圧倒的
藤吾が次に狙いを定めたのは聖獣のホルダーだった。
同じ学校に勇者のホルダーと聖獣のホルダーがいるだなんて豪華なものだと思う。
そのうち一枚は厳重に保管されているようだ。
ならば、もう一枚だ。
相手の通学ルートを調べ上げ、そこで待つ。
持っている刀は、自信をくれる。
なににも負けないだろうという自信を。
カメレオンのホルダーであった自分でも勝てるだろうという自信を。
カメレオンのホルダーだった時代、藤吾は馬鹿にされてばかりだった。
今は違う。
畏怖の的だ。
そして、藤吾は待つ。
ユニコーンのホルダーが現れるのを。
程なく、一組の学生カップルが歩いてきた。
藤吾は、その前に立つ。
「ユニコーンのホルダー、琴谷だな」
男の形相が変わる。
「お前がカードホルダー襲撃犯か……」
怒気を篭めて男は、いや琴谷は言う。
「そうだと言ったら、どうする」
藤吾は布から刀を取り出し、鞘から抜き放つ。
「勇者のカード、返してもらう」
そう言った瞬間、琴谷は視界から消えていた。
「っ!」
速すぎる。上空へ飛んだのは見えたが辛うじてだ。
慌てて上を向く。
「五月雨・改!」
相手は唱える。藤吾の絶望を。
何本もの光の槍が宙に浮き、一斉に上空から放たれた。
それらは全て藤吾を掠め、カードホルダーの一部を破壊した。
「くそっ」
逃げるしかない。
圧倒的過ぎる。
相手の着地した逆方向へと逃げる。
駆けて、駆けて、ひたすら走る。
その先には、徹が立っていた。
徹は抜き放つ。鞘から刀を。
藤吾は不思議な感覚を味わっていた。
藤吾の刀と徹の刀は引きあっている。
そんな感じがした。
続く




