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6/6

フィオ

 っておいーーーーッ!!!!!!!

いったいどれだけ俺に小便させる気だ!!どこの世界に二年近く小便を出し続ける物語の主人公がいるってんだ全く!!ファンタジーの王様スライム様に冒頭から小便掛けたからってビビってんじゃねーぞ!!こっちは危うく食われかけてんだぞこの野郎!俺が必死で死闘を繰り広げている間にどーせマクドナルドとか行ってったんだろ!?そうなんだろ!?ぁ、チーズバーガー単品で一つ。じゃねーんだよ!!毎日のんびり平和に暮らしやがって!始まった時に生まれた赤ちゃんはもう立ち上がって話し始めてるっつーの!


まったく。


「おい。おい!起きろって」


「・・・ぅぅ」


兎に角、窮地は脱した。スライムはすっかり小さくなって動かなくなった。だがねーちゃんの服は全部スライムに食われちまったみたいだ。すっぽんぽんだ。気の毒だけど不幸中の幸い、死んでない。


「おい。おい!起きろって」


「・・・ぅぅ」


「・・・」


起きないな。


「おい。おい!おきろって!」


「・・・ぅぅ」


っておい!何回繰り返す気だ!将棋なら引き分け試合終了だぞこの野郎!

けど参ったな、本当に起きないぞ。

特に目立った外傷はないみたいだししっかり息もしてる。放っておいても平気だろう。

しかしそれにしても綺麗な乳首だ、桜色だ。俺はさっそく服を脱いだ。


「これでよし」


俺は、着ていた白衣を着せてやった。もちろん、俺は成人君主なんかじゃないから、人には言えないような葛藤もあったさ。けど、女の子には優しくしろって死んだ母ちゃんも言ってたからな。今はその考えを優先したんだ。

白衣とズボンが無事だったのはきっと化学繊維で出来てたからだろう。実際、綿100パーセントのパンツは跡形も無く溶けちまった。くーあのスライムめ…ッ!、スースーするよぉ…。


俺は改めて、周りの様子を観察してみた。


空気の感じは現実世界と変わらない、不快に感じるような湿気もないし適温だ。地面も同様だ。石や砂、それと、分解された有機物の集合体、特筆すべき点は何もないただの地面だ。

空は青くて澄んでいる、太陽に該当する恒星は一つだけ、これは少しだけオレンジっぽい色をしていて頭上から約25度傾いていた。現実世界と同じなら正午を過ぎたあたりだろう。

雲は白い、そして、たまに鳥の鳴き声が聞こえてくる。まぁ驚くほどの事はない。

そもそも俺が作った異世界転生マシンの動作原理は、対応する素粒子が持つ記憶情報の組み合わせ同士を相互変換。つまりは入れ替える事で動作する。俺を構成する素粒子の組み合わせと全く同じ組み合わせの素粒子がこの世界にあったという事は、環境だって、地球に似ていてもおかしくないはずなんだ。


「異世界って言っても、こんなもんなんだなぁ」


服を溶かすスライムなんていたけれど、以外にも、この世界の環境は快適そうだ。


「・・・ぅぅ」


「・・・」


はいはい。それはもういいからね。


こいつは相変わらず気を失ったままだ。

年齢は俺より若い、もしかしたら春日部ちゃんと同じくらいかそれよりも若いかもしれない。

スライムに倒されそうになっていたことを考えると、強さ的にはあまり期待できないかもしれないな。


「これから、どうなるんだろう」


一息ついて、先の事を考えだしたら無性にたばこを吸いたくなってきた。

スライムの汁で濡れてるかもしれないけど、乾かせば問題ないはずだ。たばこは白衣のポケットにいっぱい詰まってる。俺のシケモク、俺の全てだ。


俺は地面に両ひざをついて、白衣の中をまさぐった。あるある!いっぱいあるある!ひゃっほー!


「これさえあれば俺は何もいらないもんね・・・」


ん?


白衣のポケットに手を突っ込んでもぞもぞやってたら、いつの間にかねーちゃんが起きた。

この白衣は元々俺のだし、ポケットの中身は今でも俺の物だ。けど、ちょっとだけ手の位置がヤバかった!しまった!俺としたことがセンシティブ!この位置はセンシティブですぞ~!!!


「まっまて!!」


ねーちゃんの両眼には明らかに怒りの色があった。


((死))


あっ!これ見たことある!ズヘオラ様の所で見たやつだ!

あれ!?

でもちょっと待って!ちょっと違う!ちょっと違う!!!ちょっと違うよぉー!絶対やばい奴だよこれぇ!!

((危))だった!確かに((危))だったものぉー!


「ふんっ!!!!!!!」


「ぐは!!!!」


凄まじい威力の拳が、俺のたぶん顔面を捉えた。まったく見えなかったんだ!

痛みじゃなくて、衝撃が体を駆け巡る。次の瞬間、俺は空を見上げていた、そして気持ちいいくらいに安らかに気を失った。



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