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っぽくない恋愛

作者: のなめ

人生における大恋愛なんて一回あるかないかだろう。その恋愛が成就したら幸せだろうが、叶わない恋がほとんどに違いない。たとえ一時的に成就してもそのほとんどはすぐに幻想に終わる。破綻した後は消化試合が続くのだろう。妥協点を探す日々に違いない。ただ、全てを優先されるような恋はできただけでも幸せと思う。たとえそれが人でなくても。



一目惚れだった。なんの気なしに入ったワインショップで出会った。ボウル部分の丸み、ステムの引き締まった姿、ステムとプレートの曲線の美しさ、そのワイングラスだけ一際輝いて見えた。そのスタイルには気品も感じられ、気付いたら自分のものにしたくなっていた。今まで人間の女性とも付き合ったことあったが、それら全てがまるで子供の遊びであったかのように思う。それだけ夢中で盲目だった。それからはできるだけ一緒の時間を増やすため生活を変えた。仕事は在宅できるものに変えたし、他に浮気しているような気持ちになるから外で彼女以外から飲み物を飲むことはやめた。一緒にいられるだけで幸せだったし、彼女に何を注いであげるかを考えることで休みの日は溶けていった。彼女で飲み物を飲む行為は今までのどんなキスよりも官能的な気持ちにさせた。ただ、彼女と一つになれないことだけが唯一満足しないところだった。


彼女と出会って数ヶ月が起きた時、事件が起きた。それは彼女を机に運んでいる時だった。知らぬ間にできた段差だったのか何か物が落ちてたかわからないがつまづいてしまったのだ。彼女は僕の手の中で割れてしまった。あまりのショックに倒れたまま数時間が経った。それは彼女との永遠の別れを感じさせたのだ。ただふと思った、今まではそのサイズで彼女と一つになることは叶わなかったが今のサイズなら、いやなんならもう少し小さくなれば彼女を食べることで一つになれるんではないかと。そうして彼女を細かく砕きながら思った、確かに大恋愛の後は消化との試合が待ってるんだな、と。

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