君の心を取り戻すのは簡単だ(王子視点)
父王と王妃に呼び出されて、ヨシュアは国王の執務室に来ていた。
「お前が選んだレミシア・ファリン子爵令嬢を調査したが、正妃とするには器が足りぬ」
「はい。重々承知しておりますので、側妃にリリアヴェルを迎えるつもりだったのですが、レミシア本人が努力すると申しておりますので、まずは教育を受けさせようかと」
ふう、と盛大な溜息を吐いて、国王は傍らに座る王妃と目を見交わした。
そして、厳しい顔で告げる。
「その側妃の話だが、お前はリリアヴェル嬢と約束をきちんと交わしたのか?」
「書面では交わしておりませんが、特に問題はないかと」
今までリリアヴェルはヨシュアの頼みを断った事は無い。
多少焦らされているが、カインの邪魔がなければ頷いた筈だ。
新しい男が出来たなど嘘に決まっているし、レミシアが頑張ると決めたところで予備は必要である。
高価な贈物をして優しくしてやれば問題ない、とヨシュアは思っていた。
だが、渋面の国王が、ひらり、と一枚の書面を机の上に置く。
「それがそうもいかぬ。アキュラム帝国の皇太子メグレン殿と、リリアヴェル嬢の婚約が結ばれることになる」
「……は?」
寝耳に水だ。
休暇を取って、公爵邸にいたはずなのに。
何かの間違いでは?と聞き返したかったが、書面にはハルヴィア公爵の署名にメグレン皇太子の署名にリリアヴェルの署名と皇帝の名代として、皇后の署名まである。
あとは国王である父が署名をすれば、正式な婚約となるのだ。
「いや、まさか、何故、皇太子が?」
「こちらの大学に短期の留学をしていたのだ。リリアヴェル嬢の兄のカインが二人を引き合わせたようだな。これを差し止めておけるのは精々三日が限度だ。もしもまだ間に合うのならば、リリアヴェル嬢を翻意させよ」
「それは問題ありませんが、公爵殿もカインも側妃の件は納得するでしょうか」
どう考えても、王国の側妃よりも帝国の正妃の座の方が重い。
あの二人なら大反対するだろう。
「そもそも子爵令嬢如きが正妃の座を望むのが烏滸がましい。優秀ならまだしも、学園の成績ですらそこまで振るわないではないか。目覚ましく育てば考えてやらぬことも無いが、まずはリリアヴェル嬢を正妃として迎える事にして手元に戻すのだ」
「は」
それならば問題ない。
公爵家も抑えられるだろうし、本人が望むのならとあの二人も折れるだろう。
王族の中だけの決定なら、レミシアに一々言う事もないし、まずは執務と作法を学ばせてから、成長次第でまた地位を挿げ替えれば良いのだ。
ヨシュアは廊下を歩きながら、昨日の事を思い出していた。
あれだけのゴミを大事に思い出の品と取っておいていたのに、置いて行った事。
贈物も全て、持ち帰らなかった事。
それらは全て公爵と兄のカインの差し金に違いない。
宿下がりで公爵邸に戻ったリリアヴェルに、内緒で処分を決めたのだろう。
数日間で戻るつもりでいたから、リリアヴェルは何一つ持って行かなかっただけだ。
そう考えたら、アレを処分したのは不味かったか?
ふと足を止めて考えたが、どう見てもゴミだった。
あんな物に拘らなくて良い位に、素晴らしい贈り物をすれば問題は無い。
まだイケると思っているキメ顔王子です。
もう全部まるっと持って行かれてるので無理ですが…!!
スイーツ情報ありがとうございます。その内全部頂いた情報まとめないとな!
ちなみにコロナ前はホテルのアフタヌーンティー食べに行ったりしてました。
割とボリューミーだし、異世界ファンタジー好きなら一度は食べてみて欲しいですね。
お高いけど楽しいですよ!




