。
成績優秀者ではあるものの、ヨシュアはそこまで専門的な分野は選択していない。
移動するリリアヴェルが廊下に現れると、ヨシュアはキメ顔で待ち構えた。
周囲の男女と何かしらを話し合いながら、笑顔でリリアヴェルが歩いてくる。
だが、話に夢中なのかヨシュアに気づきもしなかった。
「ゴホン」
わざと大きな音で咳をすれば、一団が振り返り、顔を見合わせてからぺこりと会釈をする。
だが、会釈をした後リリアヴェルはそのまま彼らと一緒に歩き去って行った。
?
???
ヨシュアには訳が分からなかった。
今までは呼んでもいないのに傍に寄って来たし、どれだけ遠くに居ようとも目敏くヨシュアを見つけて近づいてきたのだ。
出会ってから十年間、ずっと。
もしや、何か魔術を使われているのでは?
正直、兄のカインならやり兼ねない。
昔からずっとリリアヴェルへの態度に口うるさく口を出してきた男だ。
本来ならば王族に対しての非礼や不敬を問いたいところだが、権力を持つ公爵家の嫡男であり、婚約者の兄である。
正面から戦えば自分が不利になる相手だ。
それに、婚約者予定の皇太子の存在も怪しい。
帝国という国は強大である。
何かしらの薬や魔術といった方法を取らないとは限らない。
仕方ない、正攻法でいくか。
次の休み時間は、リリアヴェルを直接捕獲して話をする事にした。
「リリアヴェル、二人で話をしたいのだが」
彼女の大好きだったキリッとした王子スマイルを浮かべるが、リリアヴェルはきょとんとしながら言った。
「殿下、婚約を解消致しましたので、名前ではなく家門の名で呼んでくださいませ。それに、婚約者以外の男性と二人きりで話は出来ません」
は?
何を言っているんだ、こいつは。
今まで飛び上がって喜んでいた筈なのに、何処かおかしい。
「……それもそうか、ハルヴィア嬢。……だが、僕と二人きりだぞ?」
「元婚約者でも、今は婚約者ではないので、ご配慮願います。正妃になられるレミシア様にもご心労をおかけしたくはございません」
正妃になられるレミシア、とはっきり言った事に対し、周囲が顔を見合わせた。
皆は何となく分かっていたもの、大々的に公示した訳ではないのでやっぱりか、という顔だ。
「それにもし、側妃にというお話であれば、お断り申し上げました筈です。わたくしには、婚約を決めた相手がおります」
「その事なのだが、何か騙されているのではないか?」
はっきりと断られるとは思っていなかったヨシュアは慌てて本人に疑問をぶつけてしまった。
ヨシュアの問いに、リリアヴェルは首を傾げた。
「いいえ?」
「では、カインに洗脳されたのか?」
「いいえ、どちらかといえば、お兄様は呆れていらっしゃいました」
ヨシュアの理解は追いつかなかった。
不毛な会話にリリアヴェルも不思議そうにヨシュアを見つめる。
「あの、次の授業の時間もございますので、失礼いたします」
予鈴が鳴った事で、そそくさとリリアヴェルは淑女の礼を執って、一緒にいた集団と足早に立ち去っていく。
そんな訳があるか、とヨシュアはその背中を見送った。
十年もの間、ずっと好きだと追いかけて来た少女の突然の豹変に違和感しか感じない。
「……絶対、何かある筈だ」
それを突き止めねばならない、とヨシュアは決意を固めた。
しょうがないよ!10年も愛されてると思ってたんだから!!と2号がヨシュアを庇います。
そうなんですよ。仕方ないんですが、リリアヴェルの愛が冷めた?のも仕方ない事なんです。愛というかまあ、顔が好きだっただけなので(ここはヒドインと言われても仕方ない)
キメ顔が効かなくてうろたえるヨシュア王子。折角キメッ!てしたのに…。




