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「第4話」最後の武者修行

 大輔は翌日、朝7時前に料亭にやってきた。


料理長「おお、来たか。みんな、ちょっと集まってくれ。」



 弟子3人が集まる。


料理長「新しい仲間だ。おい、自己紹介。」


大輔「門田大輔です。頑張りますのでよろしくお願いします。」


一番弟子「料理長。腕は?」


料理長「知らん。」


二番弟子「えっ?知らないのに雇ったんですか!」

三番弟子「大丈夫なのか?」


料理長「大丈夫かどうかは本人次第だ。大輔。まず、掃除だ。開店時間は11時。10時半まで掃除だ。しっかりやれ。おい、出汁の状態を確認する。」


大輔「はい。」


 大輔は、まさか掃除だけとは思っていなかった。が1時間くらい一生懸命掃除した。


 料理長は昼食の準備状況を確認し、指示すると大輔の掃除のチェックをした。

 料理長が怒る。


料理長「大輔!何だ、テーブルに油が浮いているじゃないか!」


大輔「えっ!これ以上取れないですよ。」



 突然、料理長が大輔を殴る。


料理長「お前何だ!椅子に髪の毛がついているじゃないか!お客様がこれを見たらどう感じると思っているんだ!どけ、俺がやる。」



 料理長は机を磨き、椅子を丁寧に拭くと、雑巾に変えて這いつくばって床を必死に磨く。



女将「あんた。料理長にやらせて、手伝わないのかい?」


大輔「明日から料理長の納得する掃除をするから、今日は見る。その代わり、俺は2度と料理長には掃除をさせない。」


 料理長が掃除する姿を目に焼き付けた。



三番弟子「すごいですね。料理長に殴られるヤツは初めて見ましたよ。」

二番弟子「あいつ。。大丈夫ですかね?」


一番弟子「料理長が本気なんだよ。あいつのことは分からないが、料理長の気持ちなんだろうな。あんな熱い料理長は初めてだ。ちょっと大輔が羨ましいな。」



 10時半に全ての準備が終わると、全員で外の掃除をする。


大輔「あのー。なんで開店前にやるんですか?」


三番弟子「ああ、外は風が吹くからだ。夕方の開店前もやるんだよ。」


一番弟子「おーい、大輔。敷地の外は掃除する必要はないぞ。」


大輔「お客様が歩く道ですので必要かもって。」



料理長「んー。いい。実にいい考え方だ。大輔に外は任せたぞ。しっかりやってくれ。」



 全員で掃除すると、お客様を迎える準備が整った。


料理長「大輔。今日は勉強だ。見ておけ。」


大輔「はい。あの、料理長。皿洗いなら俺が。。」


料理長「バカ野郎!料理のおもてなしが分かっていない奴に皿洗いなんてさせられるか!お客様に出す皿だぞ?」


 大輔は黙って見る。4人の連携は素晴らしかった。普通なら4人で回るはずがない仕事を確実にやっている。

 料理長は皿洗いをしながら、お客様の様子を見て、弟子達に指示する。料理は弟子達が中心で作り、料理長は手薄になった場所を手伝う。



 昼が過ぎた休憩時間に大輔は弟子に聞いた。


大輔「皆さんは朝何時ですか?」


三番弟子「俺は、材料の確認と下準備で野菜切るから6時だな。」

二番弟子「7時だ。出汁作るからな。」

一番弟子「私は8時だ。今日は大輔の初日だから1時間早く来ることになったがな。私は出汁が出来てないと作業出来ないからな。料理長は毎日5時に来てるらしいよ。ここは高級料亭だから、夜は9時には終わる。片付けの最終は私の仕事だが9時には帰る。8時が最後の出し物なんだ。調理が終わるから2人は先に帰るよ。最後の洗い物は料理長がやるんだ。」


大輔「えっ。料理長が最後の皿洗い。。」



 夜の営業が始まると再び慌ただしく全員が働く。あっという間に初日は終わった。みんなで賄い飯を食べる。


料理長「大輔。どうだった。」


大輔「はい。素晴らしい連携でした。すごかったです。私、考えましたが、先輩、大先輩、先生、師匠と呼ばせて頂きます。」

 

一番弟子「先生!。。ん〜。微妙だが、まあいいか。」


料理長「お疲れ様。みんな今日はあがれ。後はやる。」


 大輔と弟子は帰った。



女将「あの子は本当に大丈夫かね?」


料理長「なあ。女将。バカなヤツほどかわいいって、こういうのなんだな。あいつは化けるかもしれない。そうはいないぞ。」


女将「まあ、料理長が言うならいいけどね。」


料理長「しかし。。。」


女将「どうしました?」



料理長「ん?師匠か。。気分は悪くないな。師匠か。んーー。師匠。。」


女将「あら。珍しいわね。いつも冷静なのに。。あんなに怒るのも、こんなに喜ぶのも。ねえ、あの子。掃除手伝えって言ったら何と言ったか分かる?」


料理長「何だ。」


女将「料理長に2度と掃除させないように、しっかり見るから手伝えないってさ。」


料理長「ほう。。そいつは楽しみだな。帰るよ。戸締まりよろしく。」


女将「お疲れ様でした。」



 師匠か。。困ったヤツだな。ニヤニヤしながら帰る料理長だった。


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