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悪役令嬢人形劇  作者: 柚屋志宇
第1章 わがままな義妹に婚約者を奪われました
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1-04 帝国の皇子

「な、なんだってー!」

「トビーが帝国の皇子?!」


 鳶色の髪の留学生トビーの正体に、イシドールとフロランが驚きの声を上げた。

 リオネル王子も驚きにその紅目を見張った。


「リオネル王子、先程の話だ」


 トビー皇子は、気安い調子でリオネル王子に再び話しかけた。

 皇子と王子の身分は等しく、帝国の国力を考慮すればむしろトビー皇子のほうが格上と言えるため、リオネル王子はこれを受け入れざるを得ない。


 リオネル王子の腕にぶらさがっているアンジェリクも、この事態に鳴りを潜め大人しくしている。


「マリス殿と婚約破棄するという言葉に二言はないか?」

「もちろんだ。二言は無い」

「たしかに婚約破棄するか?」

「もちろん。たしかに婚約破棄だ」


 リオネル王子に何度も婚約破棄の念を押すと、トビー皇子は口の端を吊り上げ、勝者の笑みを浮かべた。


「お前たちも聞いたな?」


 トビー皇子は帝国の礼服に身を包んだ屈強の者たちに問いかけた。


「はい。聞きました」

「しかと」


 そのやり取りから、彼らはトビー皇子の親戚ではなく部下であることが知れた。

 トビー皇子は満足気に頷くと、リオネル王子に向けて言った。


「リオネル王子はマリス殿と婚約破棄するのだ。私がマリス殿に結婚を申し込んでも問題はないな?」


「なっ! マリスに結婚を申し込むだと?!」


 リオネル王子は驚きの声を上げた。


「どういうつもりだ!」

「どうもこうも、一目惚れだ」


 トビー皇子は悪びれずに答えた。

 そして彼は護衛たちに命令した。


「花を」


 トビー皇子の命令に、部下はさっと真紅の薔薇の花束を取り出し、恭しい仕草でそれをトビー皇子に捧げた。


 トビー皇子は部下から花束を受け取ると、マリスの前に進み出て片膝をつき、頭を垂れた。

 そしてその真紅の薔薇の花束をマリスに捧げた。


「モンストル公爵令嬢マリス・ミシェール・モンストル殿、どうか私と結婚してください」


「あの……」


 トビー皇子の行動にマリスは面食らい、笑顔を一瞬引きつらせた。


「恐れ入りますが、その前に、質問をさせていただきたいのですが」

「何なりと」

「本当に貴方は帝国の皇子殿下なのですか?」

「もちろんです。大使に証明させましょう」


 トビー皇子はそう言うと、指をパチンと鳴らした。

 帝国の礼服に身を包んだ恰幅の良い壮年の男性が、まろぶように進み出た。


「私が証明いたします。このお方はたしかに我が帝国の第十三皇子トビー殿下にございます。殿下は帝国では稀である魔法の才を持つお方ゆえに、魔法学の先進国であるアルカナ王国への留学をご希望なさいました。アルカナ国国王陛下のご配慮により、トビー殿下は身分を伏せて学院生活を送っておられたのです」


「父上はご存知だったというのか?!」


 リオネル王子が驚いたように問うと、帝国の大使は頷いた。


「はい。もちろんです。そもそも身元が不確かでは、こちらの王立魔法学院には入学できませぬゆえ」


 大使の言葉によりトビー皇子が帝国の皇子であることは証明された。

 しかしマリスは内心で首を傾げたままだった。


(タイミングが良すぎるわ。それにどうして花束なんか持っていたの。まるで私が今日、婚約破棄されることを知っていたみたいに……)


「トビー皇子殿下、お気持ちは大変嬉しく思います。ですが今すぐにお返事することはできません」


 マリスはトビー皇子に言った。


「婚約解消の手続きもまだ終わっておりませんし、父とも相談する必要があります」

「おお、それは当然のこと。私も少々、急ぎ過ぎたようです。すぐにモンストル公爵に正式にご挨拶に伺います」

「はい……。ありがとうございます」


 ――そのとき、異変が起こった。


 数人の部下を引きつれて、ノエ将軍が慌しくリオネル王子に歩み寄った。


「リオネル王子殿下はご病気のご様子」


 ノエ将軍はそう言うと、リオネル王子に退出を促した。


「ささ、リオネル王子殿下、あちらでお休みいたしましょう」

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