お断りします
「貴女の言いたいことはわかったわ。コトブキと別れろ。そういうわけね?」
優子は、緊張で強張ってしまいそうな声を奮い立たせてそう言う。
「そうなりますね」
少女は赤い目を輝かせたままそう言う。
「断るわ」
「残念です」
空中に静止していた剣が一つ残らず回転を始めた。
優子は僧侶のカードをカードホールドに入れる。
優子の手に、一本の杖が現れた。
「杖なんかでなにを!」
剣が三本程回転しながら飛んでくる。
それを、優子は一歩前へと踏み出して、全て弾いた。
そして、地面を蹴ってさらに前へと進む。
「なっ」
攻撃に転じられるとは思わなかったのだろう。相手は一瞬動きを止める。
その鳩尾を、優子は目一杯手を伸ばして突いた。
相手は咳き込んで蹲る。
大量の剣が地面に落ちて、ぶつかりあって盛大な音をたてた。
「これでも探索科に一年通ってるのよ。甘く見ないで」
そう言って、相手の頭部に杖を振り下ろす。
気絶してくれればいい。そう思いながら。
流石に探索科とはいえ剣の雨を弾く方法は教えてもらってない。
その時、少女の肩から腕が生えた。
青く筋肉質なそれは、優子の杖をしっかりと掴んだ。
いけない。
そう思い、杖を手放して後退する。
目の前を回転する剣が通過していった。
杖を再召喚する。
次々に襲い掛かってくる剣を、ステップを踏みながら踊るように弾き、避ける。
相手はダメージから回復したらしく、ゆっくりと立ち上がった。
「思ったよりやりますね。探索科は伊達ではないということか」
なにかがおかしかった。
赤い目。青い腕。情緒不安定な殺人未遂の動機。
サンクチュアリを試してみたかったが、精神統一する隙間がない。
そのうち、終わりがやってきた。
一本弾いた剣。それがユーターンして戻ってきたのだ。
前から来る剣に集中していた優子にとってそれは予想外の軌道だった。
鈍い音がした。
「屋上の外で弁当食べてたら変な音がする。喧嘩に刃物を出すのはご法度だって習わなかったのかな」
そう言って立っていたのは、背に六枚羽を生やし、肌に鱗を生やした先輩だった。
先輩が剣を弾いてくれたのだ。
勝ち誇っていた少女の表情が険しくなる。
「私は四天王に憑依されたことがある。だからわかる。貴女、憑依されてるのね」
そう言って、先輩は少女を指差す。
「そうでしょう。四天王デモン」
少女は黙り込んだ。
剣の回転が、止まった。
続く




