カード狩り
途中、優子とコトブキと別れ、徹は帰り道で一人になった。
と言っても家までは十分程度。
異変など起きようもない。
今日までは、そう思っていた。
「勇者のホルダー、徹だな」
背後から声をかけられ、立ち止まる。
カードホールドには勇者のカードが挿し込まれてある。
いつでも戦闘に移ることは可能だ。
「誰だ?」
徹は振り返った。
そこには、この辺りでは見ない制服を着た男がいた。緑色のブレザーだ。
手には、刀を持っている。
そこに、妙な違和感を徹は覚えた。
カードと関係のない刀だ。そういう風に思えたのだ。徹のカードホールドがそう知らせてくれたのかもしれない。
「勇者のカード、貰い受ける」
そう言うと、男は刀を振りかぶって、突進してきた。
「プロテクション!」
六角形を連ねたバリアが徹の前に展開される。
それと同時に、徹は光の剣を呼び出した。
バリアは、切れ目が入った次の瞬間真っ二つに割れた。
「なに?」
徹は唖然として光の剣を構える。
しかし光の剣にも相手の刀は切れ目を入れる。
次の瞬間、光の剣は真っ二つにされていた。
どんなものにでも切れ目を入れる剣。徹は直感的にそう察しとった。
二本目の光の剣を呼び出す。
その時には、既に相手の接近を許してしまっていた。
刀の一太刀が入る。
徹は胸元から脇腹までを斬られ、膝をついた。
相手は徹のカードホールドのカードを挿した部分に切れ込みを入れる。
次の瞬間、勇者のカードは相手の手に握られていた。
「やったぞ! これで俺が勇者だ! やったぞー!」
相手は駆け去っていく。
徹は制服を引き裂いて傷口に当てた。
血が止まらない。
仕方がないので、優子にメールで助けを求めた。
「やれやれ……」
また厄介事になるな。そんな予感が、していた。
続く




