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「第3話」偶然の出会い。

 中学を卒業した日に大輔は優子に見送られながら夢の実現のために東京へ電車で向かった。


 親からもらったお金で東京にアパートを借り、大輔は歩き回って見つけた店で料理の修行を始めた。


 ところが大輔は料理の腕は良いが、態度や礼儀が良くなく、次々とクビになった。大輔は料理の腕にしか興味がなかったのだ。このため、結局扱いずらく、辞めさせられることを繰り返した。


 そんな生活を続ける中で、いつものように、お気に入りのラーメン屋で愚痴を言う大輔。


大輔「味なら負けないんだよ。みんな分かってくれないんだ。」


店主「なんだ。またクビになったのか。だったらラーメン屋になりな。俺がのれん分けしてやるよ。」


大輔「ありがたいけどよ。。約束があるんだ。俺はどうしても叶えてあげなければならないことがあるんだ。それに俺の作りたいのは玉子焼きさ。」


店主「何だ。女か。玉子焼きで食うのは無理だろう。」


大輔「玉子焼きなら誰にも負けないさ。確かに難しいかな。。寿司と玉子焼きかな。。」



客「店長。ご馳走さま。いくら?」


店主「ありがとうございました。380円です。」


客「美味いよね。価格間違っていると思うけどね。」



 帰り際に、お客さんが大輔に声をかける。


客「お前。厳しいけど、うちにくるか。」


大輔「あんた何者だい?」


客「今年から料亭を構えた。ここに来たら、徹底的にしごいてやる。厳しいけどな。今のままの君では夢は叶わないだろう。料理は美味ければいいというものではない。店は1人で出来るものではないんだ。良い人と巡り合い良い関係を築けない奴は一流の料理人にはなれないさ。君は料理人として大切なことをまだ学んでいないのだよ。まあ、君の腕がいいのかは知らないがな。」



 客は去って行った。


大輔「あれ誰?」


店長「ちょっと名刺見せてよ。。さあ?知らないなー。だがな、お前さん。行くべきだと思うぞ。もう21歳だろう?フラフラしてる時間はない。人生あっという間だ。確かに、美味ければいい訳じゃないのも確かだ。ものすごく美味いが店主が感じ悪い店だったら、俺は行かないからな。実際にそういう店あるから。お前な、いつまでもこんなことしてたら誰も幸せにも出来ないぞ。もちろんお前もな。今幸せには見えないからな。」



 大輔はアパートに帰り考える。


大輔「もう6年だ。。全く成長していないじゃないか。。俺はいったい何をやってるんだ。優子を幸せにするんじゃないのか?。。。よし、行こう。修行は今度が最後だ。これがダメなら、もう得るものは無いんだ。地元に帰って屋台でも何でもいいから店を開こう。」



 翌朝、名刺の住所を訪れる大輔。昨日の人が庭の掃除をしている。


料理長「すみません。木曜日は定休で。。あれ?お前か。。。どうした。」


大輔「俺よ。どこ行っても続かなくてさ。もう最後の挑戦のつもりなんだ。へー。料亭なんだな。。」


料理長「おい、入れ。誰にも負けないという玉子焼きを作ってみろ。」


 大輔は玉子焼きを作った。料理長が食べる。



 うむ。この味の深み。。玉子焼きに愛がある。昨日の態度からは想像出来ないな。確かに言うだけのことはあるな。こんな玉子焼きは俺には作れない。ずっと努力してきた。料理なら負けない自信はある。だが、これには勝てない。こいつは素質はあるな。。うむ、成功する可能性はある。俺を立派に育ててくれた恩返しはこいつにするか。。決めた!先輩との約束はこいつに果たそう。しかし、こいつは根性あるのか?試してみるか。


料理長「おい、なかなかいい味じゃないか。いいぞ、来るか。ただ、料理を作れるようになるのは当分先だ。お前は先に学ぶことがある。何年も料理は作れないかもしれんが、最後までやる覚悟があるなら雇ってやる。」


大輔「玉子焼きは6歳から毎日毎日作ったんだ。家族や知り合いが喜ぶのが嬉しかった。だから誰にも負けないさ。けど、みんな失敗ばかりだった。もう俺には後がない。やるよ。」


料理長「だったら明日から来い。朝7時だ。遅れるなよ。ああ。お前。坊主頭だ。今から俺がやる。」


大輔「な、何だよ。リーゼント気に入ってるんだよ。」


料理長「最後までやる約束は!料理人に髪は邪魔だ。料理に入ったら台無しになる。」


大輔「ぼ、帽子があるじゃ。。」


料理長「自分で決めろ。坊主になるか、他に行くかだ。」


大輔「世話になりたいです。お願いします。」


料理長「良し、分かった。どんなに辛くても逃げるなよ。俺がお前を必ず立派にしてやる。」


 料理長は大輔を丸刈りにする。


料理長「いいか、身だしなみは一番大切だ。まずは清潔感を大事にすることからだ。終わりだ。帰れ。」


 大輔は、むちゃくちゃだとは思ったが、この人なら人生をかけてもいいと思った。玉子焼きを気に入ってくれたのは当たり前だが、今までに教わったことのない考えや、料理長のカリスマにひかれたのだった。


大輔「優子。必ずお前を幸せにするから。俺、今回は歯を食いしばって頑張るよ。あの人に一人前と言われるまで絶対にやめない!」



 秋の風が坊主頭にしみる大輔は、誓いを新たに頑張ると決めた。


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