「第10話」大輔のお礼
ある日、大輔は帰宅すると優子にお願いする。
大輔「あのな、優子。お祝いの書き方を教えてほしいんだが。」
優子「いいわよ。何のお祝いなの?」
大輔「世話になったさきさんが赤ちゃん産んだから。」
優子「えっ。さきさんって学生じゃないの!ああ『出産祝い』って書くのよ。」
大輔「さきさんは高校生の時に55歳の人と結婚したんだよ。」
優子「えっ。。すごーい!ねえねえ、さきさんってどんな人なの?ねえ、旦那さんどんな人?」
大輔「むちゃくちゃ美人だよ。頭もすごくいい。まあ、そのうち会えるよ。ああ、旦那さんは会社の役員だよ。かなり魅力的な男性だと思うよ。さきさんを幸せに出来るのは、あの方しかいないってみんな言うけど、分かる気がするんだよな。自分だったら怒られてばっかだろうな。そもそも、さきさんが振り向かないな。」
大輔は優子の文字を見ながら写す。
優子「あなた。いいかな?教えた漢字くらいは覚えましょうね。私が死んだらどうするのよ。」
大輔「分かった。努力するよ。ごめんな。漢字はどうしてもな。。」
優子「支え合うのが夫婦だからいいけどね。それに、みんなあなたの方が上手だと私も困るし。ちょっと、あなた。金額を中の袋の裏に書かないと。いくらなの?」
大輔「30万円。」
優子「えっ!いやいや、ちょっと待って。出産祝いよね。あまりにも多くない?多すぎるのも迷惑よ。」
大輔「店が全国展開出来たのも、YouTubeで有名になったのも結局は彼女のおかげだから。むしろ少ないくらいだよ。本当は、もっと出したいんだけどな、怒られるから。。許されそうな最高額を考えに考えて決めた金額がこれなんだ。」
優子「なるほど。。最近の収入は彼女のおかげなら確かに安いかも知れないわね。えっ?。。ちょっと待って。今の話を聞くと。。もしかして、あなたYouTubeに出てるの?ねえ、どれよ。」
大輔「ああ、この方の。。えーと。もう少し下。。あった!これだよ。」
優子「えーっ、このチャンネルだったの!前から知ってるわ。すごいわね。しまったなー。前にしっかり見てなかったわ。あなた、この方と知り合いなの!登録しないと。知らなかった。。」
大輔「2回出たかな?もうすぐ3回目が公開されるはずだ。あと、この方の彼のチャンネルにも出てる。」
優子「どれ?えっ。もしかしたらこの人?」
大輔「そうそう。その人。玉子焼きを教えたのがきっかけなんだ。まもなく先日彼のイベントの手伝いをした動画が上がるはずだよ。彼らは俺の師匠の番組に呼ばれてるんだ。」
優子は尊敬の眼差しで大輔を見る。
優子「私、彼はファンだからチャンネル登録してたわ。そういえば、結婚するという投稿って見てないな。。どれかな。いや、そんなことより、凄いじゃない。あなた素敵よ。明日、子ども達に教えないと。」
大輔「いや、恥ずかしいからやめようよ。」
優子「ああ、忘れてた。『300000円』て書いてもいいし『参拾萬円』でもいいかな。カッコつけるのもどうかと思うから、数字でいいかな。名前も書くのよ。ねえ、お風呂入ってきてよ。私、動画見てるから。」
大輔「恥ずかしいなあ。。」
優子「何言ってるのよ。私のヒーローが世界進出したのよ。ちょっと、何よ。コメント欄ベタ褒めじゃない!あなた大人気じゃないの。すご〜い。」
大輔「やっぱり恥ずかしいな。。」
優子「あなたが料理で成功するのは分かってたけど、まさかYouTubeに出るとは思ってなかったわ。」
大輔「いや〜。おれ風呂入ってくるわ。」
大輔が風呂を出ると、妻は楽しそうに動画を見ている。
優子「あら、あなた。居たの。ねえ、ちょっと。ものすごい好印象じゃないの。これは、店でモテるでしょう?」
大輔「もてはしないよ。俺は優子一筋だからな。最近は、お客さんがいっぱいになるから出来るだけ外に出ないようにしている。」
優子「あなた。それってモテてるって言ってるようなものじゃないの。」
大輔「ちゃんと断ってるよ。それにお金が目的で近づいているとしか思えない若い子もいるからな。さきさんに知り合いとか怪しい人間が増えるから、気をつけろってキツく言われてるよ。俺は昔から女は優子だけさ。正直、女は苦手なんだ。」
優子「気にしてないわよ。お金持って有名なら、1人くらいいいわ。戻ってくるなら。しかし、すごいなー。本当にすごい。ねえ、ところで、さきさんはどこよ。」
大輔「あのな、優子以外に価値感じないからな?ああ、あの方は表には出ないよ。目立つのは好きじゃないらしいんだ。ああ!そういえば。確か。。ピザを作る回に一度出てたの見たよ。お腹に赤ちゃんいたんだよ。。あった、これだ!」
優子「うわっ!ちょっと。。この人がさきさんなの?むちゃくちゃ綺麗じゃないの!そりゃ〜あなたは他の女に声かけられても相手にしないわけだ。。あれ?ゆなさんってもしかして陸上の日本記録の人じゃない?うわー。この人もすごい綺麗だわー。。みんな仲間なんだ。。へー。これ、日本記録出す前の動画なんだね。。」
大輔「あのな。違うぞ。さきさんは確かに綺麗だ。でもな、あの人とって。。考えただけで恐ろしいよ。ちなみに。ゆなさんはモデルもやってるよ。あっ、この人はみゆさんの彼のお姉さんだよ。」
優子「えーっ!あのグラビアの人だよね。この街で一番芸能界で有名になった人じゃない!信じられない。あなた。すごい方達と知り合いになったわね。」
大輔「いや、俺はお姉さんとは会ったことがないから知り合いではないよ。なあ。明日、仕入れ早いからそろそろ寝るよ。」
優子「はーい。おやすみ〜。」
楽しそうに深夜まで動画を見る優子だった。
※※※
翌日の夜は、浮かない表情で大輔が帰宅する。
優子「あら。今日は落ち込んでるの?本当に毎日気分が忙しい人ね。祝儀は渡せたの?」
大輔「ちょっと怒ったけど。。まあ納得して受け取ってくれたよ。あのな、仕方ないだろう。さきさんに負けたんだよ。はあ。。今日は参ったな。」
優子「さきさんは、頭がいいんでしょう?そりゃ〜負ける部分はあるわよ。当たり前じゃないの。」
大輔「いや。あのな。さきさんに料理で負けたんだよ。」
優子「あら〜。それじゃあ、さきさんに勝てるものなくなっちゃったじゃないの。年齢くらいね。」
大輔「年齢は勝っても仕方ないだろう。そうだな。。まあ、あの方なら仕方ないな。だけどショックだったよ。」
優子「あーっ!学生さんなら、稼ぎなら勝ってるでしょう?」
大輔「それがさー。。旦那さんの会社の大ヒット商品で報酬30億だってさ。まだまだもらうらしいよ。」
優子「何よ、その金額。どうやって使うの?要らないでしょう!」
大輔「さきさんも要らないらしいよ。だいたいさー。あの仲間全員が、俺より稼い出るからね。みんな学生なのにな。。」
優子「すごいわね。でも、まあいいじゃない。稼ぎ競ってる訳じゃないし、何だか良く分からないけど最近のあなた、すごく幸せそうよ。スーパーの寿司屋は大正解だったわね。あなたのセンス凄いわね。子供達も自慢みたいよ。」
大輔「幸せなのは間違いないな。あの方達はみんなを幸せにすることしか考えてないみたいなんだよな。あの考え方と熱量は尊敬するよ。しかし、まさか師匠までがあの方達にとは。。すごく変な再会したよ。道端でばったり会ったような感じかな?違うかな。とにかく不思議な再会だったな。互いに会おうとした訳でもないのに、スーッと会った。。おい、聞いているのか?」
優子「えっ?何か言った?あー。あなたのせいで、また寝れないわ。楽し過ぎるわよ。」
大輔「寝る。ダメだな。全然聞いてないや。」
すっかり興味津々でいろんな動画を見る優子だった。
【お知らせ】
全話のあとがきに一律宣伝でいれますが、この物語は
SAKI 〜〜 ある少女の人生物語 〜〜
https://ncode.syosetu.com/n9739iq/
の登場人物の寿司屋の大将の物語です。