3-01 行方も知らぬ婚約破棄の道かな
※平安時代に似ていますが、異世界です。
――古の神国、在日名の国。
「右大臣令嬢摩利子、そなたとの婚約は破棄でおじゃる!」
桜花舞い散る宮中の宴。
かかるめでたき席に、紅白童子と尊ばれている白髪紅目の璃王練皇子の声が落雷のように響き渡った。
璃王練皇子のその声に、宴の会場はしんと静まり返った。
「皇子、理由をお聞かせください……」
射干玉の髪の摩利子が震える声でそう言うと、璃王練皇子はその美貌を険しくした。
「摩利子、其方は、げに恐ろしき女でおじゃる。そなたのような恐ろしい女は縁起が悪い。麿の妃にふさわしくない」
「妾が何をしたというのですか……」
「白を切るな」
璃王練皇子は険しい表情でそう言うと、傍らに立っている麗しき乙女を抱き寄せた。
桜色の髪に金色の瞳のその乙女は、安寿利休。
下位貴族の娘だが、見目麗しい乙女であるため、貴人の落胤ではないかという噂がある少女だ。
「そなたは醜い嫉妬から、貴族学院で安寿利休を虐めていたであろう。安寿利休は勇気をもって麿に打ち明けてくれたのだ」
「璃王練様、私、怖かったですぅ……」
安寿利休は金色の瞳をうるうると潤ませて、璃王練の腕にしがみついた。
「安寿利休、案ずるな。麿に任せておけ」
璃王練はそう優しく安寿利休に言うと、摩利子を睨みつけた。
「摩利子、そなたは、昼時に安寿利休に茶の湯をかけ、こっそり十二単の制服をビリビリに引き裂き、さらには安寿利休を学院の中庭の池に落としたであろう」
「そのようなことは妾はいたしませぬ。何かの間違いでございましょう」
「まだ白を切るか。できれば穏便に済ませたかったでおじゃるが……。石徹、風呂蘭!」
璃王練は側近の二人、左大臣令息石徹と将軍令息風呂蘭を呼んだ。
「摩利子に証拠をみせてやれ」
「はっ!」
二人は璃王練に返事をすると、摩利子の前に進み出た。
「右大臣令嬢摩利子、貴女は、外法の陰陽術で安寿利休を呪いましたね?」
石徹のその言葉に、摩利子は頭を振った。
「いいえ、そのような恐ろしいことは、妾はいたしませぬ」
「証拠があります」
石徹がそう言うと、風呂蘭が得たりと携えていた小箱を開けた。
その小箱の中には……。
「な……!」
呪いの人形が入っていた。
「右大臣令嬢摩利子、貴女は安寿利休を呪った。これがその証拠です」
「ひいっ!」
「なでうことぞ!」
「あな、恐ろし!」
恐ろしき呪いの人形に、宴の会場は騒然とした。
「璃王練様、私、怖いですぅ……」
安寿利休はぶるぶると震えて璃王練にしがみついた。
「案ずるな。すでに陰陽寮に依頼して解呪させた。あれはもうただの人形だ」
怯える安寿利休に璃王練は優しくそう言うと、厳しい視線を摩利子に向けた。
「摩利子、そなたのような縁起の悪い女との婚約は破棄でおじゃる。麿はこれなる安寿利休を妃とする。心優しい安寿利休こそ、麿の妃にふさわしいでおじゃる」
「璃王練様、嬉しい!」
「安寿利休!」
璃王練と安寿利休は人目もはばからず、ひしと抱き合った。
「妾は何もしておりませぬ。無実です!」
摩利子は無実を訴えた。
「ええい、まだ言うか。摩利子、呪いは重罪!」
璃王練は煩わしそうに眉を歪め、摩利子に刑を言い渡した。
「そなたは島流しの刑でおじゃる!」
1章2章の反省を生かし、余計な説明や設定は挟まずコンパクトに進める予定です(目標)。




