「最終話」大将
大輔「なあ。優子見てくれ。この間の寿司持って帰った日にな、師匠にメニューをいろいろ食べてもらったんだけど。師匠が言った価格なんだ。」
優子「どれ。。すごい高いわね。大丈夫なの?」
大輔「前回失敗してるからさあ。今回はプロに従おうかと思うんだ。もし売れないやつがあれば下げる。売れすぎるやつは上げろって。」
優子「ちょっと信じられない価格だけど、私達は素人だから従いましょうか。休みはどうするの?」
大輔「悩んでる。師匠の店が木曜日休みなんだ。スーパーは水曜日休みだった。師匠から連休にしようかって。」
優子「水曜日と木曜日ってこと?」
大輔「師匠が1日師匠の店をやれって。。だから俺が火曜日と水曜日、師匠が水曜日と木曜日なのかなって。火曜日は俺が師匠の店。木曜日は師匠が俺の店を手伝うとか。」
優子「そんなに休んで大丈夫かな?」
大輔「分からないけどな。師匠のYouTubeにも出るし、グッズ販売もしようかって。師匠はグッズ販売で過去に失敗してるから、慎重みたいだ。」
優子「失敗って?」
大輔「詳しくは知らないけど、騙されて1000個グッズ注文したけど1割も売れなかったらしい。さきさんの入れ知恵で、みゆさんの彼のイベントに参加して黒字になるまで売ったらしいよ。ただ、みゆさんは就職したらYouTubeは辞めるらしいから。師匠としか出来ないんだ。」
優子「えっ。あんなにすごいのに辞めるの!」
大輔「サラリーマンで一流になりたいんだって。さきさんは圧倒的に頭いいけどな。みゆさんも彼も頭いいらしいよ。3人が大学の1位〜3位らしい。さきさんの天才ぶりは凄すぎて語れないくらいなんだ。」
優子「そうなの。」
大輔「さきさん。この間紹介した両親はな、旦那さんの両親なんだ。彼女は親に見捨てられたらしくてな。自殺しに大学に行く時に旦那さんとぶつかった。それで今があるそうだ。だから仲間は大切にするんだって。私達なんかじゃ経験してない苦労をしてきたんだ。みゆさんは言ってた。ひさおさんしかさきを幸せに出来る人はいないって。」
優子「私、初恋の人と結婚して自慢だったけど、私達よりすごいと思う。えっ!ちょっと。大学目の前じゃない!さきさん本当にギリギリじゃない。。」
大輔「2人も初恋みたいなんだけど。詳しくは聞いてない。」
優子「開店2月に間に合うのかな?」
大輔「改装と調理器具は間に合う。看板はどうかな?まあ後日でもいいけどな。もう来週には開店日を決めないといけない。広告作ってくれるらしいから。しかし、やっと本気で作れるよ。」
優子「何を?」
大輔「何って。。料理だよ。」
優子「えっ!あなた。今まで本気じゃなかったってこと?」
大輔「ああ。そうか!お前、この間の寿司しか食べてないもんな。そりゃ分からないか。あのな、さきさんが2年くらい前にわざと味落とせって。俺、そんなの人生で初めてだったけど、俺を救ってくれた恩人の言葉だから守ったよ。材料も落としたし。あの時はスーパーが業界1位になった直後だった。その段階で彼女はスーパーが潰れるの見越してたんだよ。全国チェーンの味を落とさせる狙いがあったみたい。今回は本気出せってさ。」
優子「あなたがそんなことに従うのだから、すごい人よね。実際それが成功には重要だったと思うし。」
大輔「師匠ってな。のれん分けとか2号店って絶対に作らない方だったんだ。あの方は俺より頑固さ。その人が2号店を作ったんだ。みゆさんや彼やさきさんが魅力的だからさ。本店は弟子に売却するみたいだけどな。みんな、いい先輩達だったな。」
優子「あの方の妥協しない料理は見事だった。あんな方の弟子になるなんてすごいわね。」
大輔「それがな。入っては辞めを繰り返して、仲のいいラーメン屋で腐ってたら、偶然客で来てな。誘われたんだ。入る前の日に坊主頭にさせられて、入った初日は殴られてな。。師匠が弟子を殴るのは俺が初めてらしいよ。あと、俺が辞める時にのれん分けを考えてたんだって。俺は師匠の一番弟子らしい。俺の自慢なんだ。」
優子「出会いって不思議よね。磁石がくっつくみたいに。。あなたは腐ると出会うのかな?スーパーの寿司始まった時もそうだった。しかし。。あなたが1週間遅く来たら、今はなかった。奇跡なのか運命なのか。。」
大輔「さきさんは、どちらでもないってさ。神様が決めた道の最良を仲間と選んでいるって。努力の結果だってさ。俺もさきさんも投げやりになった時に出会いがあった。確かに何か力が働いたとしか思えないし、人間と人間は必要な時に引き合うのかもしれないな。でも優子の言うことも正しいと思う。」
優子「あなたって。。かなり頭いいわね。勉強が出来るのと生き抜くための頭の良さって違うわ。あなたは苦労して学んだのね。尊敬してる。仲間の力を借りて協力し合って成功させましょう。」
2月開店に向けて全力で取り組み、仲間達はチラシを各家庭に配ってくれた。
ついに開店の日、朝から2人で準備していると、さきさんから電話がかかってきた。
大輔「おはようございます。。えっ!そうなの?わ、分かった。」
優子「どうしたの?」
大輔「なんか、駅前まで並んでるから開店早めないとマズいって。さきさんがSPさんに入場整理頼んでくれたらしい。あっ!また電話。。師匠。おはようございます。。そうらしいですね。。いや、店はどうする。。はい分かりました。」
優子「なになに。」
大輔「店なんか弟子に任せるから応援に行くって。まただ。。おはようございます。。えっ!そうなんだ。おめでとうございます。。えっ!。。ありがとう。よろしくお願いします。」
優子「教えて。」
大輔「みゆさんの旦那さんが応援に来るって。みゆさんは諸事情で無理って。」
優子「それは驚いた諸事情ね。。ありがたいわね。」
師匠とみゆの旦那さんが応援に来た。
料理長「大将。あなたの店だ。俺達はこき使ってくれ。」
大輔「ありがとうございます。」
彼「なあ大将。見てみろ。ゆなが生放送で派手に宣伝してるよ。ガンガン米を炊かないとな。俺やるよ。」
料理長「いや〜。これ以上はマズいだろう。あ〜あ。。ゆなさん派手にやるな〜。大将。これから作るのは5種類に絞ろう。今日に限っては、絞らないとマズい。玉子焼きは大将が作りつづけろ。」
大輔「師匠。そういえば、あの出会ったラーメン屋の味を研究しませんか?あれ師匠の店で出したら面白い。」
料理長「あれか!確かに面白いが。。あの味を出せるかな?いや、そんなことは後だ。具材切るぞ。おい店に誰が立つんだ。これは優子さんだけじゃ無理だぞ。」
なぎさ「あら〜。それは大丈夫よ。私、レジ打ち得意なのよ。ユウキは誘導係してるわ。」
彼「このために、わざわざ名古屋から?」
優子「うわー。綺麗な方。色気凄い!あなた誘惑だらけね。」
大輔「いやいや、お前な。日本一の空手家が彼なんだ。殺されちまうよ。」
なぎさ「ちょっと用事ついでにね。大将の寿司には幸せもらってますから。私、お客さんの最大処理能力は凄いのよ?」
大輔「いや〜ありがたい。」
優子「あ、あなた。危険だわ!もう開店しましょう。」
大輔「よし始めるか!」
大将の店はかつて経験のないほどの大盛況になった。自分の弱みは仲間が助けてくれる。家族に、料理長に愛情をこめて育てられた大輔は、足りないピースを自ら引き寄せ、ついに本日一流の料理人になることが出来た。
仲間を大切に出来る器になった大輔は失敗する理由はもはやなかった。
ゆうちゃんが与えてくれて始まった夢は失敗を繰り返し、学びながら、自分の生きる価値をついに開花させた。
何度も失いかけ家族や仲間に守られ、失わなかった笑顔は、大輔の未来を更に明るく輝かせるのだろう。
ーー 完 ーー
今話をもって完結です。ご愛読ありがとうございました。
私が一番書きたかった内容が含まれていますので、とても大切な作品なのです。
小学校1年でファーストキスと結婚の約束をして、約束を果たした2人。。
全く同じことがあったけど果たせなかった私。いい思い出だけど。。仕方ないよね。小学校1年の男の子なんてクソガキだからね。まだあるかな。あの駐車場。
大切に出来なかった自分。。その後悔がね。。つまり、私の人生のIFルートかな?この点だけはね。
一生懸命生きること。それだけが書きたかっただけ。ありがとうございました。