思い出という名のゴミ(王子と使用人達)
その日、王城に与えられたリリアヴェルの為の部屋にヨシュアが訪れていた。
部屋付きの侍女達の立会いの下で、彼女の部屋を片付ける事になったのである。
既に午前中には公爵家の者の手が入り、必要な私物は引き揚げたという。
だが、部屋の一角に何だか訳の分からない物を見つけてヨシュアは眉を顰めた。
「何だこのゴミは」
「……それはリリアヴェル様が仰るには、「殿下との思い出の品」だそうです」
ヨシュアだけではなく、誰がどう見ても立派なゴミの山である。
「この気味の悪い物は」
「確か、8歳の夏に殿下に投げつけられた蝉の抜け殻と伺っております」
優秀な侍女がヨシュアの質問に答える。
次にヨシュアが摘まみ上げたのは、何の変哲もない小枝だ。
「そちらは確か、殿下が剣に見立てて振り回されていた小枝にございます」
思い出という付加価値が無ければ、本物のゴミでしかない。
他にも良く分からない様々な物があるが、そこにあるのは美しい物や高価な物ではなかった。
馬鹿な女だ、と思いながらも何故か胸の何処かが痛むような気がして、ヨシュアは眉を顰める。
「ですが、もう処分なさって良いと伺っておりますので、撤去いたします」
「……そうか」
他にも、今までヨシュアが贈ったドレスや靴や宝飾品も残されていた。
何時、贈ったのかも、理由も思い出せないが、古い物まで綺麗なまま残されている。
「殿下の色の宝飾品は、次の婚約者の方にとの事です」
「……普通は持ち帰る物ではないのか?」
そう疑問をぶつけられるが、流石に侍女はその質問には答えられない。
普通がどうなのかも分からないが、可愛い公女様が邪険に扱われていた事は知っている。
目の前の王子は、小さい頃は可愛い悪戯をしていただけだったが、大きくなってからは公女を疎ましがっていたし、仕事に私用にと純真な彼女を便利に使っていた。
それでも文句を言う事も無く、リリアヴェルは努力と執務を放棄しなかったのである。
学園に入って、ヨシュアが恋人を作り出した頃には、人知れず泣いていた事だってあった。
城からリリアヴェル一人が消えただけなのに、どうしようもなく使用人達の心は沈んでいる。
彼女がこの牢獄のような場所から抜け出せたのは良かった、と思いながらも。
だからこそ、そんな物誰が持って行くか、とその場にいる女性達は思っていた。
確かに貧乏であれば金に換える事もあるかもしれないが、王家からの贈り物を処分したとあっては何を言われるか分からない。
身に着けられず、売れもしない品はただ綺麗なだけのゴミである。
持って帰っても、箪笥の肥やしになるだけだ。
「……尊き方々の普通、は分かりかねます」
侍女は無難な答えを口にして、静かに見つめていた。
「頑張ればきっと、殿下も見直して下さるから!」
必死に勉強も難題にも取り組んでいた健気な少女を、部屋の何処を見ても思い出せる気がする。
彼女と知り合った者たちは願っていた。
リリアヴェルの心の平安と幸福を。
※人知れず泣いていたというのは誤解です。泣いてません。俯いて笑ってたとか何かそんな感じです(怖いよ…)
ぬいやグッズのコメ鋭いですね!ぬいは確実に出来ますよ(書いてます)




