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作り物の想い

 結局、あの気持ちは悪魔による作り物だったのだろうか。

 夜のベッドで、純子はそんなことを考える。

 コトブキに惚れた。それは純然たる事実だ。


 しかし、それが悪魔の介入によってなら話は違ってくる。


「……違うよ」


 思わず、一人呟く。

 あの時触れた指は、今もあの温もりを覚えている。

 あの時から二人の運命は始まったのだ。


「絶対に、違う」


 純子は、今度は躊躇わずにそう言い切った。



+++



「ということがあったわけさ」


 ラーメン屋のテーブル席で番長と蹴鞠は向かい合って座っていた。

 丁度、蹴鞠がこの前の四天王のトラブルを語ったところだ。


「四天王か。連続して当たるとはお前さん達も運がないの」


「勝ててきたのは運だよ」


「そう謙遜するない。実力じゃ実力」


 番長は当たり前のようにスーツ姿だ。

 それが蹴鞠には眩しく写る。


「あーあ、私も早く就職したいなあ」


「忙しいぞう。朝も夜もないしサービス残業も当たり前じゃからのう」


「探索庁勤めなんかになるからだよ。私はもっと普通でいい。三交代性ぐらいの」


「まあ給料はいいぞ。保証しておく」


「借金早く返せるように頑張るよ」


「おう、期待しとるわい」


 そう言って、番長は残ったスープに取り掛かった。


「アークスに入った」


 番長が唐突に言った台詞に、蹴鞠は硬直した。


「アークスって、あの異常者の集団じゃない」


「穏健派と過激派がおるのは否定せん。ともかく入ったんじゃ」


 沈黙が場に漂った。

 なにを言えば良いかわからず、どう思えば良いかもわからず、蹴鞠は困ってしまった。



+++



 その日、探索関係の部は大半が制作科の生徒を迎え入れる。

 レベル上げについてきてもらうというわけだ。

 純子は扉の前で、名前を呼ばれるのを待っていた。


「純子さん、来てくれるか」


 部屋の中からコトブキの声がする。

 純子は、緊張しながら中に入った。


「今日からお世話になります。お願いします。後、これは言っておきたい」


「なんだい?」


 コトブキが優しく問う。


「私はコトブキ先輩が好きです。偽りでもなんでもなく。これだけは本当のことを伝えたかった」


 コトブキの笑顔が硬直した。


「またコトブキか」


 緑が拗ねたように言う。

 そして言葉を続けた。


「よろしくな、純子さん。こき使うぜ」


「ええ、願ったり叶ったりです」


 少し照れ臭かったけど想いは伝えた。

 この気持は、偽りなんかじゃない。



続く

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