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どうしましょうお兄様!側妃になれと言われましたわ!

「うぇええぇぇん、お兄様ぁぁああぁ、どう致しましょうぅうぅ!」


泣き叫ぶリリアヴェルの声が部屋に響いていた。

兄、と呼ばれた金髪を後ろに一つで束ねたカインという名の青年は、子供のような妹の泣きっぷりに呆れたようにため息を吐く。

ここは王城にある一室で、王太子の婚約者であるリリアヴェルの私室である。

優秀なリリアヴェルは、己と周囲に規則ルールを課していた。

それが「お部屋ルール」である。

部屋から一歩出れば、淑女の鑑として完璧に過ごす代わりに、部屋の中では自由に振る舞って良いと、婚約者として召された七歳から、城の使用人達を巻き込んで浸透させてきたのだ。

リリアヴェルは無駄に優秀だった。

なのに。


「ああもう、泣き止みなさい。今度は何かあったのか、話してご覧」


「ヨシュア様がぁぁ!わたくしを側妃にするというのですぅぅ!あんまりですううぅう」


理由をわめきながら再びふええええんと泣き出す妹に、カインははぁ、とため息を漏らす。

ヨシュアは眉目秀麗で、優し気な容姿の王子で、仕事ぶりもそれなりに優秀である。

そんな彼が学園で見初めたのが、子爵令嬢のレミシアだった。

情熱的な赤い髪に、海のような真っ青の瞳が色気と可愛らしさの同居する娘で、その容姿と強気な言動であっという間に王太子の心を蕩かしたという。

かたやリリアヴェルは、ピンクゴールドのふわふわの髪に、夢見るような淡い黄金の瞳の公爵令嬢で。

兄からみても大変愛らしい少女なのだが、王子を好きすぎてか王子妃教育の賜物か、従順過ぎて王子には多分物足りなかったのだろう。


「……それで、側妃になる心算かい?」


カインとしては承服しかねる話だ。

父の公爵に話しても母の公爵夫人に話しても、烈火のごとくお怒りになるのは目に見えていて。

それでも、家族はリリアヴェルの意思を尊重する。


「……だって、仕方ないではありませんの……あのお顔を見られるのならば……側妃になるしか……」


顔かぁ。


カインは笑顔のまま固まった。

確かに?

他に良い所を挙げろと言われても、カインには思いつかない。

こんな風に子供の様に泣きじゃくってはいるが、リリアヴェルは能力だけで言えば相当な才媛なのである。


「ふむ。リリは他に彼の何処が好きなんだい?」


「初めて会った時に!とても可愛らしくお美しい笑顔を見せて下さったのです!わたくしの初恋です」


ぽっと頬を染めて、リリアヴェルは両手を頬に添えて身をくねらせた。

カインは、うん、と一つ頷いて、次を促す。


「それから、少し悲しそうなお顔も、悩ましくて素敵ですし」


更にカインは、うん、と頷く。


「怒っているお顔も、目が吊り上がる分きりりとして恰好良いですし」


うん。


「いう事を聞かせようと嘘をついてくる下衆なお顔も、胸が騒ぎます」


結局、顔じゃねーか!


カインは突っ込みたいのを必死で我慢した。

リリアヴェルは男性との触れ合いが極端に少ない。

その上何か一つ夢中な物があれば、それしか見向きをしない習性がある。

ヨシュアの顔がド真ん中(ストライク)なので、余計だ。

かくいうヨシュアもそれが分かっているから、我儘を通そうとしたのだろう。


よし、ならば、戦争だ。


カインはギラリと闘志の炎を目に宿した。


顔面偏差値の高い男には、顔面偏差値の高い男をぶつけるべし。


「いいか、リリアヴェル。お兄様が何とかしてあげるから、一週間休みを貰って公爵家に戻りなさい」

「え、でもそうしたら、ヨシュア様のお顔が見られな」

「いいから、兎に角一週間は我慢しなさい」


不承不承ではあるが、リリアヴェルは頷いた。


「執務を三日で終わらせましたら、その後に一週間の休暇を頂きます。……三日で一週間保つくらいにヨシュア様の御尊顔を堪能致しますわ!」


誰だこの馬鹿を才媛と言った奴は。

そう言いたくなるくらいに明後日の方向に力を入れつつ、リリアヴェルが頷く。

何にしてもまずは、あの顔だけ王子から妹を引き離す事からである。

このお話は2号との会話から生まれました。

超絶好みの美形から側妃に望まれるけど、好みじゃないけど美形から正妃に望まれたらどっちを選ぶ?という究極の選択くだらないやつを思いついて話し合った結果。

結構失礼な感じの上から目線で芸能人を引き合いに出して話していたので、王子達の名前はお名前の一部をお借りしております。

※今日は夜も更新です!短編もあります!普通の長編も!(年末年始なので盛ってみました)

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― 新着の感想 ―
メレンゲに呼ばれて参上仕り候 のっけからクライマックス! お兄様の仕込みにwktk
初っ端から読者の心を鷲掴みにするの、上手いなぁ。 面白くなる予感しかしない。 今後の展開を楽しみにしております。
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