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剣姫

 誰もが思い通りの人生を送れるわけではない。当然のことだ。

 小林純子もその例外に漏れない人物の一人だった。


 純白のカードの授与式。その時彼女が念じたカードに浮かんだのは刀匠の絵柄だった。

 こうして彼女は刀匠のホルダーとして腕を磨くことになったのだ。


 時期は春の終わり。そろそろ部活動への参加が可能になる。彼女のような製造科の生徒は探索科の生徒に経験値を分けてもらいに出向することになっている。

 お荷物のようで多少気が重い。


 そんなある日のことだった。

 なんとなく、死んだ友人が好きだった監督のDVDに手を伸ばした時のことだった。

 他に手を伸ばした人間と、手と手が触れた。


 相手は慌てて手を引っ込める。

 レンタルDVD店の一角だ。

 ネットで映画などが見れる昨今は古着やゲームも並んでいる。


 そんな中で彼は何故このDVDを?

 若干気になった。

 それも、彼が有名人だったから。


「それ、見るんですか? 琴谷先輩」


 琴谷は純子から視線を逸した。


「死んだ友人が一回は見ておけって言ってたのを思い出したんだ」


「それって……もしかして英治君?」


 初春に死んだドワーフのホルダー英治。

 似た境遇の純子とは話が合った。


「君も英治とは知り合い?」


「友達でした。中学校時代からの」


「そうか……」


 琴谷は顎に手を当てて考え込む。


「それは君に譲るよ。感想を教えてくれ」


 驚いた。学校の有名人、未来のスーパースターとこんなところで接点ができるとは。


「是非!」


「それじゃあ、僕はゲームでも見に行くよ。またね」


 そう言うと、琴谷は去っていった。

 手と手が触れた部分が熱く感じられる。


 もしかしたら奇縁というのはあるのかもしれない。

 純子はそう思った。




続く

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