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「第9話」お店

 2人の店はオープンから順調だった。味は抜群で安いと評判で、とても店は繁盛した。


 2人の子供にも恵まれ、幸せな日々を送っていた。



 念願のお店が開店して12年目のことだった。優子が突然話す。


優子「あなた。実は。。もうお金がないの。」


大輔「えっ?店は開店の頃ほどではないけど繁盛しているぞ。東京の修行時代のお金も無くなったのか?」


優子「東京時代のお金のほとんどはオープンで使ったの。お店の賃貸料が大きいから、あまり儲かってはいなかったの。一時は結構溜まったお金ももう無くなりそうなの。私も働きに行きたいけど、子供が小学生だから今は難しいから。」


大輔「つまり、毎月赤字ってことなのか!マズいな。。それなら店を開けてても仕方ないから、臨時休業にして仕事探すよ。」



 大輔は愕然とした。あんなにお客さんがいるのに儲かっていないとは思ってもいなかった。

 子供には辛い思いはさせられない。家族を守るのが最優先で、俺の夢なんて二の次だ。


 大輔は慌てて働く場所を模索する中で、スーパーの寿司屋の募集を見つけた。見に行って話を聞くと、条件も立地も悪くはなかった。

 帰宅し、子供達が寝た後に優子に相談する。


大輔「優子。考えたけどな、2つの可能性がある。一つは料理長に頭下げて働かせてもらう。それなら年収1000万円はいくだろうが東京に越さないといけない。もう一つは、ほら、これだ。スーパーの寿司屋だよ。駅前で住宅街も近く、ビジネス街でもある。なのに賃貸料は今より全然安い。今までが高すぎたんだろうな。利益の20%を取られるが、調理器具も持っていける。これなら生活は出来るかもしれない。赤字を続けている場合ではないから店は今月でたたもう。」


優子「子供達や両親のことを考えると、出来れば東京は避けたいの。申し訳ないけどスーパーの寿司で無理な場合に東京にしてほしい。ねえ。あなた。。結構計算出来るじゃない。そういうの私より優れてるわ。」


大輔「料理長に教わったから多少はな。。そうだな。俺も師匠には成功の報告がしたいからな。スーパーの寿司屋を試すか。ダメなら、すぐに切り替えよう。同じ失敗は繰り返したくないから早めに決断しような。」



 大輔は店をたたみ、スーパーの寿司屋になった。師匠と出会い順調だった仕事の突然の挫折だった。家族を養うためにやむを得ずの決断だった。

 とは言え、幸いなことにスーパーの寿司屋は生活するには何とかなる利益は得られた。



 優子は、次第に輝きを失う大輔の姿に心を傷めた。いつの間にか大輔は、飲めなかったお酒も飲むようになった。

 優子には何故上手くいかなかったのか分からなかった。あんなにお客さんが来たのに何故なのか、理由が分からなかった。

 私は大輔を幸せにすると誓った。なのに。。私、どうしたら。



 そんなある日、大輔が上機嫌で帰ってくる。


優子「どうしたの?なんか、機嫌いいわね。」


大輔「ん?あのな。今日なんだけどな。地元で有名なYouTubeやってる学生が玉子焼き習いに来たんだよ。すごい2人だったよ。ほら、これとこれが2人のチャンネルなんだ。」


優子「へー。料理のチャンネルなんだね。えっ?ちょっと待って。あなた玉子焼き教えたの!誰にも教えないし、作れないって。。」


大輔「ああ、スーパーの社長の頼みで仕方なくな。しかしさー。俺の玉子焼きを、あの2人は作れたんだよ。すごかったなー。そんなやつは初めてだよ。なあ、チャンネルで店を宣伝してくれるってさ。とにかくすごい才能だったよ。彼はな、YouTubeで年に1000万円稼いだらチャンネルの彼女と結婚するんだって。なあ。これ、彼女。その胸のデカい女の子が作った寿司なんだ。」


優子「あら、すごくかわいいわね。全然寿司に見えないわね。」


大輔「食べてみて。」



優子「あら!寿司だ。すごい美味しい。これは。。あなた、負けたわね。」


大輔「ああ負けたな。けど、不思議なんだよな。全然悔しくないんだ。俺の玉子焼きを半日で覚えたんだよ?信じられないよ。なあ。俺さあ、この寿司をアレンジして誕生日用で売ろうと思ってな。」



 この日を境に大輔は変わっていった。変わると、好循環が始まるものでチャンネルで宣伝されると売り上げが何倍にもなっていった。



 数日後、大輔はまた上機嫌で話す。


大輔「なあ優子。先日のチャンネルの友人でな、さきさんって、ものすごい頭がいい方がいてな。気が短いから怒るとむちゃくちゃ怖いんだけど。。」


優子「さきさん。私は知らないけど、その人がどうしたの?」


大輔「何か良く知らないけど、スーパーの社長と友達でな。いや、なんだ。。コンサルティングだったか?大学生なのに、あのスーパーのコンサルティング?をやってる方なんだけどな。俺の寿司を全国展開しろって社長に言って実現させてしまったんだよ。しかも店の売り上げ手数料が0円になったんだ。更に、全国展開の利益からいくらかもらえるらしいけど、割合は、さきさんが交渉してくれるって。」


優子「あなた、それはすごいわね。」


大輔「でもな、さきさん。怖いんだ。お金無駄遣いしたら逆鱗に触れるしな。今日むちゃくちゃ怒られたんだ。」


優子「何でよ。何を買ったの?内容によっては私も怒るわよ。」


大輔「何も買ってないよ。いやね、お前、適正価格というものを知らないのか!全部倍だ!って。むちゃくちゃ怒られたよ。。なんかさー。前の店って価格間違ってたのかな?さきさんに潰れた店の価格教えたら、潰れて当然だろう!って。呆れて帰っていったよ。」


優子「私は経理は出来るけど、経営は勉強してないし、適正価格は分からないからな。。確かに間違ってたのかもしれないわね。でも、価格って難しいわよ。高すぎたらお客さんいなくなるし、当然原価よりは高かった。最初の2年はかなりの黒字。最後のほうが真っ赤だった。賃貸料が上がったのもあるけど。。支払い以上に稼げなかった。けど、どうしたらいいのか分からなかった。仕入れ下げるか、価格上げるか。。知識が足りなかったから動けなかった。相談も遅かったのは、すごく反省してる。」


大輔「それが優子の優しさなんだろうな。でも、今度はそういうの無しだぞ。」


※※※


 半年後のある日。


優子「ちょっと!あなた。何この金額。。ちょっと前に200万円の利益超えたと思ってたら。。今月450万円じゃない。何これ。」


大輔「ああ、全国チェーンで歩合入るようになったから。。へー。そんなにあるんだな。始めた頃って50万くらいじゃなかったか?けど、まだまだ増えるよ。全国チェーン展開はまだ一部だからな。さきさんに言われた。税金すごいから貯めろって。」


優子「税金いくら高くても、半分は残るから大丈夫よ。経費で落とすなら得意だから。税金減らすのは任せて。ねえ!あなた。お店がもう一度出来るじゃないの!」


大輔「ああ。それは今はどうでもいいかな。あの子らを見てるととにかく楽しくてな。もう今の成功で十分だよ。贅沢はしないぞ。さきさんに怒られるからな。それに今だってお店やってるだろう?まあ、寿司だけになっちまったけどな。」


優子「玉子焼きも出せばいいじゃない。」

 

大輔「それが出来ないんだよ。隣の惣菜屋がな。」


優子「味で負けたの?」


大輔「負けるわけないだろう。お客さんをみんな奪ったら体裁悪いからな。気を遣わないといけないんだよ。スーパーではな。いろいろとな。」


優子「確かにそうかもね。。いや〜。それにしても、あなたすごいわ。やっぱり惚れた男だわー。」


大輔「やめろよ。みゆさんやさきさんに助けられただけで、俺は何にもしてないからよ。なんか恥ずかしいよ。」


優子「とにかく、お金は貯めてチャンスに備えましょう。いつまでも今の利益出るとは限らないし、今まで以上に贅沢なんてしないわ。あなたの夢を叶えるのが私の役割だから。」



 優子は急に未来が明るくなった気がした。大輔の夢を叶えると誓った優子は、もし準備が整って機会が来たら再び挑戦し、必ず理想のお店を成功させたいと強く思った。


【お知らせ】

全話のあとがきに一律宣伝でいれますが、この物語は


SAKI 〜〜 ある少女の人生物語 〜〜

https://ncode.syosetu.com/n9739iq/


の登場人物の寿司屋の大将の物語です。

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