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「第15話」販売価格

 大輔は1月中旬の水曜日、師匠を店に呼び価格の相談をした。


師匠「工事はどうだ。」


大輔「来週壁紙を変えて、テーブルを少しだけ買いました。冷蔵庫とかは運び終わりましたから、月末に調理器具が届きますので、師匠ほど強引なスケジュールではないですね。師匠。今から本気で作りますから、価格を決めていただきたいのです。」


師匠「本気って、今まで適当に作ってたみたいな言い方だな。」


大輔「ええ。さきさんにライバルが出来ないように、全国展開が始まる時から、仕入れの具材も、握りもわざと落としました。」


師匠「何だと?お前が本気じゃなかったって?」


大輔「さきさんの言うことは黙って従うのが正しいです。自分では分からなかったけど従いました。久しぶりの本気です。」


 大輔は寿司を作れる限り作った。


師匠「いや〜。前も美味かったが、これは美味いを通り越してヤバいな。価格はかなり上で問題ない。お手頃なメニューも作ったらいいな。この街では高級だけを売りにしても上手くいかない。本気のは高値だ。」


 師匠が決めた価格は大輔の予想の遥か上だった。


大輔「いや、師匠。そんな価格は売れないです。」


師匠「売れる。この味なら売れる。」


大輔「師匠が言うなら。。」


師匠「売れ行きを見て、売れるやつは値上げ。売れないやつは値下げだ。だが、ほぼこれでいけるはずだ。しかし、お前がわざと味を落とす。。あり得ない。が、前の寿司も十分美味かったんたが。師匠と言われると恥ずかしいんだが。」


大輔「師匠に勝てる訳ないじゃないですか!いやね、私も疑問だったんですよ。けど、スーパーが業界1位になった年に、さきさんに言われましたから。あの時に、さきさんは既にスーパーを見限っていたんですからね。私には到底理解出来ません。」


師匠「あの方の目は確かだ。従って正確だったな。この味をさきさん達に披露しないとは失礼だろう。」


大輔「ああ、それは大丈夫です。あの方達が事前に予約する時だけ仕入れ材料も変えて最高の寿司を作りましたから。私、自分と妻の両親に持って行きます。」


師匠「それはいいな。なあ。悪いが俺の妻の分もくれないか?」


大輔「作り過ぎだし、材料余ってますからいいですよ。そうか。さきさん達も後で。。」



 大輔は寿司を一人前師匠に渡すと、師匠と別れ、優子の両親を訪ねた。


優子の母「あら。大輔さん。いろいろ大変だったわね。」


大輔「知り合いのアドバイスで、準備していましたから大丈夫でした。久しぶりにゆっくり休めましたし。良かったです。」


優子の父「ずいぶん有名人になったな。」


大輔「いや〜。目立ちたくはなかったのですが。。でもあれがなかったら今はないし。素直に感謝しています。あの。次の店に出す寿司を持ってきましたのでお召し上がり下さい。」


優子の父「ああ、もう昼か。頂こうか。」



優子の母「うわー。これ凄い!これは買うでしょう。」

優子の父「こんな美味いの初めてだ。これは売れる。間違いないよ。」


大輔「私の料理人人生はお母さんから始まった。僕の人生の先生なんです。恩返しはこれからですから。」


優子の母「これはあなたの努力よ。先生か。。私、誇りだわ。」


大輔「ちょっと自分の親にも届けないといけませんから、また改めてお伺いします。」


優子の父「昼過ぎているな。急いだほうがいい。私達も買いに行くよ。」


大輔「ありがとうございます。」



 大輔は自分の両親を訪ねる。久しぶりの実家だ。


父「大輔。昼を食べさせるって。どうした。」


大輔「自分の本気で作ったのを食べてもらったことがありませんでしたから。」


母「たまにスーパーで買ってたのよ。知ってるわ。」


大輔「わざわざ買いに来てたの?」


母「いつも繁盛して凄かったわね。スーパー潰れたら仕方ないわね。」


大輔「そのために準備してたから大丈夫。私の味でスーパーが潰れた訳じゃないから。あと、スーパーの寿司は本気で作ってないから。わざと味落としてたから今日のは本気だよ。」


父「ん!。。本当だ。まるで違うよ。母さん。」

母「あんた、こんなもの作れるの!」


大輔「ああ。忘れてた。だし巻き玉子も作ったよ。皇太子様も気に入っていただきましたからね。」


母「皇太子様!凄いわね。あなたは料理人として一流になったのね。良かった。。本当に。。何これ!どうやったらこんな味になるの!」

父「本当だ。凄いな。。ずいぶん心配したが。お前の笑顔さえ守れば、いつか成功すると信じていたよ。大輔。一人前だな。安心して死ねる。」


大輔「やめてくれよ。これから恩返しなんだからさあ。今度、師匠の店を予約するから、優子の両親と一緒に行きましょう。1人10万の高級料亭なんだよ。」


父「つまり。。100万要るじゃないか。。」


大輔「安いと感じるはずだ。それに予約じゃないとその値段の具材は用意してくれない。師匠の特別メニューは皇族や限られた人しか食べれないんだ。長生きしてくれよな。今日は帰るよ。」


母「気をつけてね。」



 大輔は帰って行った。


父「大輔の料理はあんなに凄かったんだな。」


母「立派になったものだわね。しかし、本当に美味しいわ。玉子焼きは驚いた。お金もらう料理は別格ね。なんかホッとした。開店する前から成功間違いなしね。」


父「人を幸せにする笑顔。料理。立派になったものだな。」



 店に戻った大輔はさきとみゆと彼を店に呼ぶ。


さき「順調なの?相談?」

みゆ「まだ、工事してないの?間に合うの?」

彼「何の用事?」


大輔「いやな。本当の寿司屋ってやったことないからさ。一度やりたかったんだ。お客さん。注文は?」


さき「うに!」


大輔「へい。お待ち。」


 さきはうにを食べると足をバタバタさせて悶絶している。


みゆ「そんなに?サーモン。」


大輔「どうぞ。」


みゆ「。。。ヤバい。これヤバいよ!幸せ〜。」


彼「マグロと玉子。」


さき「あーっ。玉子!玉子私も。。」


大輔「玉子は3人分ね。ああ、真ん中のだし巻き玉子もサービスだ。」



彼「ヤバいよ。これヤバい。何。このだし巻き玉子。これ師匠に出して師匠を凹ませてしまったってやつか。。」

さき「ヤバい!」

みゆ「ヤバい!単語しか出ない。」


さき「大将。いくらよ。こんなの予想してなかったから、あまり持ってきてない。」


大輔「決まってるでしょう?タダほど怖いものはないよ。師匠との価格決めの余りの材料だ。廃棄するだけ。だからタダ。」


彼「へー。駆け引き一流になったね。大将お任せで。」


さき「あの〜。出来たら、みんなの夜ごはんに。。」


大輔「4人前でいいか?余りの材料だから、バラバラだけどタダだから許してくれ。」


さき「うん。イクラ。」


大輔「子供みたいなさきさん初めて見るな。。はい。イクラ。」


さき「。。。」


みゆ「大将。ついにさきを落したわね。ひさおさんしか出来なかった。ウナギは?」


大輔「ウナギは今日は無理だ。寿司のメニューとしてはあるけど、今日は用意しなかった。うな重はあなた達の特注でしか作らない。あれは手間かかるから儲からないから、特注のみさ。」


みゆ「じゃあ。お任せで。」


大輔「あのな。本当の寿司屋でお任せはダメだぞ。ああ、あなた達いくらでも金あるからいいか。店ごと買えるからな。。じゃあ。伝説の師匠の漬け大根巻きだ。醤油つけず、そのままね。」



彼「何これ。。寿司だけど、寿司じゃないような。。凄いな。」

みゆ「。。。」


さき「。。。抱かれてもいい。今なら。」

みゆ「確かに。。今なら。」


さき「こんな寿司あるんだ。」


大輔「ああ。昔、賄い飯で出したら大好評だったの思い出したんだ。師匠の味はみんな作れるよ。一番弟子だからな。けど、コースメニューにすると師匠には勝てない。師匠の顔も潰せないしな。」


さき「この間の弁当で潰したから大丈夫よ。」


彼「これ価格表か。高いなー。いや、この味なら安いか。価格設定絶妙たな。。」


大輔「納得はしていないけど価格は従うことにしたよ。でも、あまりに高いからびっくりした。もちろん安い寿司も用意するよ。この街じゃ高級だけではダメって師匠言ってた。みゆさんのパスタとか昼は出してるんだな。昼は料亭半分の不思議な店だった。おにぎりとか。師匠の賄い飯いっぱい。あれ弟子にはたまらない。」


さき「昼に行ったことないな。今度行こうか。」


彼「いつも行列出来てるから寒いよ。」


大輔「あの行列は隣だよ。」


みゆ「えーっ!そうなの。。つまり。えーっ。」

さき「ちょっと優越感ね。あっ。大将。マグロは私達、今は避けるから。」


彼「僕が食べるよ。」


大輔「さきさんの家族のに詰めるよ。」


さき「それなら、お願いするわ。でもさー。私、寿司屋って初めて。ちょっとお金持ちになった気分。」


彼「タダだし。お金持ってるし。」


みゆ「回らない寿司って、記憶にないくらい久しぶりだわ。じゃあ。最後に私達を繋いだ玉子焼きで締めて。」


彼「そういえば、玉子焼きってゆなが美味しいって気づいたんじゃなかったかな?」


さき「玉子焼きの入った寿司って安っぽいから避けてたんだけど、人数多かったから仕方なく選んだはず。でも大将の寿司は、玉子焼きが本丸だったのよね。みゆ。明日牛丼食べたいな。」


みゆ「お腹いっぱいなのに、良く考えれるわね。」


彼「あれもたまにはいい。」



大輔「俺は月1回食うよ。そういえば。。昔、美味いラーメン屋あったんだよな。世話になったけど閉めたからな。あの味。習うべきだったな。師匠と研究しようかな?」


彼「師匠知ってる味なの?」


大輔「師匠と出会った店なんだ。師匠も食べてる。料亭でラーメン出すって良くないか?」


さき「斬新だけど。。高そうね。」


大輔「何でも高くはしないよ。師匠は価格のプロだからな。懐かしいな。。」



さき「ありがとう。いい思い出になった。ちょっと惚れたわ。」


大輔「いや〜。さきさん。怒ると怖いからな。」


さき「みゆほどじゃないけど、裸にしたらまあまあよ。でも、いつまでも続かないわね。女って旬が短いなー。」


大輔「あなたは人間としての旬が永遠に続くから大丈夫だ。」


彼「褒めたのかな?怖いさきさんに、なかなか勇気ある言葉だ。」


さき「こんな料理食べたら、何言っても褒め言葉よ。大将。その笑顔よ。寿司だけじゃない。あなたの笑顔は一流。今はそれに惚れたのよ。それヤバいな。外で子供作らないようにね。」


大輔「優子しか興味ないから大丈夫。」


彼「確かに絆が凄いのは感じた。ごちそうさまでした。」


大輔「ありがとうございました。」



大輔「家族にも作って帰るか。ああ、優子に夕食作るなって言わないとな。」



 大輔は、1日中いろんな人に恩返しが出来た気がして、幸せな気持ちになったようだ。


【お知らせ】

全話のあとがきに一律宣伝でいれますが、この物語は


SAKI 〜〜 ある少女の人生物語 〜〜

https://ncode.syosetu.com/n9739iq/


の登場人物の寿司屋の大将の物語です。

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